機天ガジェット
「【機天ガジェット】だと?」
「そうだよ! アンタはオイラたちの事、知ってんだろ!!」
俺に首根っこを掴まれてジタバタしている少年。その様はどう見ても子供にしか見えない。
少年の見た目は、小学校高学年くらいの子供だが、手足と瞳が金色の機械の物になっている。つまり、この少年はアンドロイドってことになるんだが・・・この少年が【天凱十二将】の一角?
機械の神様だっているわけだし、アンドロイドの神様がいたっておかしくはないだろうが・・・まさか【天凱十二将】の中に機械系の神様がいたとは・・・だがなんでこんな所に?
「アルク!」
「急にどうしたんですか!?」
俺に遅れてアテナとアルマもやって来た。どうやら2人は、この少年がカプセルの裏に隠れて俺たちをずっと見ていた事には気づいていなかったようだ。
ぶっちゃけ俺も最初は気づかなかったのだが・・・そう、アギラが透明になって潜んでいた時と同じような違和感を感じて、二人と話しながら探ってみてたまたま見つけられたわけだ。
これほど巧妙に隠れていたから、アギラ本人か、その手下かと思ったのだが・・・まったく関係なかったらしい。。
「あー! アンタ、オイラを叩き起こした・・・ってあれ? なんで2人? 分身?」
・・・いや、まったく関係ないわけでもないようだ。
どうやら少年は二人を知っている・・・否、二人と同じ容姿の人物を知っているようだ。しかも、この少年を叩き起こしただと? それはもしや・・・
「・・・すまんが、【機天ガジェット】って言ったか? 初めから説明して貰えるか?」
「むー・・・分かったから、いい加減離せって!!」
あ、まだ首根っこ掴んだままだったな。悪い悪い。
・・・
・・
・
お詫びではないが、話をスムーズに進めるために我が【アークガルド】自慢のお菓子とジュースをくれてやったら案の定、ベラベラと事情を話してくれた。やはり子供相手には美味しい物で釣るのが一番だな、クックック。
「オイラ、ちょーっと前にこの辺りを散歩してたんだけど途中で眠くなっちゃって、ここの施設を借りて昼寝してたんだ」
・・・話してくれるのは良いが、話してる内容がちょっと理解できない。
「えーっと、つまり【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】の中を散歩して回ってたってことか?」
「ここの名前なんて知らないよ。オイラ、この世界の太陽の近くで日光浴してたんだけど、しばらくして飽きちゃったからこの辺りの星系をブラブラ飛んで回ってたんだ。そしたら、たまたまここを見つけて中に昼寝できそうなカプセルがあったから使わせてもらっただけ」
「・・・一応聞くが、それってどれくらい前の話なんだ?」
「えーっと・・・百年くらい前かな」
「・・・」
ツッコミどころが満載すぎる。
太陽の近くで日光浴ってなんだよとか、君の体アンドロイドだろとか、太陽系は散歩コースにするのはどうなんだとか。それって不法侵入じゃないかとか、百年も昼寝してたのかとか。
【天凱十二将】の存在を知らなかったら、自称神様の妄想悪ガキとしか思わなかっただろうな。
「この子の言ってること・・・ホントなのかしら?」コソッ
「ああ見えて神様らしいですから、それくらいは普通なのかもしれません」コソッ
同じく話を聞いているアテナとアルマも半信半疑な様子だ。人間と神様のスケールを比べちゃ駄目ってことなのかもな。
「それで気持ちよく寝てたら突然、起こされちゃって・・・そこの女の人たちにそっくりな女の人」
「ふむ・・・ソイツって彼女たちにそっくりだけど、緑色の髪と瞳のアンドロイドじゃなかったか?」
「そうそう、その人! なんだ、やっぱり知ってんじゃん!!」
やはりそうか・・・だが何故アギラが?
