不可解な空
===ログイン===>【幻獣界】エリア1上空
お空の上からコニャニャチワ。
現在、俺たちは【機動戦艦】に乗って【幻獣界】のエリア1に滞空中である。メンバーは俺とアヴァン、アーニャ、及びその【眷属】たちである。
なお、カイザーとミネルヴァは別行動中のアテナたちに連れられてレベリングに勤しんでいる。俺たちと一緒に来ても経験値は入るんだろうが、俺たちの方は探索がメインになるっぽいから、アテナたちと一緒にパワレベする方がレベルが上がるだろう。
「【機動戦艦】、順調に上昇中なのだ」
アヴァンが操舵する【機動戦艦】がエリア1上空からゆっくり上昇していく。スピードを出さないのはモンスターの強襲を警戒してのことだ。
なんせここは【幻獣界】、この世界自体がモンスターの巣窟と言っても過言ではない場所だからな。
実際、エリア1上空では何度か鳥系モンスターから襲撃を何度か受けてるし。
しかし、その度にラグマリアから指導を受けたらしい【チビマリア】たちが砲台を使って迎撃していた。
「ふむ・・・まずまずデスネ。しかし本番はここからデス。気を緩めてはイケマセン」
『『『『( ̄ー ̄)ゞ』』』』
ビシッと見事な敬礼を決め込む【チビマリア】たち。・・・訓練の成果は上々なようだ。
まあ、それは良いとして・・・【機動戦艦】が上昇を続けると、何故かモンスターの襲撃が途切れた。高高度ではモンスターが出ないのか? と思っていると、モニターに映し出される映像には、分厚い雲が広がっていた。
「・・・変だな? さっきまで雲なんて広がってたか?」
俺が見ていた限り青い空が広がっていたと思ったんだが・・・
「うむ、昨日もそうだったのだ。どうもこの世界では上昇を続けると、我らの行く手を遮るようにどこからか雲が出てくるようなのだ」
それはまた奇妙だな。とはいえ、ただの雲に【機動戦艦】を止められるはずもなく、雲の中に突っ込んで上昇を続けているが。
「それで? アーニャが言っていた摩訶不思議な魔境っていうのはどういうことなんだ?」
現地に行けば分かるということで詳しい説明を未だ聞いていない俺だったりする。まさか雲が出てくるのが不思議って話ではないだろう。
「もうすぐわかるのです! あの雲を超えた先が摩訶不思議なのです!!」
なのだそうだ。そこまで言うのなら待とう。
やがて雲を抜けると、そこには青い空が広がって・・・なかった。
「・・・どゆこと?」
雲を抜けた先、そこに見えたのは青い空ではなく緑色の空だった。
おかしい・・・【幻獣界】の空は地上からでも何度も見てきたが、青い空だったはずだ。現に雲を抜ける前までは空は青かった。いくらなんでも急に空が緑色に変わるわけがない。
「我らも驚いたのだ。まるで雲を抜けたら別世界に来てしまったように思えるのだ」
アヴァンたちが昨日確認したそうだが、エリア2、エリア3から上昇していっても、同じように雲が現れてきて、その雲を抜けると緑色の空が現れるのだそうだ
・・・一体どうなってんだ。【幻獣界】の空は。
「んー・・・確かに摩訶不思議だな。原理も不明だし、そもそも何の意味があるんだ」
空の色が変わるのは確かに不思議と言えば不思議だが、ぶっちゃけそれがどうしたと言われれば、そこまでだ。最悪、運営側のただの悪ふざけの可能性もあるしな。
「おそらくなのだが、生態系が変化したという証だと思うのだ。この場所で出てくるモンスターは我らが今まで見たことが無いものばかりなのだ。・・・さっそくお出ましのようなのだ」
アヴァンの言葉と同時に【機動戦艦】の警報が鳴り響く。どうやら敵モンスターが接近中のようだ。
モニターにも映し出されたので、さっそく【看破】で確認。
【フライングバード Lv.12】
その巨大な翼で大空を飛び続けるモンスター。
名前は分かりやすいが、その姿は確かに俺も見たことが無いモンスターだった。
