万能ツール
「正解だ。【機天の装腕】っていうのはエナジーを自在に操る装置みたいなんだ」
俺が頭の中でエナジーハンドが動く様をイメージすると、その通りに実際のエナジーハンドも動く。上下左右に動いたり、手の平を開いたり握ったりと、文字通り俺の思っている通りに動くことを確認した。
・・・エナジーでできているとはいえ腕だけが宙を舞っている様子は若干ホラーな気もするが、ロケットパンチもどきだと考えるとなかなか面白い。
「自在に動くエナジーの腕・・・物も持てるのだ?」
「勿論だ」
試しに近くでウロチョロしていたNo.007をエナジーハンドでむんずと掴み、そのまま持ち上げる。・・・なんかクレーンゲームでロボットアームに持ち上げられてるヌイグルミみたいだな。ヌイグルミ本人が『うおぉぉおろせぇぇぇ!!』と言わんばかりにジタバタしているのを除けば、だが。
「さらに数も増やすことができる」
俺が言うと同時に【ガジェットコア】からさらに四つのエナジーハンドが現れ、No.007の元へ向かっていく。
そしてエナジーハンドを巧みに操ってNo.007の手足をコショコショとくすぐり始める。くすぐったそうに身をよじるNo.007だが・・・ヌイグルミのくせに触覚があるのだろうか?
なお、合計五つのエナジーハンドを出した時点で【ガジェットコア】から光が失われた。どうやら【エナジーブーストメダル】1枚ではエナジーハンドを五つ出すまでが限界のようだ。
しかし、実はこれで終わりというわけでもなかったりする。
俺は再度【エナジーブーストメダル】を装填、今度は2枚連続して装填してみた。すると今度は【ガジェットコア】からさらに10個のエナジーハンドが出現した。
・・・その様子を見たNo.007が『ひぃぃぃぃ!?』と恐れおののいているが・・・いや、さすがにもう何もしねぇよ?
「むぅ・・・【エナジーブーストメダル】を追加すればいくらでも増やせるという事なのだ?」
「いや、メダルの同時使用は5枚までだそうだ」
このことに関しては説明書の注意書きに記載されていた。
【エナジーブーストメダル】を1枚分使い切ってから次の1枚を使う分には問題ないそうだが、今やったみたいに1枚目のエナジーが残っている間に2枚目、3枚目と増やしていくと5枚目で【ガジェットコア】の限界が訪れるらしい。
それでも無理に6枚目のメダルを使おうとすると・・・【ガジェットコア】が壊れてしまうのだそうだ。
メダルの使用枚数に関しては注意が必要だ・・・が、それを差し引いてもかなり使い勝手の良い【兵器】であることには変わりない。
「勿論、攻撃に使用することもできる」
エナジーハンドにNo.007を地上に降ろさせた後、練習場の機能の一つ、攻撃用ターゲット人形を出現させて、エナジーハンドに攻撃させる。具体的には15個のエナジーハンドでタコ殴りである。
エナジーハンドのパンチ力は俺のそれと同等であり、つまり、あのタコ殴りは俺の腕が15本に増えて殴っているのと同等の効果があるということになる。
ただし、さすがにエナジーハンドに攻撃系スキルを使わせることはできない。
・・・が、代わりに・・・
「さらにこんなこともできる」
俺がそう言うと、今度は全てのエナジーハンドが一つに集まっていき、やがて巨大な腕となった。その大きさはターゲット人形を軽く超えるほどである。その状態で握りこぶしを作りターゲット人形を殴る。巨大になった分、攻撃力も攻撃範囲も飛躍的にアップしているようで、ターゲット人形はボロボロだ。
「さらにさらにこんなこともできる」
俺は巨大エナジーハンドから、2個分のエナジーハンドを分離させ、手元に戻す。戻って来たエナジーハンドにそれぞれ【グランディスマグナム】を持たせ、ターゲット人形に向かって発砲させる。
「そんでもってトドメがこれ。【機天の装腕】エナジーブレード」
残っていた13個分のエナジーハンドが形を変え、今度は巨大な剣となってターゲット人形へと突き刺さった。さすがに耐えきれなくなったようでターゲット人形が消えていく。
【機天の装腕】によって作り出したエナジーは俺の意志で自由に形を変えることができる。今は分かりやすく手や剣の形にしていたが、やろうと思えば足でも盾でも俺がイメージできる限り、どんな形にも変化させることができる。
説明書に書かれていた通りだったことを確認して一旦終了。エナジーハンドから【グランディスマグナム】を受け取り、エナジーハンドとエナジーブレードを霧散させる。
「・・・まさに自由自在って感じですね」
「そうだな。これが【機天の装腕】の機能・・・の一つだ」
「え?」
驚くアスターを他所に、再びターゲット人形を出現させると、俺は次の機能の確認を始めることにした。
俺は【機天の装腕】を装着していた右手に【グランディスマグナム】を持ち、さらに左手で【機天の装腕】に【エナジーブーストメダル】を3枚、装填する。
キュイン! キュイン! キュイン!
