エナジーラッシュ
ヴァラットの【ゲイルシュヴァイツァー】だけではなかった。
その後方・・・より正確には【宇宙要塞ヴィヴェルグ】から次々と戦艦が発進し、こちらに向かってきていた。
本来であれば敵要塞から出て来た敵艦なわけで警戒するのが当然なわけだが・・・その戦艦たちは俺たちではなく【エナジーハザード】に向かってミサイルやら機関銃やらをぶっ放していた。
俺たちに攻撃してくる様子が無い以上、敵ではないようだ。
「戦艦に乗ってるのはプレイヤーたちなのか。しかし、何故・・・」
『正体不明の人物からメッセージが送られて来たのだ』
通信越しに話しかけてくる【ヴァールハイト】を着込んだヴァラット。・・・あのパワードスーツといい、【ゲイルシュヴァイツァー】といい、普通に宇宙空間でも活動できるんだな。
「メッセージ?」
『そうだ。このクエストのラスボスを要塞の外に放り出すからプレイヤーは全員、戦艦に乗って攻撃するように、とな』
・・・内容から考えるにアギラの仕業か。【ハッキング】を使ってプレイヤー全員に情報を発信していたようだ。
時間的に考えて他のプレイヤーたちは間に合わないと思っていたが、それはあくまで要塞内部にあふれかえっている【機械兵】や【機獣兵】が邪魔をしてくるからだ。要塞の外に出れば邪魔者たちを相手することなく、【エナジーハザード】の元へ直行できるというわけだな。
アギラの奴・・・ここまで計算して、この作戦に乗っかったのか。
『まあ、話は後にして先にアイツを倒すぞ。・・・興味深い敵だな。エナジーを吸収してしまう敵か』
【エナジーハザード】に興味深々な様子のヴァラット。どうやら事前に【エナジーハザード】についての情報も受け取っていたようだ。だから、他の戦艦たちもエナジーによる攻撃をせずに物理攻撃ばかりを仕掛けているのか。
いちいち全員に説明しなくても済むのは正直助かるが・・・なんというか、アギラの手の平で動かされているような気がしないでもない。別に俺にとって悪いことがあるわけではないんだが、な。
今はなによりも【エナジーハザード】の撃破が優先か。
【ゲイルシュヴァイツァー】を操作して【エナジーハザード】の元へ突っ込むヴァラット。同時に【ゲイルシュヴァイツァー】の全身各部から大量のミサイルを発射、【エナジーハザード】を攻撃していく。
わかっていたが、【クランメカロイド】でもない自作の【ゲイルシュヴァイツァー】でここまでの攻撃ができるとはヴァラットたちの・・・否、クラン【ヴァーミリオン】の情熱と技術力には感服してしまうな。
『報酬、報酬、報酬、報酬、報酬!!』
・・・なんか、【ゲイルシュヴァイツァー】の色違いがもう一機、【エナジーハザード】に向かって突撃して行ったんですけど?
通信から聞こえてくる女性の声から察するに・・・副リーダーのシェリルか。ってか【ゲイルシュヴァイツァー】ってもう一機あったんだな。・・・全身、まっピンクなのはどうかと思うが。あと報酬目当てなのはわかったが、報酬報酬連呼しないでほしい。
『ぼーっとしていないで攻撃を続けるのだ、アルク』
「む?」
再び見知った声・・・見ると、一隻の戦艦がこちらに近づいてきていた。
「アヴァンか」
『うむ。未使用の戦艦を探すのに手間取って少々、出遅れてしまったのだ』
俺たちが乗って来た戦艦はウィキッドに破壊されてしまったからな。そこに関しては完全に俺のせいなので、俺に文句を言う資格は無い。
「みんな無事なのか?」
『無論なのだ・・・とはいえ、この戦艦に乗っているのは我とラグマリアだけなのだ。他の連中は要塞内に残っているのだ』
なに? つまりアテナたちはまだ要塞に残ってるってことなのか・・・だが、何故?
『要塞内の【機械兵】が戦艦を使って追撃してくる可能性をつぶすために、アテナたちが残って追手の迎撃に回ってくれているのだ』
・・・ああ、なるほど。下手したら【エナジーハザード】との挟み撃ちになるから、それを阻止するためにあえて要塞に残っているのか。こっちはこっちで良く戦況を把握して行動していたようだ。
『・・・ちなみにアテナとアルマから伝言なのだ。・・・あの女の事はあとできっちり説明して貰う・・・だそうなのだ』
「・・・」
勿論、そのつもりだったのだが・・・なんで彼氏の浮気相手を問い詰めるような言い方なのか? まるで俺が悪い事してたみたいじゃないか。
・・・うん、後の事は後で考えよう。今は【エナジーハザード】を倒すのが最優先だ。
「ごちゃごちゃ話をしている時間はねぇ! 残り時間は約10分! ひたすら攻撃だ!!」
『まあ、そうなのだが・・・我はしかと伝言を伝えたのだ。あとは知らないのだ。ラグマリア!!』
『了解。発進シマス』
・・・なんか、アヴァンに見捨てられたような気がするがそれを気にしている余裕は無い。
アヴァンたちが乗った戦艦が【エナジーハザード】へと向かっていく。さらにその戦艦から、ラグマリアが飛び出してきて艦首に着地。【エナジーハザード】に対して砲撃を行うようだ。っていうか、ラグマリアも宇宙戦闘できたんだな。
他にも続々と戦艦たちが【エナジーハザード】に向かって砲撃を仕掛けていく。
思わぬ増援に、俺も出遅れまいと攻撃を仕掛ける。
「【魔天の叡智】・・・【インパルスショック】!!」
最大限にまで強化した衝撃の【魔法】を【エナジーハザード】に食らわせ、エナジーを四散させる。
【エナジーハザード】も負けじと、全身からエナジー弾だのレーザーだの撃ちまくって来る。
俺たちが乗るアークカイザーやヴァラットたちの【ゲイルシュヴァイツァー】は避けることができていたが・・・さすがに戦艦では無理だ。
なので戦艦のバリアを使って【エナジーハザード】の攻撃を防いでいたが・・・それも長くはもたないだろう。
増援は確かに喜ばしいが、さすがに宇宙空間で自由に動き回れるプレイヤーは少ないみたいだ。
【クランメカロイド】がもっとそろっていれば良かったんだが・・・思ったより所有するクランが少ないのか? もしくはラングたちのように地上に残っているのか。
【エナジーハザード】のエナジーは確かに四散させることができているのだが、俺たちの攻撃はまだ【ガティアスコア】には届かない。
・・・このペースで間に合うのか? という不安が頭をよぎったその時。
ドゴッ!!
【エナジーハザード】を巨大なハンマーで殴りつける一体の【クランメカロイド】の姿が。
その姿には見覚えがある。
「マスター! アレハ・・・」
「ああ」
あれは・・・カオスが使っていた【クランメカロイド】ルインヴォイドだ。
「カオス・・・なのか?」
俺はルインヴォイドに向かって話しかける。
当のルインヴォイドは巨大なハンマー・・・【ウィンゼルヴハンマー】を担ぐと、無言のままに・・・
『私です(☆ゝω・)b』
という巨大な吹き出しを出してきた。
お前かよ!?
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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