くちばしと尾の形状からすれば鳥ではあるんだろうが・・・異様にくちばしがでかいし、翼も体の何倍もでかい上に四枚羽だった。反して頭部、体、足が異様に小さく見える、アンバランスな形状の鳥だった。
「【フライングバード】って言うからには鳥なんだろうが・・・鳥か、あれ?」
特徴やシルエットが似ているだけで、全く別の生き物に見えるな。
「おそらく空を飛ぶことに特化した・・・否、進化した結果の姿なのだと思うのだ」
ああ、なるほど。大空を飛び続けるってことは、逆に言えば大地に降りることが無いってことか。
おそらくあの鳥もどきは本当に、生まれてから死ぬまで空を飛び続けるモンスターなのだろう。だから飛翔の為の翼が肥大化し、逆に飛翔の邪魔にならないよう体が小さくなったって感じか? あのでかいくちばしは獲物を丸のみするために巨大化したんだろうか。
「冷静に話してますけどあの鳥さん、どんどんこっちに近づいて来てるのです。放っておいて良いのです?」
確かに【フライングバード】は明らかにこっちをロックオンしている様子で近づいて来てるが・・・見た目のインパクトに対してLv.12程度ではな。【機動戦艦】の装備で十分だろう。
ちらっとラグマリアを見ると、心得ていたかのように頷き、
「お任せくだサイ。全砲門、発射よーい・・・撃てぇ!!」
ラグマリアから指示を受けた【チビマリア】たちは【機動戦艦】の砲台を巧みに操り・・・
ドゴッ!!
見事に【フライングバード】を撃墜した。
「あの鳥もどきも結構、素早そうに見えたが普通に撃ち落とせたな」
「うむ。【チビマリア】たちの命中精度が昨日よりも上がっている気がするのだ」
『ヽ(☆≧▽≦)ノ』『ヽ(○≧Д≦○)ノ』
上手くいったと喜んでいる【チビマリア】たちがハイタッチしている・・・マジでラグマリアの訓練って効果があったのか。
ちなみにだが、戦艦で倒した敵のドロップ品は自動的に戦艦格納庫へと送られるそうので、はるか下の地面までドロップ品が落っこちていくとか、わざわざ拾いに行くなんてことはしなくて良いのだそうだ。
「今のがアーニャが気になっていたモンスター・・・じゃないよな?」
「はいなのです。アーニャが気になっているのはもっと上なのです」
上? もっと上空に珍しいモンスターでもいるってことなのか?
「そういう事なのだ。【機動戦艦】、再上昇なのだ」
再び高度を上げていく【機動戦艦】。その道中で・・・
「む、レーダーに反応なのだ」
レーダーには反応が出た・・・が、警報は出ていない。
つまり敵が現れたわけじゃないのだが・・・では何かというと、
「・・・気球?」
それはどこからどう見ても気球にしか見えない物体だった。どこぞのプレイヤーがお空の旅でもしているのかと思ったのだが・・・
「あれは【転移装置】なのだ」
「何故に!?」
ホントだ!? 気球に括りつけられているの、人が乗り込む籠じゃなくて【転移装置】だ! 【転移装置】が括りつけられてる!? なんで!?
「我もすごく気になるのだが、おそらくゲームの仕様上の設定だと思うのだ。細かい所はツッコミ無しなのだ」
・・・ま、まあ多分、ここまで来るのにも多少時間がかかるから、時間短縮のための処置なんだろうが・・・飛行手段の無いプレイヤーが転移してきたら、落下真っ逆さまだよな。
まあ、俺たちにとっては便利だから別に良いんだけど・・・なんか納得いかない。
【転移装置】を登録して再度上昇を続けていると、そろそろ宇宙に出るんじゃないかと思われたその時。
・・・空の色がまた変わった。
今度は黄色の空だった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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