眩いほどに強い光を放つ【ガジェットコア】。
「【グランディスマグナム】バスターモード・・・プラス」
【グランディスマグナム】をバスターモードに変形させ、さらに【ガジェットコア】に音声入力。
「【機天の装腕】エナジーブースト」
【グランディスマグナム】と【機天の装腕】、その両方が強い光を発し、俺はそのままターゲット人形に向かって・・・引き金を引いた。
ドォオオオオオオオオオオオオン!!!
かつてないほどの衝撃と閃光が練習場に轟く。ターゲット人形は・・・跡形もなく消滅していた。ついでに練習所の壁にでっかい穴が空いていた。
この場に居た全員が無言になる中、俺はそっと付け足した。
「【機天の装腕】はエナジー系【兵器】の出力を増幅させることもできるんだ」
しかも【エナジーブーストメダル】を複数枚使用することでさらに威力を向上させることができる。メダル1枚なら本来の威力の約2倍、2枚なら3倍、3枚なら4倍、4枚なら5倍、最大5枚で6倍まで威力を引き上げることができる。
つまり、今の一撃は本来の【グランディスマグナム】バスターモードの4倍の威力が出ていたことになる。
「・・・それ単体で【兵器】になるだけではなく、【兵器】を操る【兵器】にもなり、【兵器】を強化する【兵器】にもなる・・・まさに万能ツールなのだ」
【機天の装腕】の機能を見たアヴァンがそう評した。
だが、そんな便利な【機天の装腕】にも弱点がある。
「問題は・・・燃費が悪いということだな」
何せ【機天の装腕】を使用するためには【エナジーブーストメダル】が必須なのだ。そんなメダルだが、最近入手し始めたばかりのドロップ品の為、そこまで数が無いのだ。
俺がメダルを三枚ずつ使ったのも、手持ちが六枚しかなかったからである(悲)
「他の【天凱十二将】のスキルがBPやMPを一気に消費するように、【機天の装腕】は【エナジーブーストメダル】というアイテムを一気に消費してしまう。メダルが潤沢にあれば話は別だが、現状ではそうそうお手軽に使う訳にはいかないだろう」
アヴァンの方でも【エナジーブーストメダル】を使った【兵器】開発に乗り出しているわけで、メダルの分配に関しては相談と言うことになる。俺一人で好き勝手に使いまくるわけにはいかないのだ。
そういう意味では【機天の装腕】は案外使いにくい【兵器】でもあるということにある。
ただ、改善の余地がないわけでもない。
現状の【機天の装腕】はあくまで俺がレシピ通りに作った結果でしかなく、そこから改良・・・例えばより良質な部品に組み替えるとか、外装をより完璧に整えるとか、オリジナル要素を加えればこの燃費の良さも改善できる・・・かもしれない。
要するに【機天の装腕】については今後も要研究ってことだな。
・・・はぁ・・・なんで【天凱十二将】の力っていうのはどいつもこいつもクセが強いやつばかりなのか。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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