即断、即決、即行動!
===ログイン===>【アークガルド】クランホーム
今日も今日とておはこんばんちは。俺です。
昨日は色々衝撃的な事が色々起こったような気がするが・・・考えすぎても仕方がない。一番まずいのは、頭の中だけで考えてがんじがらめになり、足を止めてしまうことだ。
どうせ分からないことはいくら悩んだって分からないままだからな。悩み続けるより、一つずつ自分のできる所から初めて行くべきだ。
というわけで・・・さあ、今日もはりきってゲームをプレイしよう!!
・・・なんか現実逃避に聞こえるが気のせいだろう、うん。
自分に言い訳をしながら意気込んで自室から廊下に出てみると・・・
「・・・?」
トテトテトテ・・・
・・・なんか見たことがないちっこい何かが廊下を歩いていた。
トテトテトテ・・・コテン!
あ、転んだ。そしてなんかジタバタしている。・・・こけたのが痛かったのだろうか?
とりあえず俺は、ジタバタしているちっこい何かの首根っこを掴んで持ち上げてみる。
「・・・ヌイグルミ?」
そう、ちっこい何かの正体は身長50cm程度しかない2頭身の人型のヌイグルミだった。
人型と言っても見た目はかなりデフォルメされており、頭が大きめ瞳も大きめ、手足は短く体も小さい・・・ヌイグルミというより、マスコットに近い感じだった。
少なくともロボットではない。手に持っている感触も見た目もどう見ても布製だし、この柔らかさからいって中に詰まっているのは綿だろう。ただし、そんなヌイグルミがひとりでに動いていることから考えても中に何らかの装置が入っているのは間違いないだろう。
そして何より気になるのは、このヌイグルミの容姿・・・かなりデフォルメされているが、この容姿は見覚えがある。
「・・・ラグマリアか?」
そう、その容姿はラグマリアをモデルにしてマスコットを作ったら丁度こんな感じになるだろうと思わせるほどラグマリアに似ていた。
その当のヌイグルミは俺に首根っこを掴まれてまるで生きているかのようにジタバタと暴れている。さらにそのヌイグルミが俺に向ける顔は・・・『降ろせこの野郎!』とでも言いたげに感じられた。
なんなんだコイツは? 事情を聞こうにもこのヌイグルミは喋れそうにないし・・・まあ、デザインから考えればアヴァンかラグマリアの仕業なんだろうな。
となると後は本人たちから聞くのが一番早いか。
というわけで俺はヌイグルミをひっつかんだまま、クランホーム地下にあるアヴァンの工房へと向かったのであった。
・・・ヌイグルミが『離せぇえええ!!!』と言っているような気がするが気にしないでおこう。
・・・
・・
・
「む、来たのだ?」
案の定、そこにはアヴァンが居た・・・が、ラグマリアの姿が見えない。
アイツどこ行ったんだ?・・・ハッ!? まさかこのヌイグルミがラグマリア!?・・・なわけないか。
「来たのだよ、アヴァン。で、こいつは何なんだ? まさか新しい【兵器】だとか言うんじゃないだろうな?」
こんな頭を掴んでギューっと握れば、簡単につぶれてしまうような綿装甲なヌイグルミをアヴァンが訳もなく作るとは思えない。まさか趣味で作ったなんてこともない・・・とは思うが、もしそうだったとしたら・・・うん、ノーコメントで。
なお、ヌイグルミが『ぐおぉぉ!? 頭がつぶれるぅぅぅ!?』と言っているような気がするが気にしない。
「それを作ったのは我ではないのだ。ラグマリアなのだ」
「ラグマリアが?」
アイツ・・・いつの間に自分そっくりなヌイグルミを作る痛い奴になったんだ? まさか、そういう趣味だったのか?
なんて考えていると、当のラグマリア本人が工房に入って来た。
「・・・マスターアルク、No.007を連れてきてくれたのデスネ。感謝しマス」
「ラグマリア? ・・・!!」
入って来たラグマリアの姿を見て・・・俺は絶句した。
「ラグマリアが・・・眼鏡っ子に進化した、だと?」
そう、ラグマリアは研究者が着けるようなごつい眼鏡をかけていたのだ。おまけに白衣まで着込んで・・・いつもより賢そうに見える。研究者コスプレにでも目覚めたのか?
