兵器開発とは
そう、【機天ガジェット】の力というのは【機天の装腕】という【兵器】の事を指すらしい。
これまでの【天凱十二将】の流れからして、てっきりスキルを貰えるものだと思っていたが、こういう展開もあるんだな。
【機天の装腕】がどんな【兵器】なのか・・・は作ってみればわかることで、問題なのはそれを俺に作れるかどうかだ。
アヴァンに任せればちょちょいのちょいで作ってくれるのだろうが、あいにく俺一人の力で作れと言われたからな。アヴァンの手を借りるわけにはいかない。ただ、一般的な【兵器】の作り方についてはアヴァンから聞いているので、その通りに作って行けば問題は無いはずだ。
・・・アドバイスを貰うのは良いのかって? 他の人の手を借りちゃ駄目とは言われたが助言を受けては駄目とは言われていないから大丈夫だろう(笑)
さて、その肝心な助言なんだが・・・まずは部品集めだな。この時、【兵器】のレシピがあるのならそこに書かれている通りの部品を用意すれば良い。
部品は【機械兵】を倒した時のドロップ品として入手するか、店売りしている物を購入することで入手することができる。
ここで問題になるのが部品のレアリティ、性能、サイズがバラバラだという点だ。
レシピによってはレアリティいくつ以上などの指定があるものが多いが、一番多いのがサイズの指定だ。レシピには必要な部品の採寸まで細かく書かれている物があって、例えば縦10cm、横5cm、幅2cmの鉄棒を用意、とか結構細かいのだ。
しかし、そうそう都合よくジャストサイズの部品を入手できることはまずない。
まあ、サイズが多少違っても【兵器】自体は作ることは可能なのだが、その場合、出来上がった【兵器】は低品質かつ性能が低い物しかできないのだ。
そこで登場するのが工房だ。工房内に設置されている【エナジーカッター】(刃の部分がエナジーになっているカッターナイフ)や【エナジー溶接機】(ガスバーナーのようにエナジーを噴射している)で部品を切ったり繋げたりすることでジャストサイズの部品を製作することができるのだ。
アヴァンのような熟練の腕を持つプレイヤーだと、ミリ単位の誤差もなく正確な部品を仕上げてくるのだから恐れ入る。なんでも【兵器】そのものではなく、精巧に正確に造った部品の状態の物を売りに出しているプレイヤーもいるのだとか。
その作業を俺も今からやらなきゃいけないわけだが・・・まずは練習だな。さすがの俺も慣れない分野でいきなりぶっつけ本番で始めるほど自信過剰ではない。・・・どこかから『嘘つけ!!』って声が聞こえて来た気がするが気のせいだろう。
【兵器】開発初心者な俺は、アヴァンから練習としていくつかお題を頂戴しているので、まずはそれをこなしてからだ。幸い、【アークガルド】の共有倉庫にはアヴァンももう使わないような低品質な部品が大量に死蔵されていたりする。練習用の部品には数に事欠かないのだろう。
まずは何の変哲もない立方体のブロックの制作か。
鉄の塊みたいな部品を【エナジーカッター】で余計な部分を切り落として、と・・・意外とすっぱり切れるな。だが、ちょっと斜めに歪んでしまった・・・これでは立方体とは言えないだろう。当たり前だが、やっぱり剣や刀を振るうのとは勝手が違うな。
別の奴で再挑戦・・・これじゃあ直方体だな。横の長さが足りない。もう一つ細長い直方体を作って【エナジー溶接機】で溶接・・・うーん、くっつきはしたが、こんどは接着面が大分汚くなってしまったな。こういう時は【万能ヤスリ】でゴリゴリで削って表面を綺麗に・・・よし、こんな感じかな。
なんとか手の平サイズの立方体ができたが・・・結構大変だな。正確に、という部分がかなり難しい。もしこれを全く同じサイズと形の物を何個も作れと言われたら・・・心が折れそうだ。
さて、次のお題だがこの立方体のブロックを今度は球形に削りだす作業だ。
銃のグリップに代表されるように、【兵器】の持ち手というのは人間の手で持ちやすいように丸みを帯びているのがほどんどだ。その丸みを出すための練習ってわけだな。
【エナジーカッター】で立方体の角を切り取り、切り取り、切り取り・・・できるだけ切り取ったら、あとは【万能ヤスリ】でひたすら削る、削る、削る・・・おうふ、削り過ぎた。つぶれた饅頭みたいになってしまったぜ。
工房の道具を使うとサクサク進められるのは良いことなんだが・・・その分、加減が難しいな。どうしてもやり過ぎてしまう。この辺りは慣れってことなんだろうなぁ。
うっし! もう一個挑戦すっか!
