あちら立てばこちら立たず
【天龍の魔石】【刀剣の大精霊石】【ゼクシオンジェネレータ】・・・それぞれアーテル、アウル、カイザーを進化させるための最後の素材。
実を言うとこれらの素材は昨日の時点で把握していたりする。
というのも昨日の宴の時に、カイザーから、
「マスター、コレヲ・・・」
と言って渡されたのがバスケットボール程度の大きさの【ゼクシオンジェネレータ】だったのだ。それに続くようにアーテルたちからもそれぞれの進化素材を渡されたわけだ。
どうやら神々の試練っていうのはアーテルたちを鍛えるのと同時に、進化のための素材をくれるためのクエストだったらしい。
当然ながら、俺たちはその進化素材を見て歓喜に沸いた。
俺を含め、ほとんどの奴らは【眷属】たちの進化のための素材をほとんど揃えていたのだ。最後にして最大のネックだったのが、高レアリティの素材。入手場所も分からなかった為、【眷属】たちを進化させるのはだいぶ先になるだろうと思っていた所だったので、それはもう喜んださ。
・・・ちなみにだが、どうしてもっと早く提出してくれなかったのかと聞いてみたら、
「緊急クエスト中、及ビ、ソノ事後処理デオ忙シソウデシタノデ」
という至極当然でごもっともで当たり前な答えが返って来た。せわしない主たちでゴメンよ。
まあ、それはともかく素材が全て揃ったわけだから、さっそく今からでも進化させに行こうか!? くらいの勢いになったんだが・・・そこで待ったがかかった。
「レベルキャップ解放と被ってしまったのがなぁ・・・タイミングが悪かった」
そう、その直前の緊急クエストクリアによって俺たちプレイヤーはもちろんの事、アーテルたち【眷属】のレベルキャップも解放されてしまったのだ。
進化後のステータスは進化前のステータスをある程度引き継ぐものであり、進化前にできるだけレベル上げておいた方がより進化後により強いステータスになるわけだからして・・・当然、アーテルたちも改めてレベルをカンストさせてから進化させた方が良いんじゃないか? という話になったわけだ。
・・・せっかく進化させることができる! となったらレベルキャップまで開放されてしまい、進化は見送りになってしまったという・・・あちら立てばこちら立たず、ままならないもんだなぁ。
まあ、素材が揃っている以上、進化はいつでもできる。
今のレベルで進化させたとしてもステータスにとんでもなく大きな差が出るわけじゃないだろうし、いざ進化させたとしても、その時点でLv.1に戻るから結局はレベリングすることになるわけで・・・どちらにせよ時間はかかるわけだから、すぐに進化させるか、カンストさせるかは各自の判断に任せるということになった。
俺としては少しでも強くなってほしいから、アーテルたちにはレベルカンストを目指してもらうつもりだ。丁度【戦人】に【転生】した俺のレベルも今のアーテルたちのレベルに追いついてきたし、一緒にカンストを目指すのも良いだろう。
ただ・・・
「アーテルやアウル、カイザーの新しい雄姿をすぐに見られないのは残念だけど、な」
まあ、遠い未来の話じゃなくなっただけ良しとするか。というわけでアーテルたちの進化素材を大事に仕舞っておく、と。
「【眷属】たちがカンストした頃にまたレベルキャップ解放が来なければ良いんだけどね」
「・・・不吉なことを言うなよ、ラング」
いや、俺たちにとっては利のあることだから、別に不吉でも何でもないんだがな? 実は俺も同じこと考えてたけど。
アーテルたちのレベルカンストとレベルキャップ解放のタイミングが毎回重なって、いつまでたってもアーテルたちを進化させるタイミングが来ないという謎ループ・・・さすがにそんなことは無いだろう、と思いつつ、何となく不安になってしまう俺である。
・・・うん、万が一、次のレベルキャップ解放のタイミングとかぶってしまったとしても、進化は強行しよう。進化前より進化後の方が強くなるのはもう確定してるし、せっかく素材が揃ってるのに宝の持ち腐れになるのももったいないしな。
男には・・・時として決断しなければいけない時があるのだよ。
とまあ、こんな感じで俺たちは順調に着実に戦力アップしていってるわけだ。
あと戦力アップに必要なのは・・・武器、防具の更新だな。【オリハルコン】を始めとして高レアリティ素材の存在自体は分かっているし、早いとこ見つけたい所なんだがなぁ。
「ワシらの準備は万端じゃぞ! グラントも新たな力を身に付けて帰ってきたからのう! ガハハハハハッ!!」
