卵料理といえばこれ!
俺が倒した【卵獣エッグラン】からドロップした【美食卵エッグランエッグ】は5つ。
当然ながら俺たち【アークガルド】メンバー全員(プレイヤー7人+【眷属】14人)に行きわたらせるには数が足りない。
というわけで俺たちは引き続き、他の【卵獣エッグラン】の捜索及び討伐を続けることになった。ついでに俺以外・・・ラグマリアやブランたちでも同じ方法で倒せるかどうかも試してみるつもりだった。
結論から言うと、その後【卵獣エッグラン】に2体遭遇、そしてラグマリアたちでも倒すことができた。
まず1体目を見つけた時点でラグマリアが『リベンジの機会をクダサイ!!』と言い始めたので任せた。・・・卵の黄身まみれにされたのを余程恨んでいるようだ。そういう所も含めてホントに人間臭くなったな。
ただし、今のラグマリアのレベルでは一人で相手するのは厳しいのでアーテルとアウルにフォローに入ってもらった。結果はというと・・・まあ、リベンジは果たせたのだが、問題はなかったと言われればそうでもなかった。
ラグマリアは俺と同じように【兵器】を使わず素手のみ戦っていたのだが・・・ハッキリ言って素人の喧嘩程度の腕前だった。アーテルとアウルのフォローが無かったらまず逃げられていただろう。
思い返してみればラグマリアの戦闘スタイルは基本的に【兵器】を使った銃撃が主で【兵器】を使わず、ましてや素手による格闘なんて経験0だったのだろう。
そもそもの話、ラグマリアは進化したてでレベルが低いのだ。ステータスが圧倒的ならば経験不足も補えたのだろうが今のラグマリアはそうではない。さらにアヴァンの作った【兵器】にも頼れない状況・・・リベンジをはかるのは大変結構なのだが、自分の状況をよく考えろと少し説教しておいた。
ラグマリア自身もそのことを痛感したのか、黙って俺の言葉を聞いていた。
2体目はブラン、ノワール、テール、ラメールの四体がかりで戦った。
彼らもまたスキルを使わず体当たりや爪、牙で攻撃を行い、さらに四方から囲い込むことで逃走を阻止した上で、無難に【卵獣エッグラン】を撃破した。
懸念だった『複数人で攻撃しても大丈夫なのか?』という点に関してもスキルを使わない攻撃であれば問題ないようだ。むしろ複数人で攻撃している分、俺よりもかなり早く撃破できていた。
どうやらあの卵モンスターの判定基準は『一回の攻撃の威力が一定以下ならダメージとして通る』というものらしいな。それさえ守っていれば何人がかりでも大丈夫らしい。
これは俺たちにとって有益な情報だ。一人で戦っていたのではどうしても一回一回の攻撃の合間にインターバルができる上に、あの卵は基本的に逃走しようとしている。複数人で戦った方が逃がすことなく短時間で撃破できるということが分かった。
この調子で卵狩りがはかどるかと思ったが・・・次の【卵獣エッグラン】がなかなか見つからず、時間も過ぎ去って行って・・・
「そろそろ捜索を開始して3時間経つのだ・・・これ以上は時間的にも厳しいのだ」
地上から高度を上げ始めてから、既に結構な時間が経過していた。そろそろいつものログアウト時間だ。
ということで俺たちは全員、操舵室に集まっていた。
今日だけで【美食卵エッグランエッグ】は15個集まった。今日一日の収穫と考えると、実は微妙だ。一人につき卵一個だと考えると【アークガルド】メンバー分も賄えていない。
最初に失敗した分も含めると一日20個は集められると仮定して、それで足りるかと料理担当のアーニャに聞いてみると・・・
「全然足りないのです! 卵はいろんな料理に使える万能食材なのです! 数はいくらあっても足りないのです!!」
・・・いつも控えめなアーニャがここまで言うくらい卵は重要な食材なんだろうな。まあ、料理に疎い俺でも卵はメイン料理からデザートまで幅広く使われていることは知ってるし、メンバー分の料理を作ろうとすれば圧倒的に数が足りないだろうな。
「・・・」
