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不自然なスタンピード

「クルー!!」


「だうー!!」


周囲に大量のモンスターが現れた・・・にも関わらずアーテルとアウルは一切動揺することなく、普通にモンスターたちを倒しまくっていた。・・・二人とも場慣れし過ぎ。って俺のせいか。なんかごめん。


しかし、二人のおかげで俺は冷静にモンスターたちを観察することができる。


・・・おかしい。ここまでのスカイエリアで出て来た鳥やら花やらカエルやら雲やらがいた。他にも見たことがないヤツまでワラワラと・・・Lv.60台やLv.70台のモンスターまで。


よく見ると上から下からモンスターがやって来ているようだ。


これはいくらなんでもおかしい。


エリアの区分関係無くバラバラのレベル帯のモンスターが出て来たら、それこそエリア分けの意味がない。例外はレアモンエリアや緊急クエストが起こった場合だが・・・当然ながらそんな様子も無い。


やはりさっきの歌声が・・・モンスターを引き寄せているのか? だとすれば【世界魚バハムート】の時も人為的に・・・?


『アルク、そっちは大丈夫なのだ?』


おっと今は余計なことを考えていないで目の前の事態の対処が最優先だな。


「【ミーティアルスラッシャー】!!・・・こっちは大丈夫だ。そっちはどうだ」


モンスターを駆逐しながら【ジャック君】越しに報告し合う。・・・ホントに便利だな【ジャック君】。


『現状で戦艦への被害はほとんどないのだ。アルクたちが周囲のモンスターの注意を引き付けてくれているおかげだのだ』


現状、俺たちは戦艦を中心に4チームが東西南北に散っている状態だったのだが、それが結果的に戦艦への被害を減らす形になっていたようだ。


その代わり、俺たちの負担増になっているわけだが。


『ちょっと、これどうなってんのよ!?』


『空の上はこんな危険地帯だったのですか?』


『モンスターさん、いっぱいなのです!!』


『この数はかなりまずいのではないでしょうか?』


『何弱気になってんすかアスター! やられる前にやるっすよ!!』


おお、【ジャック君】越しにメンバーそれぞれの声が・・・はっきり明瞭に聞こえてくるが、そのせいで大声もそっくりそのまま聞こえて来てちょっと耳が痛い。アシュラよ、通信したまま大声を出すな。


しかし、やはりアテナたちの方もモンスターが大量に押し寄せているんだな。【精霊界】での緊急クエストを思い出してしまうが、あの時よりも場は混沌とし過ぎている。


何よりの問題はこの状況がいつまで続くかだな。この現象が人為的なものだとすると、ソイツの気分次第でこの状況が延々と続く可能性がある。


一番の対処法はソイツをとっ捕まえることだが・・・この状況では探し出すのは厳しいだろう。なんせ次から次へとモンスターが寄って来ているからな。今は対処できているが、いずれこっちが力尽きるだろう。


この事態を引き起こした犯人・・・あの歌声の主は何を企んでいる? ・・・って言っても聞こえた限りだとただの愉快犯っぽいな。


・・・ならば、こちらもそれに乗らせてもらうとするか。


「全員、モンスターたちを駆逐しつつ、戦艦に集まれ!!」


俺は【ジャック君】越しに全員に指示を出す。


『まさかアニキ! 逃げるつもりっすか!?』


それを聞いたアシュラがとんだ勘違い発言をしていた。


「バカ野郎! 誰が逃げるか!! アヴァン、戦艦のレーダーでモンスター()()の反応を探ってくれ! 他のメンバーはそれが見つかるまでの時間を稼いでくれ!!」


『アルク・・・この事態を引き起こした犯人がいると思っているのだ?』


そう思うのも無理はないのだが、状況が状況なので、俺は歌声が聞こえて来たことを伝え、おそらくソイツが犯人だと思われることを話した。


『歌声・・・分かったのだ。探ってみるのだ』


「他のメンバーはいざって時に戦艦に乗り込めるように距離を縮めておいてくれ。アテナ、アルマ、厳しいかもしれないが、カイザーとミネルヴァの【クランメカロイド】はまだ使わないでくれ。この後、カイザーたちの力が必要になる時がくるだろうからな」


『それは・・・今以上のモンスターが出てくるかもってこと?』


『この状況ではあり得そうですね。分かりました』


できれば当たって欲しくない予想だが・・・もし、スカイエリア7より上のエリアからも降りてくると考えると、もっと強力なモンスターが出て来てもおかしくない。


その時にこそ【クランメカロイド】の力が必要だ。


「犯人が見つかるまでは各自、モンスター討伐を続行・・・まあ、レベリングだと思って無理しない程度に頑張ろう」


『状況を利用するってことですか・・・余裕ですね』


『アニキ・・・さすがっす!!』


余裕・・・それは、今はまだってだけのことだ。あえて言わなかったが、戦艦の近くにいろって言ったのは、いざという時に戦艦に乗り込んで強行突破で逃げる為でもある。


それも今後の状況次第だが・・・正直、悪い予感しかしない。


「アーニャ、無理はしないでいざとなったら戦艦に戻ってくれよ」


『ぶらんちゃんたちがいるので問題ないのです! ・・・ただ卵さんを探せなくなったのはちょっと残念です』


・・・まあ、確かに。そう言う意味では犯人は俺たちの予定とアーニャの料理をぶち壊しにしてくれたんだよな。そう考えると・・・腹が立って来たな。


「卵集めは明日にでもできるさ・・・今はこの状況を乗り切って、犯人を見つけ出すのが先決だ」


『はいなのです! 犯人さんに食べ物の恨みは怖いってことを思い知らせてやるのです!!』


おお・・・アーニャがいつになく好戦的だ。


だが、気持ち的には俺も同じだ。


この犯人を見つけてとっちめてやらないとな。

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