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影の二人

「それで、アルク(かれ)はどうでしたの?」


解散後、アギラとアニスは同じ廊下を歩いていた。その道中でアニスは気になっていた事をアギラに質問する。


「そうですね。総評としては・・・訳の分からない男、ですかね」


その質問に対し、アギラは()()()()()答えた。


他人と会話する事を嫌うアギラは相手によっては話し方を変えている。


まったく興味の無い相手には一言も喋らない。どうしても会話が必要になったら吹き出しを使う。多少の配慮が必要な相手には声に出すがぶっきらぼうな話し方になる。そして信頼している相手に対しては声を出し、かつ丁寧な口調になる。


では顔文字やふざけた口調の時はどうなのかというと・・・それはアギラ自身にもよく分かっていなかったりする。


「・・・まあ、その意見には同意しますわ」


アギラよりも一足早くアルクと接触していたアニスがそんなことをつぶやいていた。


「ただ思ったより頭の回る男でしたね。私の話を頭から疑わず、かといって全てを信じるでもなく、冷静に私を観察して真実を見つけようとしているようでした」


「それも同意ですわね。彼は腕っぷしもそうですが、頭の方も相当切れる・・・というより場慣れしている感じがしましたわ。敵対するのは御免こうむりたい類の人間ですわね」


アギラがそうであるようにアニスもまた、アルクに一定以上の評価を行っているようだ。だからこそ、彼女たちは力尽くでアルクを従わせることはしないのだろう。


そして、だからこそ・・・


「・・・それで()()()()()()()()()()()()()()()?」


・・・アルクの力を見極めようとしているのだ。


ウィキッドがアルクの力をコピーしようとしていたように、アギラもまた、その身に宿る機械の力でアルクの力を解析しようとしていた。


それも()()()()()()()()()


アギラが()()()()()()()()()()()()音信不通になっていたのもこのためだった。


「・・・駄目でした。どれだけ探っても・・・彼の力の本質を見極めることはできませんでした」


アギラはアルクと行動を共にしながら、その力の解析を行っていた。アルクに力を貸したのはそういう理由も含めてのことだった。


「・・・そうですか。確かウィキッドの【模倣者】の力は解析はできたのですわよね? しかしアルクの【天醒者】の力は解析できなかったとなると・・・やはり、彼の【固有(オリジナル)能力(アビリティ)】は()()()()()()とは異なる特別な力ということになるのでしょうかね?」


アニスは不思議に思っていたのだ。自身の封印の力が破られたことを。アルクの実力は確かなものだとはいえ、単純な強さで言えば自身の方が上のはず。にもかかわらず、力劣るものに負けたとなれば・・・相手の方に何らかの特別な力があったのだと考えるのも不思議ではないだろう。


それに関してはアギラも同感だった。対神々用の機能を持つ【ラグナマキナ】。その力を使ったステルス機能をアルクは見破ったのだ。【固有(オリジナル)能力(アビリティ)】といえど神の力を打ち破るのは容易ではない。それをアルクは自然と・・・無意識のうちにこなしてしまったのだ。


二人が警戒するとともに・・・()()してしまうのも無理からぬ話だった。


「残り3人の事は話したのですわよね?」


「ええ、しかし名前や特徴までは伝えていません。本来であれば我々より先に見つけるのは不可能でしょうが・・・」


「・・・それでも普通に見つけてしまいそうですわね。むしろ相手の方が彼に興味を持つかも」


主人公体質とでもいうべきか・・・自ら動かずとも相手の方から・・・運命の方からすり寄って来る。


何故か二人はそう思ってしまうのだ。


そこでアギラは、はたと気づいたように【メニュー】を開いた。


「そういえばアルクからメッセージが来ていました」


それを聞いてアニスは若干にがい顔をした。どうやら彼女は前回アルクから送られて来たふざけたメッセージを思い出したようだ。


それともう一つ、アニスには気になることがあった。


「・・・人間嫌いの貴方が彼とフレンドコードを交換したのですか?」


アニスが知っているアギラはそういう馴れ合いはしないと思っていた。相手が人間であればなおさらに。


「いえ、【ハッキング】で彼に送り付けておきました」


「・・・」


それはどういう感情なのか? とか、普通に交換するのでは駄目だったのか? と問いただしたくなったアニスだったが、アギラには何を言っても無駄だと思い、黙っておくことにした。


「・・・それで、なんと来てましたの?」


アニスの問いに対し、アギラは開いた【メニュー】をアニスに見せるように広げてメッセージを表示した。


『いつの間にか、俺の所にアギラのフレンドコードが来ていたのでメッセージを送る。・・・というか、フレコの交換ぐらい普通にできんのか?(;・∀・)』


・・・全く同意、と思ったアニスだった。


『まあ、それは置いておいて・・・お前たちの事情はだいたい分かった。お前らのとこのボスが何考えているのかは知らないが・・・残り3人の人格は俺が見つけ出す。ついでに俺の仲間に引き入れるつもりだ』


二人が予想していたように、アルクもまた残り3人を探すことにしたようだ。そう仕向けるために話したのはアギラであり、彼女の思惑通りに事が進んでいる・・・ように思えるが、やはりアルクは一筋縄ではいかないことを、この短い文面からでも理解できた。


アルクが3人を仲間に引き入れるということは、アテナやアルマ側の陣営に3人を引き込むということだ。それはつまり、アニスとアギラ側の陣営が数で負けることを意味している。


ある意味で二人が恐れる事態であり、そうならないために3人を先に見つけようとしていたのだが・・・アルクはその二人の懸念を正確に突いてきた。


当然、二人はそのリスクも承知で中途半端にしかアルクに情報を渡していないのだが・・・先述の通り、アルクならやり遂げてしまいそうで、少しばかり戦々恐々としていた。


そんな二人だが、次のメッセージでさらに驚くことになる。


『その上で提案がある。アニスにも提案していたが・・・もし俺が3人を引き入れることに成功したら、君とアニス、2人で君ん所のボスを裏切って俺の所に来い』


「!?」


アギラが驚いた様子でアニスを見る。そしてアニスは・・・


「・・・本気で(わたくし)たちまで引き入れるつもりなのですか」


前回のメッセージは冗談だと思っていたアニスだが、ここに来て具体案まで出した上での提案となると、どうやらアルクが本気であると理解したようだ。


『正直、君やアニス、そして残りの3人が何を考えているのかはわからんが・・・少なくとも()()()()()()でいがみ合う必要は無いはずだ。他人のためじゃなく()()()()()()()協力できることを願う』


という言葉でアルクのメッセージは締めくくられていた。


「・・・」


「・・・」


思わず無言になる二人だったが・・・一言。


「・・・他人である(わたくし)たちの為に奔走している人が言っても説得力が無いですわね」


「・・・同意」


思わず笑いがこみあげてくる二人。


そこでアギラが気づいた。メッセージにまだ続きがあることを。


『P.S. ・・・アギラの体ってアンドロイドだよな? つまり、その胸って造りも』


そこまで読んでメッセージを閉じるアギラ。


「何故、彼は最後までシリアスで通せないのでしょうか」


隣でアニスもあきれていた。


「・・・次に会った時は【反物質砲】をお見舞いしてやりましょう」


・・・アルクが二人を仲間として引き入れる日は来るのだろうか。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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