・・・逆に言えば【美食卵エッグランエッグ】を使えば、ただでさえ美味しかったアーニャの料理のほぼすべてがより美味しくなるということだ。
問題はそれがどのくらい美味しくなるのか、だが・・・それ次第ではこの場に居ないメンバーはもちろんの事、【インフォガルド】や【アイゼンガルド】の連中も巻き込むとが可能だろう。
しかし、それを確かめようにもこの場にある卵の数は限られている。
なによりも今日集めた分の卵をどうするのか・・・
「残りは明日にするとして、アテナたちにも事情を話して全員で探索すれば今日以上の成果が出るだろうが・・・一つ問題があるよな」
「「「「???」」」」
なんの問題が? と首をかしげる皆に対し、俺は【美食卵エッグランエッグ】を見せつけながらつぶやいた。
「・・・メンバー全員分の数が無い以上、全員でこの卵の味を確かめるのは明日になってしまう・・・ということだ」
「「「「・・・」」」」
ゴクリ・・・と誰かの喉が鳴った音が聞こえた。あるいはそれは俺自身が鳴らした音だったのかもしれない。
【美食幻獣】の味については俺たちも良く知っている。いや、忘れられないといった方が正しいか。
しかし、以前食した物の中には【美食卵エッグランエッグ】なんて代物は無かった。つまり、この卵の味については未だ未知のものであるということだ。
ただし、美味であることだけは既に確定している。
それを・・・明日まで待て、と?
幸いというか・・・メンバー全員に行きわたらせるには数が足りないが、この場にいる面子の分は確保できている。
俺は人差し指を天高く突き立てながら・・・こう言った!
「他のメンバーに話す前に・・・味見が必要だと思う人はこの指とーまれ!!」
俺の指を掴んだのは・・・当然、全員だった(笑)
・・・
・・
・
「お待たせしたのですー!!」
20分後、【機動戦艦】にいつの間にか増設されていた調理場にて料理をしてくれていたアーニャが操舵室に戻って来た。
・・・こうなることを予測していたんじゃないかというくらい、タイミング良く調理場を増設していたアヴァン・・・あっぱれだ!
アーニャが作って持ってきてくれたのは【スカイロックバード】の鶏肉と【美食卵エッグランエッグ】を使った親子丼である。
・・・もうね、見た目からして美味しいというのがわかるね。白米の上に乗っかった肉厚な鶏肉とトロトロの卵・・・心なしかキラキラ輝いて見える。匂いも、いかにも食欲のそそる良い匂いで、よだれを腹の音が止まらない。
一応、モンスターが出ることも配慮して操舵室にていただくことにしたのだが、誰もモニターなんて見てないし(笑)
皆、キラキラ光る親子丼から目を離さない。【チビマリア】たちでさえもだ。・・・お前ら、体が人形だから食べられないよな?
もう我慢できないと言わんばかりに・・・
「「「「いただきまーす!!」」」」
一斉に親子丼にかぶりつき・・・
「「「「!!!???」」」」
全員がその味に驚いた。
鶏肉は肉厚のわりに柔らかく、それでいて歯ごたえ十分、しかもかみしめる度に肉汁が・・・そしてなんといってもこの卵の濃厚な味。口に入った途端、舌に広がる卵の風味は、それだけで満足感を与えてくれる。
美味い・・・ただそれしか言えねぇ。
全員があっという間に完食。
そして全員が無言だった(笑)
これだけ美味な物を食べたのなら、もっと食べたい! と思うのだろうが・・・なんだろうな。これだけで満足してしまって、もう何も言えなくなってしまった。
・・・ただし、それは今は、の話だが。
「・・・やっぱり明日はアテナたちにも協力してもらって卵狩りだな」
俺の言葉に全員が頷いだ。やはり食欲という奴は底無しらしい(笑)
なお、俺たちだけ先に味見したのはアテナたちには内緒である。
・・・
・・
・
のはずだったのだが、クランホームに戻ったら速攻ばれた(笑)
「なんでわかった?」
「「女のカン」」
それが俺に詰め寄って来るアテナとアルマの答えだった。orz
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