エナジーエンド
とうとう【エナジーハザード】の【ガティアスコア】に攻撃を加えることに成功した俺たち。
それはつまり、【エナジーハザード】を倒すあと一歩まで追い詰めたことを意味している。
奴にはもうエナジーを補給する術は無い。正確に言えば【宇宙要塞ヴィヴェルグ】内部に戻ればあるのだろうが、むざむざそんなことをさせる俺たちではない。
そして、エナジーを補給できない以上、奴は失った体を取り戻すことができず、【ガティアスコア】を守るだけの力を発揮することもできない。
はっきり言って、【エナジーハザード】は詰んでいる。
・・・と、奴自身も思ったのか、なんと【エナジーハザード】は・・・逃亡した。
「おいおい! ここまで来て逃げるのかよ!?」
突如として敵である俺たちに背を向け、飛び去ろうとする【エナジーハザード】。
確かに戦略的には逃げるのも間違っていないのかもしれないが・・・奴は【宇宙要塞ヴィヴェルグ】とは全く逆方向に飛び去っている。
隠れる場所も無いのにどこに逃げる気だ?
『いいえ、違います! 奴の目的は【プラネットバスターキャノン】です!!』
突如として巨大な吹き出しを出してくるルインヴォイド・・・もといアギラ。でかい吹き出しを出したのは俺以外にも事の重大さを知らせるためか・・・ってなんだと!?
確かに、【エナジーハザード】が逃げた先には・・・先ほど俺たちが出て来た【プラネットバスターキャノン】の砲身があった。
だが、今更あんな鉄塊状態の砲身に逃げてどうするつもりだ? まさか、まだあそこにエナジーを隠し持っているとでも言うのか?
『奴はエナジーの体を捨て、砲身に取り憑くつもりです!!』
「「「!?」」」
そこでアギラは簡潔にわかりやすく、そして深刻にして重大な情報を俺たちにもたらした。
なるほど・・・使えなくなった体を脱ぎ捨てるつもりか。さらに【プラネットバスターキャノン】の巨大な砲身に取り憑けば、巨大だった【エナジーハザード】と同等以上の力を持つ可能性もある。
つまり、【エナジーハザード】もまだ諦めていないのだ。
「往生際が悪いな・・・やるぞ、カイザー!!」
「了解デス!」
今こそ、アークカイザーが得た新たな力を使う時だ!
「【オーバーリミット・アドバンス】!!」
「了解! エネルギー上昇・・・アドバンスドコントロール! リミットオーバー!!」
スキルの使用と同時にアークカイザーが青く発光し始める。
アークカイザーには元々、【オーバーリミット】というスキルがあった。このスキルは【クランメカロイド】の残り稼働時間を一気に消費して機体性能を大幅にアップさせる事ができる、いわば限界突破スキルだ。
対して【オーバーリミット・アドバンス】というのはコントロールされた限界突破スキル。指定した時間内で全ての力を一気に解放することで機体性能をアップさせる事ができる。
【オーバーリミット】は残り稼働時間を一気に消費してしまうため、残り稼働時間が少なければすぐにガス欠となってしまうが、【オーバーリミット・アドバンス】は時間調整しながらの限界突破のため、思わずガス欠になるデメリットが無い。
まあ、残り時間が短すぎたりすると【オーバーリミット・アドバンス】でアップする性能が低くなったり、あるいは発動事態しない場合もあるみたいだが・・・アークカイザーの力を極力残しておいてよかった。
「残り時間は3分! フルパワーで行くぞ!」
「了解デス!!」
クエストの残り時間もあと3分。そこに合わせて、この3分間でアークカイザーの全ての力を使い切る!
「【韋駄天の俊走】!!」
さっき【魔天の叡智】を使用してから、【魔法】を使用していないため、ある程度はMPが自動回復しているが・・・全快には程遠い。
が、今はその残り少ないMPを消費して加速する! 目的は【エナジーハザード】・・・ではなく【プラネットバスターキャノン】の砲身!
一瞬にして【エナジーハザード】を追い抜き、砲身の前に立つアークカイザー。
同時に俺はアークカイザーの右手に意識を向けつつも・・・神に願った。
「【戦闘神スサノオの加護】よ! 星を砕く【兵器】を消し去れ!!」
【戦闘神スサノオの加護】が乗ったアークカイザーの右手で【プラネットバスターキャノン】の砲身を殴る。
それ自体はろくに力も乗っていないただのパンチだ。
しかし、【戦闘神スサノオの加護】は触れた物を破壊する効果がある。いかに星をも破壊する巨大【兵器】だろうと・・・神の力の前には・・・ただ消え去るのみ。
結果、【プラネットバスターキャノン】の砲身は音もなく・・・そして跡形もなく消滅した。
【エナジーハザード】は・・・まあ、表情が無いから断言はできないが、絶句しているようだ。
まあ、【エナジーハザード】も、最も近くにあり、そして俺たちに対抗しうる依り代を選んだつもりだったんだろうが・・・まさか取り憑くよりも先に消されるとは思わなかったのだろう。
しかし、いくら驚いたからと言って足を止めたのはまずかったな。
「「ミサイル全弾発射!!!」」
素早く追いついてきた【ゲイルシュヴァイツァー】2機が大量のミサイルを【エナジーハザード】に放つ。
対する【エナジーハザード】は、最後のあがきなのか、残ったエナジー全てを【ガティアスコア】の周囲に収束させ、球形のエナジーの塊となった。
そこに容赦なくミサイルが直撃する。
ミサイルによる爆発は・・・コアにまでは届いていないようだが、残り少ないエナジーがどんどん減っていくのが見てわかる。
さらに、アギラが乗るルインヴォイドが・・・
「右手から【ラグナヒートフィスト】、左手から【ラグナフリーズフィスト】、さらに脚部から【ラグナボルトアクセラレータ】・・・熱冷電融合!」
右手が赤く、左手が青く、さらに脚部が黄色に輝きだし、
「【ラグナバニッシュメントトルネード】!!」
その輝きが一つとなって回転しながら【エナジーハザード】へと突撃していく。
その一撃は【エナジーハザード】に残っていたエナジーを消し飛ばし、【ガティアスコア】に直撃。さらにコアを押し出しながら・・・こちらに向かってきた。
「・・・俺にトドメを刺せってのか、アギラ。【月光神ツクヨミの加護】よ! 気力の回復を!!」
俺はというと最後の一撃を放つために再度、【神の加護】を使ってBPを回復する。
そして、ルインヴォイドによって運ばれてくる【ガティアスコア】に向けて、【王剣アウルディオン】を・・・
「【勇天の一撃】!!!」
最強の一撃と共に振り下ろす!!
ピシッ!! ピシピシピシッ!!!
俺とアギラ、アークカイザーとルインヴォイドの攻撃に挟まれる形となった【ガティアスコア】は鈍い音を上げ、ヒビが入り、やがて・・・
ガキィィィィンッ!!!!!
・・・粉々に砕け散った。
と、同時にアナウンスが走る。
『シークレットフェーズ:宇宙要塞ヴィヴェルグ動力部に取り憑いた【ガティアス】を倒せ!!をクリアしました』
『全フェーズの終了を確認。緊急クエスト【アースヴェルト帝国の大侵攻】を完全クリアしました』
『『『『『うぉおおおおおお!!!』』』』』
通信越しから聞こえてくるプレイヤーたちの雄たけびが、宇宙の闇へと木霊した。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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