・・・ご機嫌だな、ガット。グラントが居なかったときはあんなに寂しがってたくせに。ただ、その甲斐もあってグラントも新たなスキルを覚えて帰って来たのだそうだ。
成長した【グラント】となら、高レアリティ素材も扱えると豪語しているガットなのだが・・・いかんせん、その素材がなぁ。
ラングに聞いてもまだめぼしい情報が入ってこないらしい。正確にはチラホラ噂程度には情報が入って来るが確定情報ではないのだそうだ。
【鍛冶師】がやる気でも素材が揃わない・・・こっちはこっちでままならないな。
「皆さーん! 準備できたのです!!」
と、そこでアーニャから調理が終わったという知らせが届いた。
「おー、できたか! じゃあ、さっそく庭に運んで・・・いや」
さっそく宴をと思ったが、そこでふと俺の目に映ったのは【機動戦艦シュテルンアーク】の姿。
「どうしたのよ? アルク」
「・・・ああ、今回は【機動戦艦シュテルンアーク】の甲板で宴と行かないか? ホームエリアなら敵は出ないし、ある程度の高度まで上げれば星空も見えるだろう」
せっかく購入した【機動戦艦シュテルンアーク】だ。船に揺られながら宴をするように、戦艦に揺られながら宴を開くのも良いだろう。
「良いですね、それ! 星空を見ながら皆で騒ぐのもきっと楽しいですよ!!」
「ふむ、粋な計らいというやつなのだ」
「なかなかロマンティックっすね!」
「高度を考えれば・・・いえ、ゲームの世界だから大丈夫でしょう」
俺の提案に皆乗り気になってくれたようだ。・・・アスターにはちょっとした懸念があるようだが・・・大丈夫だろう、多分。
「それじゃあ、皆さん! 分担してお料理を運んで欲しいのです!!」
「「「「おおー!!」」」」
アヴァンが【機動戦艦シュテルンアーク】の高度を下げ、他の皆がそれぞれに料理とイス、テーブルを持ちながら戦艦の甲板へと飛び乗っていく。
・・・そんな中、ラングが俺のそばに寄って来て、耳元でぼそりと。
「・・・君に頼まれた例の調査、まだ少しかかりそうだよ」ボソッ
とだけ言って離れていくラング。
うーん、こっちもままならない、か。やはり横着せずにできる所からやっていくのが無難かな。
・・・というかラングとガットも普通に混ざる気でいるんだな。別に良いんだが・・・後でロゼさんやヴィオレに叱られても知らないぞ。
全員で協力して必要な物を甲板に運びこみ、改めて上昇する【機動戦艦シュテルンアーク】。
戦艦を操作しているアヴァン曰く、自動操縦の場合は【メニュー】から目的地を入力すれば、人が操舵室に居なくとも自動で航行してくれるのだそうだ。
【機動戦艦シュテルンアーク】はゆっくりと上昇し続け・・・やがて雲を突き抜けて少しした所で停止した。
「滞空設定完了なのだ。ついでに戦艦周囲に空気放出も設定しておくのだ。こうしておけば息苦しくもないし、寒くもないはずなのだ」
高度が高いと空気が薄くなり、気温も下がるはずなのだが、俺たちの戦艦はばっちり対策できるようだ。
「・・・戦艦ってそんなこともできるんだね」
ラングが感心した様子でそう言った。・・・俺も今初めて知ったよ。
まあ、おかげで雲の上でも快適な上、景色も見事だ。地平線も見えるし、きれいな星空も眺めることができる。
うんうん。絶景かな絶景かな。
そしてようやく宴の準備が整ったわけだ。
「そんじゃあ、新たな仲間を歓迎して・・・乾杯!!」
「「「「かんぱ~い!!!」」」」
そしていつものごとく宴がはじまる。
「キョ、恐縮デアリマス」
「・・・」
俺たちの宴に初参加のミネルヴァとアイゼンライデンも、アーニャの料理を口にすると、それはもう夢中になって料理を頬張っていた。
ロボットであるにも関わらず、人間のように料理を食べる事が出来る上に、その味もしっかり理解できるのは相変わらず摩訶不思議だが・・・まあ、今に始まったことじゃないし、細かいことは気にしない気にしない。皆で楽しくワイワイ騒げればそれで良いじゃないか。
こんな感じで煌めく星々に見守られながら俺たちの宴の時間は過ぎてった。
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・・・で、終わればそれで良かったのだが、その前に俺にはもう一つだけ・・・俺一人だけで確認したいことがあった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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