「眼鏡っ子ではありまセン。本機は【ヴァルマキア・ブレイン】へと進化したのデス」
「【ヴァルマキア・ブレイン】?」
俺は思わずアヴァンを見ると・・・アヴァンはゆっくりと頷いた。
「うむ・・・数時間前にラグマリアを進化させてきたのだ。本人が言う通り、【ヴァルマキア・ブレイン】に、なのだ」
マジか・・・そういえばラグマリアのしゃべり方がかなり流暢になってるな。若干、カタコトっぽいのが残ってるが・・・進化して言語機能も改善されたってことなのか? よくよく見るとラグマリアの体の各所の機械パーツも微妙に形が変わっている・・・これがラグマリアの進化の形なのか。
しかし、昨日の今日でさっそく進化させるとは・・・アヴァンも中々行動が早いな。時間的に考えてラグマリアのレベルはカンストさせていなかっただろうに。
「うむ、我としてもラグマリアにはカンストまでレベリングしてもらうつもりだったのだ・・・が、本人の希望と、ラグマリアの進化先の一つでもあった【ヴァルマキア・ブレイン】に進化させると、ラグマリア自身が【兵器】開発ができるようになる、と聞いたので早々に進化させることにしたのだ」
「戦闘面に関してはカイザーやミネルヴァといった仲間がおりマスので、本機の性能が多少落ちても、新たな【兵器】開発を優先すべきだと具申しまシタ」
・・・確かに【兵器】開発に関してはアヴァンにまかせっきりだからな。人員が増えるのは歓迎すべきだろうが・・・ラグマリア、そこまで仲間の事を考えていたとは・・・
「・・・それにミネルヴァと本機は若干キャラが被っていマスからね。後輩に追い抜かれないよう本機もしっかりキャラを立てなければいけないと思いマシタ」
「キャラ付けのために進化したのかよ!?」
やっぱりコイツ、いつものラグマリアだわ。
「ちなみに、ついでに我も【転生】してきたのだ」
「アヴァンも!?」
まさかのアヴァンも【転生】してきたのか!? だが、その割には見た目に変化があるようには見えないのだが・・・
「今の我の種族、【ハイ・ジーニア】は見た目より頭脳勝負の種族なのだ。おかげで【兵器】開発がはかどるのだ」
【ハイ・ジーニア】・・・【ジーニア】の正当進化先か。さしずめ天才が大天才になったって所か? 確かにこれなら新しい【兵器】も期待できるな。
「しかし二人とも思い切りが良いな」
「我らのモットーも即断、即決、即行動なのだ」
・・・フッ、さすがアヴァン。それでこそ我らが【アークガルド】の一員。男らしいぞ。見た目は子供だけどな!
「それでラグマリア。結局こいつは何なんだ? ラグマリアが作ったらしいが・・・」
「【ヴァルマキア・ブレイン】となったことで生産系のスキルを取得することができるようになりマシタので、その性能テストの一環として【兵器】開発の他に【裁縫】や【細工】なども駆使して製作してみマシタ。分類上は【ビートル君】たちのようなサポートメカになりマス」
サポートメカ? この『えっへん!』と言わんばかりに胸を張っているヌイグルミのコイツが?
「簡易AIと可動骨格を内蔵し、我々の指示に従って自立行動することが可能デス。また、手足に特殊な装置を組み込んでいるので物を持ち上げたり、そのまま移動したりすることもできマス」
「・・・コイツ、さっき何もない廊下で転んでたんだが大丈夫なのか、それ?」
「・・・どうやらAIの姿勢制御がまだ未熟なようデスネ」
ま、まあ、作ったばかりなら未熟でもしょうがないよな。とりあえずコイツがお手伝いロボットのような事ができるっていう事だけは理解できた。
「ちなみに全10体製作しまシタ。その子は7番目・・・No.007になりマス」
ラグマリアがそう言うと、彼女の足元に俺が手に持っているヌイグルミと全く同じ容姿のヌイグルミがわらわらと工房に入って来た。よく見るとヌイグルミの額にNoがふられていた。俺が手に持っているNo.007以外のNo.001からNo.010まで。
俺が手に持っていたNo.007を地面に降ろしてやると、トコトコトコと仲間のヌイグルミたちの元へ歩いていき・・・10体揃ったヌイグルミたちは横一列に整列して、ビシッとそれぞれ好き勝手なポーズをとった。
・・・そのポーズの意味は分からんが、やるんならちゃんと揃えろよ。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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