「だけどオイラ眠かったから、その人のこと無視してたら・・・」
「してたら?」
「燃やされちゃった!」
「・・・」
少年が指差す方向に、消し炭になったカプセルの残骸らしき物が。しかし、少年の体には灰のかけらすら付いている様子はない。要するにアギラの攻撃は効かなかったということなんだろうが・・・この場合、さすが神様と驚くべきなんだろうか? それとも神をも恐れぬ狼藉を働くアギラに戦慄すべきなのか?
「で、仕方なく起きて何の用か聞いてみたんだけど・・・オイラの力が欲しいって。オイラが【天凱十二将】の一角だって知ってたみたい」
ふむ、ということはアギラは【機天ガジェット】がここで眠っていたことを知っていたのか・・・って!!
「もしかして、その人に君の力を?」
まさかのアギラがさらなるパワーアップを!?
「ううん。その人には資格が無いから無理だった」
資格・・・ああ、この少年に該当する天の【称号】を持ってなかったってことか。良かったぁ。
「だから『資格を持って出直してこい、バーカ』って言ったら怒っちゃったのか、オイラに電撃食らわせて帰っちゃった」
・・・口が悪いなこの子。しかし、子供相手に容赦なく電撃とは・・・八つ当たりが過ぎるぞ、アギラ。
「あんまり痛くはなかったけど・・・しびれちゃってさっきまで動けなかったんだ。で、動けるようになったと思ったらお兄ちゃんたちが来たから、あの人の仲間かと思ってとっさに隠れて盗み聞きしてたの」
なるほど・・・事情は分かった。少なくとも聞いてる限り、この少年は悪くはないと思う。ツッコミ所は多数あるし、隠れて盗み聞ぎしていたのは悪い事ではあるが・・・事情が事情だけにこの少年を責めることはできないだろう。悪いのは全部アギラだ(笑)
・・・ん?
「ちょっと待ってくれ。君が起こされたのっていつだ?」
「え? えーっと・・・大体1時間くらい前かな?」
「「「!?」」」
その時間は・・・【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】が解禁になってすぐ辺りか!? まさかアギラがここに来ていたとは。
「もしかしてまだこの拠点の中に!?」
「いえ、その人は【ハッキング】ができるのでしょう? 【ハッキング】で拠点内の情報を得ることができるのなら、この拠点の中をウロウロしているとは思えません」
アギラの奴、随分と大胆不敵じゃないか・・・というかアイツ、ここに【機天ガジェット】が眠っていたことを知っていて黙っていたのか。まあ、敵である俺にわざわざ教える必要は無いから黙っていたんだろうが・・・現にこの少年は俺の目の前にいる。
はっきり言ってアギラの電撃は逆効果だったことになるのだが・・・これは偶然なのか? だが、俺たちがこの時間にここを訪れたのは偶然だ。いくらアギラでも俺たちの行動まで予測はできないだろうし・・・偶然と考えるしかないか。
まあ、これが偶然だろうが罠だろうが、俺にとっては絶好のチャンスだ。逃す手はない。
「・・・さっき、君は俺に向かって『オイラたちの事、知ってんだろ』って言ってたよな?」
「うん。お兄ちゃん、他の【天凱十二将】の力を持ってるんでしょ? すごいよねぇ。オイラたちのスキルを使える人間なんて何千年ぶりだろ?」
え? そんな壮大な年月、使い手が居なかったの? どんだけレアなんだよ、【天凱十二将】のスキルは。
「それなら話が早い。俺も君の力が欲しいんだが・・・どうだろうか。俺にはその資格があるかな?」
確か天の【称号】はいくつか取得していたはず。その中にこの【機天ガジェット】に該当するものがあれば良いんだが・・・
「・・・うん、資格はあるみたいだね。でもそんなにオイラの力が欲しいの?」
「ああ、もちろんだ!!」
「そこまで言うんだったらしょうがないなぁ・・・それじゃあ、お兄ちゃんに問題!!」
む、【天凱十二将】の力を得るための試練か。よっしゃあ、どんとこい!!
「機械を壊しちゃう調味料はなーんだ?」
・・・ほわっつ?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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