魂の回廊
===ログイン===>【アークJdnFDWPwm
『【固有能力:天醒者】の効果により【天醒:魂の回廊】が発動しました』
・・・むぅ、またこの展開か。
真っ暗で何も見えない空間で、どこからかスポットライトは8つ、天から降り注いでいる。
スポットライトの一つは椅子に座っている俺を、残り7つの内4つは前回と同じく意識が無い様子で椅子に座っているアテナ、アルマ、アニス、アギラの四人を照らしている。
そして残り3つは空席の椅子を照らすのみだ。
・・・今ならわかるな。この状況は彼女たちの7つの人格の内、俺が出会ったことある4人と消息不明の3人の事を現しているのだろう。
問題はこれが俺の頭の中だけの妄想なのか、何者かが見せる幻覚かなにかなのか、だが・・・【固有能力:天醒者】の力で見ているらしいからどちらも違うっぽい。
っていうか【天醒:魂の回廊】ってなんだよ。
この状況で俺にどうしろと言うんだ・・・と俺が頭を悩ませていると、不意にどこかか声が聞こえてきた。
『・・・まさか、魂の方に直接接触してくるなんて、ね』
・・・この声はもはや聴きなれた彼女たちの声。あいにく彼女たちの声は四人とも全く同じなのでアテナ、アルマ、アニス、アギラの内、誰の声なのかはわからないが・・・ただ目の前にいる四人は眠っているかのようにピクリとも動かないので、四人の内、誰かが喋っているわけではないようだが・・・声だけがはっきりと聞こえて来た。
一体だれが? どこから・・・周囲の闇を見渡しても何一つ見える者は無い。だが、それでも声はどこからか響いてくる。
『7つに分かれ、好き勝手に行動している精神たち・・・でも、その根源である魂は一つ。その魂に接触することができれば精神たちの所在も自ずと判明すると思ったのでしょうけど・・・』
・・・いや、そんなこと俺は考えもしなかったんだけど? 魂に接触って何? 7つの精神に魂が一つ? そもそも精神だの魂だのの違いが判らないんだが?
うーむ・・・この声の言葉から察するに、ここは彼女たちの魂の中だってことなのか? 個別の精神の中ではなく大元の魂の中・・・だから、敵対しているはずの四人が一緒にこの場にいるわけか。
ということは【天醒:魂の回廊】というのは相手の魂に接触できるスキルってことなのか。・・・ホントかよ、おい。
となると、この声は彼女たちの魂の声ってことになるのか。
『でも、無駄よ。多少なりとも貴方に心を開いている四人とは違い、心を閉ざしている三人の精神に今の貴方では接触することはできないわ』
心を閉ざしている精神には接触できない? ますます訳が分かんなくなってきた・・・精神は魂でつながってるけど、心が閉ざされていると接触できない・・・いや、この場合は俺の事を拒んでいるから俺の前に姿を現さないってことか?
魂と精神と心の問題か・・・人間って複雑なんだな。誰かえらい哲学者を紹介してください。
『・・・っていうか、さ』
・・・ん? なんか魂の声がかなりいら立ってきている気がするが・・・
『人の魂の中にズカズカ入ってこないでよ!!』
ヒューーーーー・・・ズガンッ!!
「んがっ!?」
・・・何故・・・ここでタライが・・・
どこからか落ちて来た巨大タライの直撃を頭部に受けた俺は・・・思わず椅子から転げ落ちていた。
それはつまり・・・
「なぜにーーーーー!?」
前回と同様、俺は暗黒の空間の底へと落下していった。
===ログイン===>【アークガルド】クランホーム
「あうちっ!?」
そして再び、クランホーム自室のベッドに落下する俺。
「戻って来た・・・いや、追い出されたのか?」
追い出すにしてももっとマシな追い出し方は無かったのだろうか? なんでタライなんだよ。
一応、頭がまだヒリヒリしているから、夢ではなかったんだろうが・・・うーん、察するに俺が残り三人を探すって決めたから、その願いに【固有能力:天醒者】に反応して【天醒:魂の回廊】が無意識に発動したって所か。
おそらく前回はアニスやアギラへの接触方法を考えていたから発動したんだな。
まあ、今回はあまり役に立たなかったみたいだが・・・いや、アギラの話が真実だったと確認できたという意味では役に立ったか。
いずれにせよ、残り三人を探すには別の方法を考えなきゃいけないようだが・・・まさか、【固有能力:天醒者】にこんな力まであったなんてな。
確かにアニスたちが俺の力を利用しようとしているのもわかる気がする。今回はスカだったが、使い方によっては確かに残り三人を見つけ出すことも可能・・・な気がする。俺自身、この力の事はよくわかっていないからあくまで気がするだけなのだが。
しかし・・・今更ながら【固有能力:天醒者】って何なんだ?
今までは【固有能力】の比較対象が無かったから何とも言えなかったが、ウィキッドの【固有能力:模倣者】と比べると、随分異質な気がする。
ウィキッドが使っていた【模倣者】の力は、文字通りにコピーに関する力だった。
では【天醒者】は?
俺が知る限りだと、アニスの封印を解除する【天醒:浄化】、隠れている奴を見つける【天醒:隠匿突破】、遠く離れた景色を見る【天醒:天理分裂】、思考をクリアにする【天醒:明鏡止水】、感情をコントロールする【天醒:制情回避】があった。
後はゼルクの体を生みだした【天醒:錬体新生】、そのゼルクが体を機械やモンスター、精霊に作り替えるのに使用していた【天醒:機甲体化】【天醒:幻獣体化】【天醒:精霊体化】。体を再生させる【天醒:高速再生】なんてのもあったな。
そして今回は魂に接触できる【天醒:魂の回廊】。
随分、節操がないというか・・・統一感の無い力だな。バラエティが豊富なのは良い事なのかもしれないが・・・共通するのはスキルの名前の最初に【天醒】と付くことくらいで効果自体はバラバラだ。
正直、次にいつ、どんな力が発動するのか予想もできない。
ある程度の力の方向性なんかがわかればゼルクへの対抗策にもなると思うんだがなぁ。
キーワードは【天醒】って言葉だな。
この言葉がどんな意味を持っているのか・・・それを知る必要がある。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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