表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
753/797

二人の願い

フッ・・・この俺の無心を打ち破るとはさすがだな二人とも。こうなれば俺も黙秘権を行使し続けるわけにはいかない。


「さて、盛大に話が逸れてしまったが・・・本題に戻ろう」


「なに、しれっと話を戻そうとてんのよ」


・・・アテナよ、お前はこんな所で俺に正座させるだけでは気が済まないというのか。そもそもあのお色気シーンもどきを始めたのはアテナだろうに。


ちなみにアテナの服は既にばっちり乾いている。このゲーム世界では服が濡れたりしてもすぐに元に戻ってしまうのをすっかり忘れてたぜ。


つまり、アルマがタオルを出したのもフェイクだったというわけだ。


しかし、だ。


仮に罠だと気が付いていたとしても、俺は自らその罠に飛び込んでいただろう。


虎穴に入らずんば虎子を得ず。たとえ火の中水の中、そこにおっぱいがあるのならアイタッ!?


・・・アテナに脳天唐竹割りを食らってしまったぜ。


「まあまあ。アルクさんの言う通り、茶番はこれぐらいにして本題に入りましょう」


おお、アルマは分かってくれるんだな・・・だが、その茶番に協力したのもアルマだよな?


「・・・アルクさんがこういうお色気に弱いことは確認できましたしね」ボソッ


・・・おい、コイツ今なんて言った? 俺の弱点を知って何をする気だ?


・・・駄目だ・・・アルマの奴、女神のような満面の笑みで誤魔化してやがる。


いかんな、このままでは峰不〇子のお色気に引っかかるル〇ンのごとく、二人にこき使われる未来が見えてきそうだ。色仕掛けに引っかからないよう、俺ももっと心を鍛える必要がありそうだ。・・・できる気がしないが。


「それで? 本題っていうのはつまり、残り3人の人格をどうやって見つけるかってことよね?」


「そうですね。とは言っても名前も顔も・・・まあ、顔は同じだと思いますが、名前も居場所もわからない相手を探し出す妙案は思いつかないのですが・・・アルクさんはどうです? 何か案がおありですか?」


二人が何かを期待したような目で俺を見つめてくる。俺は正座を止めて立ち上がり、堂々と胸を張ってこう答えた。


「無い!!」


「・・・」


「・・・」


・・・そんな呆れたような目で俺を見ないでくれよ。


「大体、このバカみたいに広いゲーム世界で逃げ回ってる奴らだぞ? 俺たちだってまだまだ行ったことが無い場所がたくさんあるわけだし・・・ノーヒントで見つけろって言うのが無理な話だろ」


正攻法で探すとなれば、このゲームの管理AIに捜索をしてもらうのが最も確実だろう。ログイン履歴、行動履歴、戦闘履歴などから、該当者を見つけ出すことができるはず。


とはいえ、一プレイヤーにそんなこと調べることはできない。これに関してはゲーム運営の関係者である二人の両親の頑張りに期待したいが・・・アギラの話では管理AIですら見つけられていないらしいからな。


その3人は何らかの()()()()()でゲームシステムによる探索から逃れている可能性が高い。


「それなんだけど・・・その3人は本当に逃げ回っているのかしら?」


「ん? どういうことだ?」


「その3人はたまたま私たちの知らない場所にいるだけで、当人たちは逃げ回ってるつもりはないんじゃないかってことよ。普通にゲームプレイしているだけなら、どうにかして呼びかければ普通に答えてくれるかもしれないじゃない?」


・・・なるほど? 確かにアギラからの情報では何故か当の3人が逃げ回っているという様子だったが、実は違うんじゃないかってことだな。つまり、アギラが故意に偽情報を流した、もしくはアギラたちも誤解している可能性があるわけだ。


確かにアギラの情報だけでは判断できないだろうが・・・


「・・・いや、少なくともその3人は俺たちの前に顔を出す気は無いんだろう」


「なんでそう言い切れるのよ?」


俺が言いきったのが不思議だったのか、アテナがそう問いかけてきたが、それに答えたのは俺ではなくアルマだった。


「アテナ、私たちはバトルトーナメントで上位に入ったでしょう? トーナメントはプレイヤーにも生中継されていて、ほとんどのプレイヤーが視聴していたはずです。さらに私たちが優勝者であるアルクさんのクラン【アークガルド】に所属していることも多くの人に広まっているはずです。そして【アークガルド】はいち早く【レギオンガルド島】という誰でも入れる島を購入し、そこに本拠地を置く有名なクランでもあります」


そこまで言われてようやくアテナも理解したようだ。


「そっか・・・つまり、その3人が顔を出す気があったのなら、もうとっくに【アークガルド】に接触しに来てるってことね?」


「「そういうこと」」


その3人は確実にアテナやアルマの現状を知っているはずだ。にもかかわらず接触が無いということは少なくとも3人の方から俺たちの前に姿を現す気が無いということだ。


とはいえ、その3人もアテナやアルマに対してまったくの無関心というわけではないはずだ。なにせ自分自身の事でもあるわけだし、直接は姿を現さなくとも俺たちが知らない内にアテナやアルマの事を遠くから見守っていた可能性だってある。


