戦い終えて
すぐに視界が戻ると、そこは既に宇宙空間ではなく地上のドーム3の近くだった。地上に残っていたアーニャやアスターたちの姿が見える。
アークカイザーに乗っている俺たちの周囲にはヴァラットたちや、戦艦に乗っていたはずのアヴァンたち、【宇宙要塞ヴィヴェルグ】に残っていたはずのアテナたちの姿もある。
そして当然ながら・・・アギラが乗ったルインヴォイドの姿が無い。
してやられたな・・・無駄だとは思うが一応、ラングに連絡を取る。
『やあ、クエストは無事クリアできたみたいだけど・・・そのことじゃないみたいだね』
さすがラング。話が早くて助かる。
俺は急いでルインヴォイド、およびアテナやアルマと同じ顔の女性プレイヤーが居ないか、確認してもらうよう頼んだ。ルインヴォイドもアテナたちもバトルトーナメントで話題になっていたから大抵のプレイヤーが知っているはずだ。目撃証言くらいあるかもと思ったのだが・・・
『・・・駄目だね。ドーム1、ドーム2にいるメンバーにも捜索してもらったけど、該当する人物はいないみたい』
・・・やはり、【強制転移】のどさくさに紛れて逃げたか。アギラには透明化する機能もあるみたいだし、追跡は不可能だ。
俺は観念してアークカイザーから降りた。いざという時は戦闘も覚悟していたが、戦闘の間もなく逃げられるとはな・・・完全にアギラの方が一枚上手だったみたいだ。アニスもそうだったが、アギラもまた一筋縄ではいかない相手らしい。
アーテルやアウルと共に地上に降り、カイザーもまた【ヒューマロイド】形態へと戻ると、【アークガルド】のメンバーは駆け寄ってきた・・・が、皆と話をする前にもう一つやることがある。
「ボレアス」
「・・・」
同じく【強制転移】されてきたであろうボレアス。彼もまた近くにいたので・・・とは言っても足早に去ろうとしていたのだが、それを留めるように話かける。
「ジェスター・・・いや、ウィキッドは?」
「・・・」
しかし、ボレアスは足を止めることは無く、ただ首を横に振って去っていった。どうやら共闘したからと言って馴れ合うつもりは無いらしい。
そしてウィキッドの方にも逃げられたようだ。ただ、ボレアスには悪いがこちらの方はある程度予測はしていた。ウィキッドはあの場から闇雲に逃げ出したわけではなく、逃走先に何らかの手段を用意していたんだろう。
今回に限ったことではないが・・・どうも連中に好き勝手されて、そのまま逃げられてるんだよなぁ。何とかしたいとは思うが・・・連中の実力は本物だ。ウィキッドと戦った時だってボレアスに助けられたわけだし・・・俺一人でどうにかするのは厳しいか。
うんうん唸っていると・・・
「アルクさん!!」
今度こそ、【アークガルド】のメンバーに話しかけられた。いかんいかん、リーダーたる俺がいつまでもウジウジ悩んでいるわけにはいかん。頑張ってくれた皆をねぎらわないとな。
「アーニャ、アスター。地上戦、ご苦労だったな」
まずは地上に残ってドームを守ってくれた二人をねぎらう。二人がドームを守ってくれなかったら、俺たちがいくら宇宙で敵を倒してもクエスト失敗になっていたはずだからな。最前線に立っていたわけではないから目立った功績ではないのかもしれないが、クエストクリアの立役者であることは間違いない。
「本当なのです! 大変だったのです!!」
「ええ・・・ミコトたちが間に合って良かったです」
「キュイー!」「キュア!」「キュウ!」「キュン!」
「あいー!」「ふぁう!」
二人の【眷属】であるテールやラメール、カリンだけではなく、神々の試練で留守にしていたブラン、ノワール、ミコトもそこにいた。どうやらアーテルたちとほぼ同じタイミングで試練が終わったので、急いて【召喚】し、加勢してくれたらしい。
改めて【眷属】たちのありがたみというのを実感してしまうな。そういう意味では今回のクエストも良い教訓になったのかもしれない。・・・それでアギラに感謝するかどうかはまた別問題だが。
「アニキもお疲れ様っす!」
「うむ。シークレットフェーズに突入した時はどうしたものかと焦ったのだ」
「まうー!」
「マッタクデス」
一方で俺と一緒に宇宙に上がったアシュラとアヴァン。【眷属】のルドラとラグマリアも一緒だ。
アヴァンたちは【宇宙要塞ヴィヴェルグ】の司令官を倒したまさに功労者だ。最後に【ガティアス】がしゃしゃり出てきてシークレットフェーズに突入してしまったが、実際にクエストをクリアしたのは彼らのおかげだろう。
・・・そう考えると俺ってあんまり活躍してないよな。最後にシークレットフェーズに突入した時点でたまたま動力部の近くにいたから急行しただけで・・・結果的には助かったが、逆にシークレットフェーズに突入しなかったら、俺何しに来たの? 状態になっていたところだ。
・・・まあ、悪いのは俺にちょっかいかけて来たウィキッドとアギラってことで一つよろしく。
「・・で、なんであいつらは俺の事睨んでるの?」
「・・・」
「・・・」
「がおー・・・」
「ぴゅいー・・・」
何故かアテナとアルマが俺を睨んできていた。二人の【眷属】であるレオーネとフィオレがどうすれば良いの? って感じでオロオロしている。
・・・おかしいな? 悪いのはウィキッドとアギラだって結論が出たのにな。
なーんでだろー、ぼくわかんなーい(棒読み)
「マスターアルクガ見知ラヌ女性ト密会シテイタカラデスネ」
・・・ラグマリアがあっさりざっくりばっさりどっさりと理由を告げた。
密会て・・・なんでわざわざ不穏な言い方するかなぁ・・・確かアヴァンたちは要塞の監視カメラで映像越しに見てたんだっけか?
確かに俺一人だけ別行動を取ってアギラに出くわしたのは本当だが・・・別にやましいことがあったわけじゃないんだが。
「・・・やましい事がなかったのなら、私たちに連絡くらいあっても良かったんじゃない?」
・・・う。
「・・・結果的にそうなったのだとしてもアルクさん一人で危険な橋を渡る必要はなかったのではないでしょうか?」
・・・む。
そう言われると・・・ぐぅの音も出ないな。
あえて言うのなら俺としてもアギラから情報を聞き出す絶好のチャンスだと思っていたし、アテナやアルマに連絡すると、アギラは一目散に逃げ出すだろうと思ったから連絡しなかっただけだ。現にアギラは二人に顔を見せる前にどっか行っちゃったし。
しかし、だ。それでも俺の行動は正しかったと信じる!
なぜなら!!
「すまん。俺はどうしても確かめたかったんだ・・・アギラのスリーサイズがアテナやアルマと一緒なのかをグッフォア!?」
み・・・みぞおちにダブルパンチはきつい・・・ガク。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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