===時間経過===>一時間後
ふぅ・・・なんとかコツをつかんできたぞ。完璧とまではいかないが、なんとかこれで【兵器】の外装に関してはそれなりの物を作れるだろう。
次の問題は内装だ。今回はエナジー系統の【兵器】の内装を製作していくのだが、その作り自体は割と簡単だ。ざっくり言えば【エナジーコア】と呼ばれる動力源とエナジーの放出口である【出力装置】を【エナジー基板】という板でつなぐだけだ。
まずはテストとして、割りばしのように細い長い【エナジー基板】の先端に【出力装置】、反対側に【エナジーコア】をくっつけると・・・
「うおう!?」
【出力装置】からガスバーナーのようにエナジーが放出された。
これだけで一応は【兵器】の内装になってはいる。ただし、このままではエナジーを放出しっぱなしになっているので、【エナジー基板】に専用のスイッチ部品を取り付ける。するとエナジーの放出が止み、スイッチを押すと再びエナジーが放出される。
後はさらに【エナジー基板】にプロセッサやコンデンサと言った部品を取り付けるとエナジー出力を調節することができる。例えば【ブレード用プロセッサ】を取り付けると放出されるエナジーがブレードに、【弾丸用プロセッサ】を取り付けるとエナジー弾が放てるようになる。
ただこれらの部品の性能はバラつきがあり、適当な組み合わせにすると大した性能にはならなかったりするのだ。例えば【エナジーコア】の性能が高くても他の部品の性能が低ければ暴発の危険があり、逆に【エナジーコア】の性能が低く他の部品の性能が高ければ思うような出力が出せない、なんてことになるわけだ。
この辺りはレシピの指示通りの性能の部品を揃えて組み立てれば問題は無いのだが、当然ながらそれではレシピ通りの性能にしかならない。部品を上手く高性能な物に取り換えればそれだけ出来上がる【兵器】の性能も上がるわけだ。
この辺りはプレイヤーの腕の見せ所と言った所なんだろう。部品を見つけてくるのも、それを組み立てるのも中々大変だ。ましてや一から十まで自分で考えたオリジナル【兵器】を作るとなると・・・言わずもがなだろう。
さて、アヴァンからの課題の総仕上げとして、試しに【エナジーピストル】を作ってみるか。まずはレシピ通りに部品を用意して内装を組み立てて、あとはそれに合わせてグリップと銃身、トリガーを作って、と・・・
===時間経過===>一時間後
な、なんとかできたが・・・正直、無骨だな。装飾も何もなし、なんなら銃身がちょっと歪んでいる、文字通りに出来損ないの小型拳銃だ。
これでも一応、エナジー弾を撃つことはできるんだが・・・ゲロ弱。少なくともアヴァンが作った【グランディスマグナム】と比べたら、その性能はおそらく10分の1以下だろう。
レシピ通りに作ってこれなんだから、オリジナル【兵器】を作ろうと思ったら一体どれだけの試行錯誤が必要なんだろうか・・・そしてそれを短時間で行ってしまうアヴァンは本当の意味での天才なのかもしれない。
・・・今度からアヴァンの【兵器】を使う時はより一層の感謝を忘れないようにしようと思う。
まあ、とにかくこれで【兵器】開発の基本的な流れは理解できた。
腕はまだまだ未熟だがここは一つ、本番にチャレンジしてみるとしますかね。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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