機動戦艦シュテルンアーク
「うわぁ・・・」
「すごいのです!!」
初めて宇宙の光景を見たアスターとアーニャが感嘆の声を上げていた。同じく初めて乗った戦艦や宇宙を初めて見る【眷属】たちも大はしゃぎしている。
現在、【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】から発信した【機動戦艦シュテルンアーク】は順調に航行中である。
余談だが、シュテルンとはドイツ語で星の意味がある。なのでシュテルンアークというのは星の箱舟という意味になる。まあ、アークは英語だから厳密に言うと違うのかもしれないが・・・細かいことは気にしてはいけない。
そんな【機動戦艦シュテルンアーク】を操舵中の俺。
景色がぶれない程度に加速したり、上下左右にハンドルを回したり、いろいろ確認中である。
「ふむふむ。動力源は戦艦用【ゼクシオンジェネレータ】でほぼ無限に稼働し続けるようなのだ。燃料切れの心配はないようなのだ。あとは・・・ふむ、自動航行モードもあるようなのだ。目的地を入力すれば後は勝手に目的地まで運んでくれるようなのだ」
俺の横ではアヴァンがマニュアルを確認している。わざわざ読み上げているのは操艦中の俺や他の皆にも伝える為だ。・・・ほとんどの奴が聞いてないっぽいが。
なお、お察しの通り俺以外は全員席を立ってあちらこちら好きに行動してたりする。クルー用の後部席の意味は一体・・・
ビービービー!
と、そこで警報音が鳴り響く。そしてモニターに警報の原因となる物が映し出されていた。
「・・・隕石群か・・・数、およそ20。距離、前方およそ5000といった所だな」
要するに、この戦艦の半分程度の大きさの隕石たちがこちらに向かってきてるってことだな。戦艦もまた消耗品であり、隕石にぶつかってダメージを受け続けたら航行不能になる。
この距離なら回避するのも簡単だが・・・
「せっかくだからこの戦艦に取り付けた攻撃砲台のテストといこうか」
「うむ。威力がどの程度のものか確認しておきたいのだ」
というわけで全攻撃砲台を前方隕石群に向ける。照準は自動でやってくれるみたいだ・・・が、まだ少し距離がある。
もう少し引き付けて・・・距離が3000まで来た所で・・・
「全砲門、一斉発射!!」
ポチッとボタンを一つ押すだけで戦艦随所に配置されていた攻撃砲台全10門から、エナジー砲が一斉に発射される。
10の閃光が隕石群へと向かい・・・大・爆・発!!
見事に全ての隕石が粉々に砕け散った。
「うわぁー、すごい威力っすね」
「単純な威力と規模で言えば私の【魔法】以上に見えます」
アシュラやアルマが感嘆の声を漏らす中、俺はアヴァンに確認した。
「どうだ、アヴァン?」
「ふむ・・・一発一発が【グランディスバスターキャノン】以上の威力があるようなのだ。さすがにこれだけの戦艦と砲身に見合うだけの威力なのだ」
「今のは単純に全ての砲門をキャノンモードにして撃ったが、他にも連射可能なガトリングモード、実弾を装填可能なブリットモードもあるみたいだ」
「うむ、可能性が大きく広がるのだ」
もうこれだけ撃ちまくっていれば良いんじゃね? と思えるほどの威力と利便性だったが、残念ながらそう美味い話ではなかったようだ。
再びレーダーが隕石群をキャッチ。ただし今度はこちらに向かってくるのではなく、戦艦前方を左から右に流れていく隕石群だった。
この隕石群を先ほど同じように自動照準で狙い撃ちした所・・・半分以上が当たらずに通り過ぎてしまった。
「・・・照準に難ありってことか?」
「そのようなのだ。元々隕石は高速で移動しているのだ。だから照準がぶれたのだ。これが敵の【機械兵】だったりするともっとぶれると思うのだ」
当然ながら、呆然と棒立ちのまま砲撃を受ける敵はいない。自動照準では動き回る敵に対する照準に限界があるようだ。
「そこでこれを使うのだ」
とアヴァンはマニュアルの一部を見せながらそう言った。なになに・・・マニュアル切り替え? なんでも攻撃砲台はボタン一つで自動照準からマニュアル操作に切り替えられるようだ。
試しに、マニュアル操作に切り替えてみると・・・
「おお、なんか出てきたっす!!」
クルー用の後部座席の内、10席に・・・モニターとコントローラ? らしきものが出現していた。さっそくアシュラが10席の内の1席に着席し、コントローラをガチャガチャいじっていると・・・
「むむむ・・・モニターの映像は攻撃砲台から送られてきてるみたいっすね。このコントローラで上下左右に動かせるみたいっす。そしてこのボタンで・・・シュートっす!!」
アシュラが何やら気合入れてボタンを押すと、確かに砲台の一つからエナジー砲が発射された。なるほど、あのコントローラと画面で砲身を動かして撃つことができるってわけか。ますますゲームっぽいな。
アシュラに続いて他の皆も・・・なぜかアウルたちも席に群がってコントローラをかちゃかちゃやり始めたのだが・・・こらこら、何もないとはいえエナジー砲撃ちまくるのはやめなさい。万が一誰かの戦艦に当たったらどうすんだ。せめて隕石を的にしてくれ。
とまあ、こんな感じで道中の隕石を撃ち落としながら遊んでいると・・・
ビービービー!
再びの警報音。しかし、今度の警報は隕石の接近を知らせるものではなかった。
「前方、距離およそ8000・・・この反応は【機械兵】か!?」
どうやら宇宙にも出現するという【機械兵】に遭遇してしまったようだ。
さっそく、その姿をモニターに映し出すが・・・
「・・・カニ?」
「カニに見えるわね」
「まんまカニですね」
そう、そこに映し出されたのはカニそっくりのシルエットをした・・・というかまんまカニ型ロボットだった。
・・・映像越しに【看破】で確認。
【スペースドロイド・クラブ Lv.50】
宇宙を漂う【アースヴェルト帝国】が開発した宇宙戦用カニ型ロボット。
なんでカニが宇宙を漂ってるんだよ!! あれも【機械兵】・・・いや、分類的には【機獣兵】か? 宇宙戦用カニ型ロボットってなんだよ!?
「理由はさておき・・・あのカニは全長30m近い巨大ロボットのようなのだ。アルクどうするのだ?」
「もちろん先手必勝っすよ!!」
と、俺への問いかけになぜかアシュラが答えて砲撃しまくっている・・・が。
「全然、当たらないっす!!」
カニはまろやかな動きでアシュラの砲撃を避けていた。なかなかすばしっこいカニ・・・というのもあるが、それ以前にアシュラよ。さっき距離8000って言っただろうが。砲撃を当てるには敵が遠すぎるっつーの。
しかし懸念通り、動き回る敵に砲撃を当てるのは難しそうだ。もっと距離を詰めれば直撃させる可能性がぐっと高くなるが・・・下手に近づきすぎてせっかく買ったばかりの【機動戦艦シュテルンアーク】が傷付くのも嫌だからな。
俺は操舵席から立ち上がると・・・
「アヴァン、操縦を頼む。・・・アークカイザーとアークミネルヴァで出るぞ」
さっそくアークミネルヴァの初陣である。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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