エナジーエピローグ

『参加者全員に500万Gを贈呈します。

初回クリア対象者にSP20を贈呈します。

初回クリア対象者に称号【火星の守護者】を贈呈します。

クリア報酬を【収納箱アイテムボックス】に転送しました』

苦労しただけあって報酬も中々良さそうだ。緊急クエストは突然起こる分、報酬が割高だから美味しいクエストなんだよな。

しかし、アナウンスはこれだけにとどまらなかった。

『火星を覆う【プラネットジェイルバリア】が消失しました』

ふむ、【宇宙要塞ヴィヴェルグ】を攻略したことで火星を覆う牢獄も消えたか。となると今後は自由に宇宙に出られるようになるってことかな？ ・・・そういえば俺たちが奪取した戦艦ってどうなるんだろう？

『Lv.75のボスキャラの初撃破に成功しました。プレイヤー、および【眷属】のレベルキャップがLv.70からLv.75に引き上げられます』

おお！ 報酬だけじゃなくレベルキャップの解放まで・・・プレイヤーたちから歓喜の声が通信越しから聞こえてくるな。

トーナメントの時点でLv.70まで至っているプレイヤーたちが結構いたからな。【転生】するという手段もあるが、一から鍛えなおしになるから躊躇するプレイヤーもいる。そういう人たちにもレベルキャップ解放はありがたいことなのだろう。

俺にとっても【眷属】のレベルキャップが解放されたのがありがたいな。アーテルたちはすでにLv.70になっていて進化する以外に強くなる方法がなかったからな。まあ、神々の試練を受ければ新しい力を使えるようにはなるみたいだが・・・ステータスは変わっていなかったからな。強くなる方法が増えるのは良いことだ。

俺の所にはさらなるメッセージが。

『シークレットフェーズ攻略のＭＶＰに選ばれました。称号【天壌無窮】を取得しました』

さらに天の称号シリーズまで・・・MVPって俺で良いのか？ どちらかというとアギラの方が活躍していたと思うが・・・【エナジーハザード】戦が効いたのだろうか。

思わぬ報酬も手に入れて、ようやくクエストもクリアできたわけだ。この喜びを皆とわかり合いたい所なのだが・・・俺にはまだ問題が残っている。

『・w・)ノ～』

「おい、どこ行く気だアギラ」

ルインヴォイドに乗ったままどさくさに紛れてどこかへ行こうとしているアギラ。そんな顔文字出して逃げられると思ってんのか。

『まだ何か？ 協力は十分にしたと思いますが』

「協力は感謝するし、ありがたいとは思ってるが、問題はそこじゃないだろ」

そもそも俺たちを緊急クエストに巻き込んだのがアギラだと思うが、それは良い。俺たちにも多大なメリットがあったわけだしな。

そのどさくさに紛れてアギラが【禁断の(フォビドゥン・)箱(ボックス)】を手に入れていたことも・・・百歩譲って水に流すとしても、だ。

アギラ達の現実事情を見逃すわけにはいかない。

アテナ、アルマ、アニス、アギラ・・・そして残りの３人。

７人全員が揃わないと現実でアテナたちが目覚めることが無いということは、７人全員が協力する必要があるということだ、

どうもアニスとアギラはアテナとアルマに対して敵意を持っているらしいが・・・正直、アテナとアルマが人間肯定派だとか、アニスとアギラが人間否定派だとかいうのは良く分からない。何か理由はあるとは思うが・・・このまま仲たがいしたままでは何も解決しないはずだ。

せめてこのままアギラを連れ帰ってアテナやアルマと話し合いをさせるべきだろう。アテナとアルマは何も知らない様子だったし、きっかけさえあれば・・・

それにアギラにはまだ話していないことがあるはずだ。

それを聞き出すまではアギラを逃がすわけにはいかない。たとえ力ずくになろうと引き留めないとな。

『・・・何を考えているのかは見当が付きますが、無駄ですよ。少なくとも今はアテナやアルマには話すことはありません。・・・それに、まだ終わってないようですよ？』

「なに？」

そこで、俺たちの会話に割り込むように通信が入った。

「皆さん、お疲れさまでした。私たちが暮らしている星を守ってくれたこと、大変感謝しています」

・・・この声、ドーム３の冒険者ギルドのギルドマスターか？

「アルク、あれを見るのだ」

アヴァンからの通信を聞いて火星の方をみると新たな戦艦がやって来ていた。どうやら、ギルドマスターも宇宙までやってきたようだ。

・・・正直、存在自体すっかり忘れていたが、そういえば俺たちにクエスト攻略の指針を教えてくれたのはこの人だったな。

エピローグ会話的なものが始まるのだろうか？ 正直、こっちはそれどころじゃないんだが・・・残念ながらゲームNPCはこっちの事情お構いなしに話を進め始めた。

「つきましては・・・この【宇宙要塞ヴィヴェルグ】の処遇は私たちに任せてもらえないでしょうか？ 我が冒険者ギルドを始め、各ギルドが総出で皆さんが利用できる拠点へと生まれ変わらせて見せます」

・・・ああ、【宇宙要塞ヴィヴェルグ】がこの後どうなるのかと思ったが・・・なるほどな。冒険者ギルドが要塞を使えるよう改修してくれるってことか。どうやら今後、この要塞はプレイヤーの宇宙拠点になるみたいだ。

と、ここでさらなるアナウンスが。

『これより【機甲界】のアップデートが行われます。現在より明日の１２：００まで【機甲界】の宇宙空間への進行が禁止されます。また、【宇宙要塞ヴィヴェルグ】は【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】へと改修されます。【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】へはアップデート後に立ち入ることができるようになります』

【火星衛星拠点ヴィヴェルグ】ね。さすがに今すぐとまでは行かないみたいだが、明日の１２：００ってことは俺が明日ログインする頃には普通に立ち寄ることができそうだな。

ただ、ここからが問題だった。

『アップデートに際し、【機甲界】の宇宙空間にいる全てのプレイヤーはクエスト開始時のドームに【強制転移】されます。転移まであと１０秒・・・』

なにぃ！？ 【強制転移】だと！？

9秒・・・

「アギラ！ お前こうなることを知っていたのか！？」

8秒・・・

『さあ、何のことでしょう？ (・з・)～♪』

7秒・・・

うわっ、わざとらしい顔文字出してきやがって！

6秒・・・

アギラの奴、【強制転移】のどさくさに紛れて逃げるつもりか！？

5秒・・・

「カイザー！」

4秒・・・

「了解デス」

3秒・・・

慌ててアークカイザーをルインヴォイドに向かわせる。

2秒・・・

物理的に掴んでいれば転移先も同じになるかもしれないと思ったが・・・駄目だ、間に合わない。

1秒・・・

「また会いましょう」

0。

最後にアギラの声(・)が聞こえた瞬間、俺の視界は暗転していた。