表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
771/797

割れない卵

『我が思うにあの卵モンスターはある程度ダメージを受けると自爆するタイプだと思うのだ』


アーニャから衝撃の情報を聞いた俺は一旦皆を連れて【機動戦艦(シュテルンアーク)】の甲板へと戻っていた。アヴァンからも情報を聞いて状況を整理する為である。


「つまりあの卵を倒すには、ダメージが溜まって自爆する前にHPを削りきる必要があるわけか・・・だから、俺に助っ人を頼んだわけだな?」


俺たち【アークガルド】メンバーの中で一番攻撃力があるのは俺だ。おまけに一撃必殺のスキルまで所有している。こういう場面で真っ先に指名されるとすれば俺以外に居ないだろう。


ただ、そんな俺でもあの卵を倒せるかどうかはまだ未知数だ。


「昨日はどんな風にあの卵と戦ったんだ?」


『ふむ、どうと言われれば・・・力押しなのだ。最初は戦艦から砲撃しようとしたのだが、あの浮遊小島まで壊す懸念があったので断念したのだ。そこでラグマリアやブランたちが直接相対したのだ』


「ブランちゃんたちであの卵さんを囲い込んでボッコボコにしようとしてたのです。でも、あの卵さんの殻がとっても硬いみたいで、なかなか倒せなかったのです。そうしてる内に卵さんの殻が赤くなっていて・・・」


「自爆した、と」


「そうなのです」


つまり、ラグマリア、ブラン、ノワール、テール、ラメールで一斉に攻撃しても倒せなかったってことか。


んんー・・・進化したてのラグマリアはともかくブランたちのレベルはあの卵より上のはず。にもかかわらず倒しきれなかったというのは少し不自然だな。


【美食幻獣】というレアモンスターだから特別強いのか? それとも何か他に理由があるのだろうか。


「・・・ん? そういえばあの卵の自爆を受けて、皆は大丈夫だったのか?」


昨日の段階では誰かが死に戻ったという話は聞いていなかったのだが・・・


『うむ、それなのだが・・・卵が爆ぜる時、一番近くにラグマリアが居たのだが・・・特にダメージも受けず、無事だったのだ』


ダメージを受けなかった? つまり、あの卵の自爆はそこまで大した威力ではなかったという事か?


『無事ではアリマセン、マスター。謎の液体でドロドロにさせられた事をお忘れデスカ?』


『謎の液体ではなく、ただの卵の黄身だったのだ。有害な物質ではなくダメージもなかったはずなのだ』


『ダメージはアリマセンでしたが、本機の心と体が汚されマシタ』


『その大げさな言いよう、どこで覚えて来たのだ?』


何やらアヴァンとラグマリアがスピーカー越しに言い合っているようだが・・・どうやらラグマリアは飛び散った卵の中身の被害をもろにかぶったようだ。地味に嫌な嫌がらせだな。


というか、それって自爆か? 聞いてる感じ、自爆っていうより自害したって感じなんだが・・・倒される前に自ら自爆してしまうモンスターか。


そうなると迂闊に攻撃できないわけだが、攻撃しないと討伐することもできないわけで・・・そうなると確かにアヴァンの言う通り自爆する前にHPを0にするしかないように思える。


しかしだ。それだけならレベル差と人数で考えても、ブランたちだけで十分達成できると思うんだがな・・・そこが引っ掛かる。


もしかしたらあの卵を倒すには何らかの()()()()()が必要なのかもしれない。


「・・・いずれにせよ、まずは実際に戦ってみないと分からないか」


厄介な相手には大しては戦いながら倒し方を見つけていくのが俺のやり方だ。不明瞭な部分は多いが、まずは一度はあの卵と戦ってみない事には進展はしないだろう。


・・・卵の黄身まみれになるのは勘弁してほしいところだが。


「なんにせよ一度は戦ってみないとな。まずは俺一人であの卵と戦ってみて様子を見る。アヴァン、多分今回は失敗するから、他にあの卵モンスターがいないか周囲を探ってみてくれ」


