エナジードラゴン
「クルァアアアアアアア!!!」
【魔龍】と化したアーテルが雄たけびを上げながら【エナジーハザード】へと向かっていく。
【エナジーハザード】とアーテルでは圧倒的なサイズの差があったのだが、【エナジーハザード】は四散したエナジーを吸収途中で元のサイズよりも幾分か縮小しており、さらにアーテルはその身から吹き出した【魔龍】のオーラがどんどん膨れ上がり、巨大かつまがまがしいドラゴンの姿を形成している。
結果として両者はほぼ同サイズの・・・エナジーで構成された光の巨人と、黒きオーラで構成された巨龍と化していた。
その巨大な両者が・・・激しくぶつかり合う!
それは同時に膨大なエナジーと強大なオーラのぶつかり合いでもあった。
バチバチバチと火花を散らしながら巨大なエネルギーのぶつかり合いは・・・黒が光を押し始めた。
アーテル・・・そのまま【エナジーハザード】を砲身区画まで押し切るつもりなのか。
「クルァアアアアアアア!!!」
雄々しく雄たけびを上げる【魔龍】アーテル。
しかし、その雄たけびは以前までのような・・・憤怒と怨嗟が入り混じった恐ろしくも悲痛な叫び声ではなかった。
いつものアーテルの雄たけびが周囲を震わせ、アーテルの目はまっすぐに【エナジーハザード】の姿を見据えて離さなかった。
やはり、今のアーテルは【魔龍】の力をコントロールしているように見えるが・・・どういうことだ?
そもそも【魔龍覚醒】はHPが1割を切ると自動的に発動する暴走スキルだったはずだ。先ほどまでのアーテルはそこまでのダメージを負ってはいなかったし、何よりもアーテルは自分の意志であの状態を発動させているように思える。
俺の回復も終わったし、時間も惜しい。すぐにでもアーテルに加勢した方が良いんだろうが・・・今の不透明な状況のままでは手が出しにくいな。なによりも、自らなったとはいえあの状態のアーテルが本当に大丈夫なのか心配だ。
先にアーテルのステータスを確認しておこう。
【メニュー】を開いてアーテルの項目を確認すると・・・スキル欄に一つだけ、俺の知らないスキルが増えていた。
【魔龍解放】
自らの意志で【魔龍】の力を引き出し、制御することができる
ただし、一分間限定
覚醒ではなく解放・・・アーテルは今使っているのはこっちの方か。このスキルを使えばアーテルは正気を保ったまま【魔龍】の力を使うことができる、と。
これが神々との試練を乗り越えて得た力・・・って一分間限定!? おいおい短すぎるだろ!? さすがのアーテルでも無制限に【魔龍】の力を使えるわけじゃないってことか!?
まずい! アーテルが【魔龍解放】を使って既に20秒以上経過している・・・アウルやカイザーのスキルも確認したかったが、そんな時間もないようだ。
せっかくアーテルがあの忌み嫌っていた姿になってまで戦ってくれているんだ・・・【魔龍解放】が解ける前に俺たちも動かないと!
「カイザー! 今の内に【クランメカロイド】になれ!! アウル! アーテルの後押しするぞ!!」
「了解デス! 【メカロイド】化、開始!!」
「だっうーー!!」
カイザーが【メカロイド】化・・・つまり巨大化している間に俺とアウルで援護に入る。
アーテルは・・・少しずつではあるが【エナジーハザード】を砲身区画へと押して出している。どうやらエナジーが回復しきっていない【エナジーハザード】より【魔龍】となったアーテルの方がパワーは上のようだ。
しかし、いかにパワーが上でもこのペースでは間に合わない。先にアーテルの【魔龍覚醒】の方が解ける。
「【勇撃強化ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」
「だうー!!」
俺やアウルが援護しているが・・・正直、焼石に水だ。サイズとパワーが違い過ぎる。
【魔龍】アーテルと同等の力を発揮するには・・・アークカイザーの力が必要だ。時間的にはギリギリだが・・・力を合わせれば行けるか?
・・・待てよ? 力と言えば・・・【魔龍】と化したアーテルなら、例の必殺技が使えるはずだ。あれを使えば一気に【エナジーハザード】を押し込めるかも・・・いや、駄目だ。あれは今、この場では使えない。
あれを使った場合、この空間で大爆発が起きる。フレンドリーファイアは無効のため、俺やアウル、カイザーはダメージを受けることは無いのだが、周囲のオブジェクトは影響を受ける。
つまり、あれを使うと【ゼクシオンジェネレータ】も一緒に破壊してしまうリスクがあるわけだ。
そしてなによりも・・・この場には一時的に共闘しているだけでパーティを組んでいないアギラもいる。
彼女まで巻き込んでしまうからこそ、アーテルはあれを使うことができないんだ。
となると・・・このまま力押しするしかないのか。
「【ラグナエナジーフィールド】」
と、その時。
【ゼクシオンジェネレータ】を丸ごと覆う巨大なバリアが現れた。それを張ったのは当然・・・アギラだった。
『ここは任せて行ってください!!( *˙ω˙*)و 』
そして飛んでくる吹き出し・・・どうやらアギラもこちらの状況を理解していたようだ。アギラの力なら・・・アーテルの【魔龍】の力にも耐えられるだろう。
「アーテル!!」
「クルゥァアアアアアア!!!!!!!」
俺が叫ぶのと同時にアーテルは【魔龍】と化したその体を一瞬で収束させ・・・大爆発を引き起こした。
【魔龍】アーテルの必殺技・・・【黒魔の殺戮光】だ。
ドォオオオオオオオンッ!!!!!
黒き閃光が部屋全体を包み込み、その威力は【エナジーハザード】を砲身区画への扉の向こう側へと押し飛ばした。相変わらずすごい威力だ。
【ゼクシオンジェネレータ】は・・・無事のようだ。【黒魔の殺戮光】を防ぐとは・・・恐るべし、アギラのバリア。今の俺たちにはありがたいが。
「マスター!!」
そこで【クランメカロイド】となったアークカイザーから声がかかった。
アウルと共にアークカイザーに乗り込み、急いでアーテルの元へ。
「ク、クルー・・・」
爆発の中心地点にいたアーテルだが、その身から【魔龍】のオーラは消え去り、元の・・・【幼体】の姿へと戻っていた。さすがに力を使い果たしたらしい。
即座にコクピットへと回収。
「よく頑張ったな、アーテル」
「クルッ!!」
アーテルの頑張りを無駄にしないためにも・・・【エナジーハザード】を倒さないとな。
「あとは頼んだぞ、アギラ!」
俺はアークカイザーのコクピットからアギラに声をかける。
対してアギラは・・・
『(・ω・)b』
・・・特大の吹き出しで答えてきた。あの吹き出し、サイズまで変更可能なの?
と、とにかく今が勝機だ。
俺たちは【エナジーハザード】を追って砲身区画へと入っていった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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