アークカイザーとアークミネルヴァ
宇宙を駆ける二機の【クランメカロイド】。
対するは巨大なカニ型ロボット。
アークカイザーやアークミネルヴァより巨体ではあるのだが・・・正直、あんまり強そうに見えないな。
見た目はまさにカニで、2本の巨大なカニばさみと残り8本の脚から察するにズワイガニがモデルなのかもしれないが、銀色のメタリックカラーのカニはどこからどう見ても食べられそうもない(笑)
さらに8本の脚の先っぽがスラスターになっているようで、それで移動しているようだ。意外と機敏に動きそうに見えるな。
そのカニロボだが・・・発進カタパルトによって高速射出されたアークカイザーやアークミネルヴァの事は既に把握済みのはず。しかし、避けるでも迎撃するでもなく、巨大なカニばさみをカチカチさせなながら待ち構えているのを見ると相当自信があるのか、それとも・・・戦力差を理解できないほど頭が悪いのか。
いずれにせよ、俺たちの後ろには【機動戦艦シュテルンアーク】があるからな。あんなカニ野郎に俺たちの戦艦を傷つけさせないためにもこれ以上進ませるわけにはいかない。
「アテナ!」
「分かったわ!」
阿吽の呼吸、息の合ったコンビネーションで俺たちは・・・
「「ダブルキィーーック!!」」
カニロボに蹴りを食らわせた。
ドゴッッッッ!!
「dh2お3え!?」
直撃したカニロボは目の部分をチカチカさせ混乱している様子だった。・・・攻撃が来るのなんてわかりきってるだろうに・・・やっぱり頭が悪い方なのか? 。まあ、それはそれで戦いやすいだろうから俺たちにとっては好都合なんだが。
「【聖弓レッドセラフ】! 【アローレイン】!!」
アテナが操縦するアークミネルヴァはカニロボから距離を取りつつ、大量の矢を放って牽制してくれている。どうやら事前に話していた通り、大人しく後方支援に回ってくれているようだ。
ならば、ここからは俺たちの出番だ。【豪剣アディオン】をアークカイザーに持たせ、カニロボとに斬りかかる。
「【マキシマムスラッシュ】!!」
ガキンッ!!
・・・む、カニばさみでガードされた。思った以上に硬いな。【豪剣アディオン】の一撃をもってしても切るができないとは・・・アークミネルヴァが放った矢もあんまり効いているように見えないし。
『やはり宇宙空間での活動が前提のロボットなだけあって相当に頑丈に造られているようなのだ』
通信から聞こえてくるアヴァンの言う通り、あのカニロボも【ヴァルムセル装甲】を持った頑丈なロボットなんだろう。それに俺の剣をまともに受けてビクともしないパワー・・・見た目とは裏腹になかなかやるようだ。
「それでは弱体化する所から始めましょうか」
アークミネルヴァが得物を【聖弓レッドセラフ】から【魔杖ブルーゼブル】へと変更していた。さらにこの声・・・はアテナと同じだが、口調からしてアルマか。
「屈強なる剣士の剣、頑強なる戦士の鎧、その力を脆弱に突き堕とす!!【鉄錆の嵐】!!」
アークミネルヴァが放った【魔法】により、大量の灰色粒子の嵐がカニロボに襲いかかる。・・・今更だが、宇宙空間でも変わらず【魔法】が使えるんだな。空気も風も無い宇宙空間で嵐が起こるのは不可思議だが・・・それこそ【魔法】だからな。【魔法】の神秘ってことで気にしないでおこう。
「jづwhんwp!?」
カニロボの奴、なんだこれは!?って感じで焦ってるな。想定外の敵の動きに弱いタイプなのかもしれない。
なんにせよ、これで奴の装甲の防御力は低下したはずだ。
「【マキシマムスラッシャー】!!」
スパンッ!!
アークカイザーが斬撃を飛ばすと、カニロボの8本の脚の内の1本がスパッと斬れた。やっぱりアルマのあの敵の装甲を劣化させる【魔法】は便利だな。俺も取得を目指すべきか。
「この調子でどんどん・・・む?」
この勢いでカニロボを倒そうとしたその時・・・カニロボは斬り裂かれた脚を自身の体から分離させた。
・・・いや、それだけじゃない。無事だった残り7本の脚も・・・何のつもりだ?
俺たちが切った脚は動く様子を見せないが、残り7本の脚がこちらに脚先を向けたかと思うと・・・
「うおっ!?」
「回避スルデアリマス!!」
脚からエナジー砲を撃ってきやがった! どうやらあの脚は独立稼働する移動砲台にもなるようだ。多芸なカニロボである。
だが、その程度の攻撃は俺たちには通用しない。
「【ミーティアルスラッシャー】!」
「【サイクロンエッジ】!」
アークカイザーが大量の斬撃を、アークミネルヴァが大量の風の刃をそれぞれ放ち、独立稼働している脚たちを全て斬り落とした。アルマの【魔法】で弱体化しているからか破壊するのはそう難しくなかった。
さて、これでカニロボは脚を全部失ったわけだ。あの脚が移動用スラスターの役割を果たしていた事を考えると、もうあのカニロボは前に進むことも横にカニ歩きすることもできないだろう。
なんて思っていると・・・
カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ! カシャンッ!