申し訳ないがアーテルやアウルにも遠慮してもらう。経過を見る意味でも俺一人の方が観察しやすいからだ。


『了解なのだ』


俺は【エナジーフェザーマント】を装備して単独で飛翔、卵の元へ向かう。


呑気に走り回っている卵に対し・・・


「うおりゃあ!!」


思いっきり飛び蹴りを食らわせて動きを止める。突然の事に驚いたのかゴロンゴロンと転がっていく卵。そこにすかさずパンチを食らわせたが・・・


「硬っ!?」


予想よりも大分硬い手ごたえだった。いつぞやの【ミスリルゴーレム】と同等、いやそれ以上かも。・・・卵の分際で随分と生意気だな。


だが、それと同時に妙な違和感も感じる。


「よっ! はっ! とうっ!!」


それを確かめる為に何度も殴る蹴るを繰り返してみるが・・・うーむ、分からん。


少なくとも俺の攻撃は卵には全く通用していないようだ。卵の殻にヒビも入らないし、アーニャが言っていたように殻が赤く染まる様子も無い。


・・・この程度の攻撃じゃあ、ダメージにすらならないってことか?


ならそろそろ俺の本気を見せてやる!


俺は最後に卵を思いっきり殴りつけ、地面にたたきつけると、その隙に【豪剣アディオン】を取り出す。


「【帝釈天の勇撃アークガイゼル・ストラッシュ】!!」


そしてお見舞いするのは必殺の()()である。


「【初撃】!」


ガキンッ!!


「・・・!?」


卵に振り下ろした最初の一撃・・・それすら卵の殻を砕くには至らなかった。まさかヒビ一つ入らないとは・・・ただ、卵の殻が急激に赤く染まっていった所を見るとダメージはあったみたいだ。


「【次撃】!!」


次の一撃でも、卵がひび割れる様子はない。代わりに卵の殻はどんどん赤く染まっていく。


「【終撃】!!!」


そして最後の一撃を振り下ろす・・・も、それでも卵が砕ける気配はなかった。それどころか傷一つ付いていない・・・HPを0にするにはダメージが全く足りないというのか?


「・・・む!?」


赤く染まった卵が小刻みに振動し始めた・・・自爆の兆候か?


まずい・・・ならばさらに追撃だ!!


「【閻魔天の(アークワイズ・)魔術(ウィズダム)】!!」


さらに畳みかける!


「始の術式【フレイムバースト】!」


「繋の術式【アイスバースト】!」


「終の術式【サンダーバースト】!!」


炎の一撃、氷の一撃、そして雷の一撃を連続して食らわせる。炎で急激に熱した後に氷で急激に冷やし、そこにすかさず電流を流し、対象を破壊する・・・【ミスリルゴーレム】ですら倒せる【魔法】コンボだ。


これならいけると思ったが・・・真っ赤に染まった卵にはやはりヒビ一つ入らなかった。


やはり、何かがおかしい。手ごたえはあったのに、全く効いた様子が無い。これは・・・


そんな疑問を思い浮かべる間もなく、赤い卵は高速で振動を繰り返し、やがて・・・


パァアアアアンッ!!


・・・


・・



「・・・たでーま」


「おかえりなさいなのです。・・・ベトベトなのです」


アーニャはもちろんのことアーテルやアウルまで距離を取られる俺。・・・なんかショック。


しかし、それも致し方ないだろう。なぜなら今の俺は、全身卵の黄身だらけなのだから。おまけに生臭い匂いまで・・・うぅ、覚悟していたとはいえ、酷い仕打ちである。ガッテム!


『アルク一人の攻撃では無理となると、今度は全員で・・・否、【アークガルド】メンバー全員を連れてきて試してみるのだ?』


「いや、それでも駄目だ。多分な」


俺は【水魔法】を使って全身の黄身を落としつつ・・・ベトベトは取れたが匂いが取れない(悲)まま、アヴァンに答える。


俺の最強スキル2連続で傷一つ付かなかったのはちょっと・・・いや、かなりショックだったが、その不自然さのおかげで逆に理解できた。


「大体わかったぞ、あの卵の倒し方。アイツを倒すには()()使()()()()()()()が必要みたいだ」


ヒントは卵を割る時の注意点、だな。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に


是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。


m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