もしそれほど近くに来ていたのなら、そしてそれが今でも行われているとしたら・・・俺の【固有(オリジナル)能力(アビリティ)】で捕捉できる可能性が高い。


・・・というのはいくら何でも希望的観測すぎるかな。ただ闇雲に探し回るよりは可能性があるはずだ。


ただ、これではいつ来るとも分からない瞬間を待ち続けないといけなくなる。もう少し何か・・・そう、待つにしても、向こうから接触してくるような確実性のある餌とかがあればな。


「・・・」


「・・・なによ、私たちをじっと見つめたりして」


「何か妙案でも思いついたのですか?」


妙案ではないが、2人を餌にして目的の3人を釣ることができなくもないかと思ってな。


「たとえば2人がクランリーダーから酷いセクハラを受けているという噂を流したら、それを聞いた3人が助けに来るかもしれないなぁ・・・と思ったり・・・いや、なんでもない」


やべぇ、2人の顔が見たこともないほど怒りに染まってきて、思わずしり込みしてしまった。


「・・・私たちを囮に使うまではまだ良いわ」


・・・それは良いんだ。なかなか器が広いんですね、アテナさん。だけどその顔はどこからどう見ても、俺の提案を聞き入れようって顔じゃないよな?


「でも、それってアルクさん一人で泥をかぶるってことですよね? そんな方法を私たちが了承すると思っているのですか?」


・・・だが、それぐらいじゃないとおびき寄せるなんて無理だと思うんだ。その3人も2人を見捨てるような事はしないだろうし・・・とりあえず俺を睨むのはやめてくれないかな、アルマさん。


「それにそんな方法じゃあ、仮におびき寄せることができても説得なんで無理じゃない?」


「そうですね。一方的に敵対視されるだけでその後の対応が難しくなるのでは?」


まあ、確かにその懸念は俺にもわかる。一度敵になってしまったら信頼度は0どころかマイナスだ。そんな相手からの説得なんて聞き入れる奴はいないだろう。そう、説得なら、な。


「その時はそうだなぁ・・・『お前たちの体は預かった。エロい事をされたくなければこちらの指示に従え』って脅しをかけるってのはどうだ?」


「「普通に犯罪!」」


ドビシシッ!!


「ぐふおわっ!?」


喉元と鳩尾の・・・同時攻撃・・・だと? フッ、さすが同一人物同士。息がぴったり合った完璧なコンビネーションだ。


「まったく、少しは真面目に考えなさいよ」


「失敬だな。2割くらいは本気で考えたぞ」


残り8割は悪ノリとブラックジョークだが。


「それってつまり、いざとなったら本気で実行するかもしれないって事ですよね?」


・・・付き合いがそれなりに長くなってきたせいか、アルマに俺の性格が見抜かれてきている気がする。俺の心の声は最初から筒抜けだったみたいだが。


しかし、実際問題・・・例えば彼女たちの肉体の方に緊急的な問題が発生した場合は、たとえ最悪な手段であったとしても・・・


「ん?」


そこで何を思ったのかアルマが俺の手を強く握りしめ、まっすぐに俺の目を見据えながら、こう言ってきた。


「お願いですから無茶なことはしないでください。先ほども言った通り、私たちはそこまで切羽詰まった状況にいるわけではありません。それに私たちの居場所は【アークガルド(ここ)】です。そこにはアルクさんが居ることが必要不可欠なんです」


・・・不安と恐れが入り混じったような、すがるようなアルマの目・・・こういうのに弱いんだよなぁ、俺。


「・・・わかったよ。そもそも本気度は2割ぐらいだって言ってるだろ。実行するつもりなんてさらさらないっつーの」


下手したら垢バン待ったなしだからな。ゼルクの事もあるからさすがにそれは俺も困る。


「でも他の皆に聞かせられない提案だから、先に皆をクランホームに帰したのよね?」


・・・ばれてーら、ゴルゴンゾーラ(意味不明)


クッ・・・俺はもう2人の前では悪だくみできないというのか!?


「さて、そろそろ戻りましょうか。今後の方針は皆さんを交えて話し合いましょう」


「そうね。アルクがおかしなこと考える前に皆で方針を決めてしまいましょう」


・・・ふーむ。どうやらアテナもアルマもいつもの調子を取り戻したようだな。一応ながらアギラの足跡をたどって来たのも無駄ではなかったようだ。


だが戻る前にもう一つやることがある。


「そうだな、そろそろ戻ろうか【韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】!」


そう言った瞬間に超加速した俺。当然ながら超加速して帰ろう、という事ではない。


超加速状態のまま、この部屋に設置されている()()()()()()()()()()に回り込む俺。


そして・・・


「うわっ!? なんだよ! 離せよ!!」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の首根っこを掴んで捕まえることに成功した。


フトドキ者の正体は・・・どうやら子供型のアンドロイドのようだが、何者だ?


「こんな事して良いと思ってんの!? こう見えてもオイラは【天凱十二将】の一角、【機天ガジェット】様だぞ!!」


・・・ほわっつ?

(*・ω・)*_ _)ペコリ


作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に


是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。


m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