「げげっ!?」
カニロボから新しい脚が生えてきた。それもアルマの弱体化の【魔法】の影響を受けていない新品の脚。どうやら体内に予備の脚を常備していたようだ。
さらにカニロボは再び脚を切り離してこちらを砲撃してくる。
「脚の着脱で私の【魔法】の弱体化から逃れるなんて・・・ロボットならではの方法ですね」
「普通、弱体化した箇所を体から切り離すなんて生物にはできないしな。・・・おっと!?」
脚から放たれるエナジー砲・・・脚ビーム? から避けつつもそんな会話を続ける俺たち。
そんな俺たちを追い詰める為かカニロボはさらに新しい脚を生やして切り離し、こちらを砲撃してくる。おいおい、あの予備の脚、何本あるんだよ。いや、もしかして予備ではなく、これがあのカニロボの戦闘スタイルなのか? だとすると、あの脚砲台は今みたいな調子でどんどん増やしていくことができるのかもしれないな。
「あれが生物のカニだったら・・・カニ食い放題だったのになぁ」
あのカニロボがロボットであることが実に惜しい。
「・・・マスターガタ、余裕デアリマスネ。現状ヲ分析スル限リ、コチラガ不利ダト思ウノデアリマスガ・・・」
ふむ、俺たちのいつもの勝手がわからないミネルヴァが俺たちの余裕ぶりを見て困惑しているようだ。確かに客観的に見たらコチラが不利・・・のように見えるが、それは少し認識が甘い。
「ミネルヴァ、戦況はもっと冷静に、余裕を持って的確に把握しないと駄目だぞ。あの程度の砲台が数を増やした所で俺たちには当たらないし、数が厄介なら増える前にカニロボ本体を倒せば良い。あのカニロボをよく観察すれば倒す算段がつくはずだ」
「観察・・・デアリマスカ?」
新顔であり、まだまだ学習していくことが多いミネルヴァはまだまだ観察眼がなっていないようだ。まあ、それはこれから鍛えていけば良い話。俺たちの戦い振りを見て学んでいってほしい所だ。
「そうだ。カニロボを見ていればわかるはず。・・・まず、奴が脚を切り離し、新しい脚を生やすのにおよそ8秒近くかかっている。その間、奴は身動きできず無防備になっているのは明白だ。さらに奴の体自体は今だアルマの弱体化の【魔法】の影響を受けたままだ。脚は生え変わらせることはできても体の方を脱皮させることはできないってことだな」
「・・・ツマリ、目標ガ身動キデキナイ瞬間ヲ狙ッテ本体ヲ攻撃スルトイウコトデアリマスカ?」
「正解だ」
良いぞ・・・ミネルヴァもなかなか優秀じゃないか。
「それじゃあ、さっそくその案で行ってみましょうか!!」
【魔杖ブルーゼブル】を仕舞い、【魔法】の準備に入るアークミネルヴァ。今度はアテナの【魔法】を使うようだな。
そんなアークミネルヴァを脚砲台たちが狙い打とうとしているが・・・
「そうはさせない。【シャイニングフェザーインパクト】【オービットソード】」
アーテルとアウルのスキルを使い、脚砲台たちを攻撃する。弱体化していない分、頑丈なままのようだが・・・だからと言って破壊できないわけではない。
「さらに駄目押しで【魔天の叡智】! 【サンダーボルト】!!」
バチバチバチバチッ!!
威力を最大級まで底上げした雷撃で、脚砲台たちを撃墜していく。
それを見て焦ったのか、カニロボはさらに自身の脚を分離させた。しかし、その瞬間こそ俺たちが狙っていた絶好のタイミングだ。
「行くわよミネルヴァ!!」
「了解デアリマス!!」
「あまねく太陽の輝きよ、灼熱の赤き炎であらゆる物を焼き尽くせ!【太陽の劫火】!!!」
脚砲台たちを無視し、カニロボ本体に太陽のごとき劫火の火球が向かっていく。脚砲台の出力では火球を止めることはできず、このままカニロボに直撃するかと思われたが・・・
バシュンッ! バシュンッ!!
カニロボはなんと自らに残っていた巨大なカニばさみまでをも射出した。
カニばさみは火球とぶつかると同時に・・・
ドォオオオンッ!!
大爆発を起こした。誘爆を起こしてしまったのかアークミネルヴァが放った火球まで爆散してしまう。あのカニばさみ、切り離すとミサイルとしても使えるようになるのか。
結果として、カニロボは無傷のまま新たな脚はもちろん、カニばさみまで生やそうとしていた。
「・・・失敗デアリマスカ」
とミネルヴァが落胆したような声を漏らしたが・・・いいや、失敗なんかじゃないぞ?
なんせ、今の爆発のどさくさに紛れてアークカイザーがカニロボの背後に回り込んでいたんだからな!
「【勇天の一撃】!!」
無防備な背後からアークカイザーの一撃を受けたカニロボは、見事にその身を真っ二つにして・・・最後には爆発して散った。
その様子を驚いた顔で見ているミネルヴァに俺は言う。
「・・・カニばさみにも何かあるだろうというのは予想の範囲内。それによって【魔法】が防がれることを想定し、さらに次の手を打っておくのは当然だぞ、ミネルヴァ」
戦いは二手三手先まで読んでいた方が勝つ。まあ、この辺りは経験則というのもあるがな。
「ミネルヴァ。我ラガマスターハ戦闘ノエキスパートナノデス。我々ハマスター達カラ多クヲ学ビ糧トシテ強クナラネバナリマセン」
「・・・了解デアリマス!!」
うむ、良き返事だ。ミネルヴァも俺たちの立派な戦力となってくれそうだ。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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