大空生物
空の色が緑色から黄色へと不自然に切り替わった。
徐々に色が変わっていったのではなく、本当にスイッチを切り替えたかのように、突然色が変わった。
空の下の方を見ても緑色の部分は見えない。逆に緑色の空の時にも黄色の空は全く見えなかった。
はっきり言って・・・とてつもなく不自然だ。
「どういう原理なんだ?」
「さあ・・・多分、考えるだけ無駄なのだ」
ああ! あのアヴァンが考えることを放棄している!? 恐るべし、【幻獣界】!!
「原理はともかく、高度的にはいい加減、宇宙の光景が見えてきても良さそうだよな。・・・まさか【幻獣界】の宇宙は黄色だったとか?」
俺が知ってる宇宙の色は黒だが、それはあくまで俺の・・・人間の世界の常識だからな。モンスター世界では別の法則があってもおかしくはない・・・はずだ。
「否、そういうわけでもないようなのだ。【機動戦艦】の計測によれば、現在地点の空気は地上と変わらない程度には存在しているようなのだ。重力はかなり少なくなっているようなのだが・・・少なくともまだ宇宙ではないようなのだ」
空気があるということは少なくと、俺たちが生身で外に出ても問題はないということか。重力が少なく泣ているということは着実に地上からは離れていっているみたいだが・・・実は俺たちがいるのって地球より何倍もでかい惑星だったとか?
「うむ、我もそう考えたのだが、そもそも・・・」
珍しく歯切れが悪いアヴァン。
「そもそも?」
「・・・【幻獣界】にはそもそも宇宙というものが存在しないかもしれないのだ」
・・・なんだって?
そんな言葉を口に出す暇もなく、再び【機動戦艦】の警報が鳴り響いた。
すぐさまモニターでその原因を見る。
「なんだありゃ?」
そこに映っていたのはやはりというか、当然ながらモンスターなのだが・・・問題はその姿だ。一見すると何かの塊のように見えたが・・・近づいてくるにつれて徐々に姿が鮮明になって来た。
蕾だ。花が咲く前の蕾の状態。枝も茎もない巨大な蕾だけがこちらに向かって飛んできている。【幻獣界の】の空には花の蕾まで飛んでるんだなぁ・・・と思いつつ【看破】で確認。
【フライングカニバルフラワー Lv.21】
大空を飛行し続け、獲物を見つけると襲い掛かって来る植物モンスター。
「・・・カニバル?」
【看破】の内容を見て思わず声が漏れたと同時に、蕾が・・・花を咲かせた。花びらの一枚一枚は美しいピンク色をしているが、その中心には・・・口があった。
「うにゃ~!? 気持ち悪いのです~!!」
アーニャの言う通り、確かに気持ち悪い。美しい花びらとは対照的に、中心の口には鋭い牙が生え、いかにも『お前を食ってやろうか!!』と言わんばかりによだれのような粘液まで垂れ流している。
あれだけ巨大なら人間なんて丸呑みだろう・・・ブルブル。
「精神衛生的にも速やかに排除するのだ!!」
「了解デス! 撃てー!!」
ラグマリアの指示の元、【チビマリア】たちが砲撃を開始。
しかし、その砲撃を見てなのか【フライングカニバルフラワー】は開いた花びらを閉じて蕾の状態に戻ってしまった。その状態で砲撃が当たったのだが・・・倒せてはいないみたいだ。
あの花びら、どうやら盾になるみたいだな。だが、完全にダメージを防ぎきれていないようで、砲撃を受けた花びらが焦げている。あれなら砲撃だけで程なく倒せるだろう。
レベルから考えてもそう苦戦するような敵ではないのは分かるが・・・そのレベルが気になる。
「あのモンスター、Lv.21もある・・・ここはエリア1の上空でLv.10前後のモンスターしか出て来ないんじゃなかったのか?」
「うむ、我らも同じことを考えていたのだが・・・どうも空の上と地上では勝手が違うようなのだ」
アヴァンたちが昨日の内に確認していたようなのだが、空が緑色の時に出てくるモンスターは全てLv.10前後、これは別エリアの上空へ移動しても変わらなかったという。
そして、高度を上げて空が黄色になった時に出てくるモンスターはLv.20前後、さらに高度を上げると今度は空の色が水色になり、出てくるモンスターはLv.30前後になったんだそうだ。
「つまり、【幻獣界】の空は上昇すればするほど空の色が変化してレベルの高いモンスターが出現するってことか。・・・ああ、なるほど。それで宇宙が無いのかもって話しになるのか」
つまり、【幻獣界】の空は階層構造のようになっているってことらしい。そこで気になるのは、その階層構造がどこまで広がっているのかってことだな。
現状で確認されている地上エリアはLv.70前後のモンスターが出現するエリア7まで。それと同レベルのモンスターが空にも出現すると考えると、空の色も同じだけ変化していくということになる。
さらに言うならばまだ見ぬLv.80、Lv.90前後のモンスターも後に控えていると考えるとさらにもっと・・・この空は一体どこまで広がっているというのか。
そういう意味で【幻獣界】の空は文字通りにどこまでも空が広がっていて、宇宙というものが存在しないのかもしれない。
「ちなみに環境も違うようなのだ。先ほどの緑色の空の時は普通だったのだが、この黄色の空では日光のような光が満ちているようなのだ」
そういえば、この空になってからやけに眩しくなったような・・・だから植物が浮かんでいたのか?
その植物・・・【フライングカニバルフラワー】だが、砲撃の滅多打ちにより・・・撃沈した。
邪魔者がいなくなった所でさらに高度を上げて・・・ついでに気球【転移装置】も見つけて・・・進んでいくと、確かにアヴァンの言う通り水色の空へと切り替わった。
・・・そして雨がしきりに降り注いでいた。
「なんで!?」
雲もないのにどこから降って来てんだよ、この雨は!?
「・・・だから言ったのだ。考えるだけ無駄なのだ」
ああ! アヴァンが見た目に似合わず悟ったような目を!?
要するに科学的に考えるだけ無駄だから、あるがままを受け入れろってことか。
「【機甲界】もそうだったが、【幻獣界】も謎だらけだな」
「それはどの世界も同じだと思うのだ」
ごもっともで。
「確かにアーニャの言っていた通り魔境だな。・・・それで、結局アーニャが俺に手伝ってほしいことって何なんだ?」
確かにおかしな環境なのは分かったが、この程度でアーニャたちが助けを求めるほどの何かがあるとは思えないのだが・・・
「それなのですが・・・とうとう見つけてしまったのです!!」
見つけた? 何を?
「もっと上空に行った所に! 【美食幻獣】さんがいたのです!!」
・・・なん・・・だと!?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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