ファクトリー
そこからのアギラの快進撃はすさまじかった。
「【ラグナエナジーボルト】」
今度は手の平から緑色の電撃を放ち、行く手を阻む【機械兵】や【機獣兵】たちを黒焦げにしていく。
・・・本当にまんま黒焦げだった。触ったらボロボロと崩れてしまうくらい・・・どんだけ強力な電撃を流したら奴らの装甲・・・つまり、金属がこんな風になるんだろうな。
まあ、そのおかげで俺たちの足が止まることは無かった。
ついでに俺の出番もまるで無かった。・・・なんかむなしい。
そんなわけで順調に倉庫区画を抜け、次にやってきたのは・・・また先ほどとはうって変わって多くの機械が忙しなく動いている場所だった。
ロボットや【機械兵】ではなく作業機械だ。
ロボットアームやベルトコンベア、金型、何かの数値が表示されているディスプレイなどなど・・・その光景はどう見ても・・・
「・・・工場か?」
ドロドロに溶けた金属を金型に流し込み、できた部品をロボットアームが組み立てていき、それをベルトコンベアで運んでいき、検査機のような機械の中に入れて何らかの数値をはじき出し、最終的にはコンテナに詰め込まれていく。
そんな工程を行っている機械群が、数十、数百と並んでいる。
どこからどう見ても巨大な工場といった様相だ。
『この要塞のメインファクトリーですね。ここで要塞内に必要な物はすべて・・・生活用品から【兵器】、そして【機械兵】や【機獣兵】までもここで生産されているようです』
要するに大量生産品を作るための工場か・・・それなら、これだけの規模があることも納得できるな。
そして何より、この場所で【機械兵】や【機獣兵】が作られているっていうのは・・・俺たちにとっても重要な情報じゃないか?
「なるほど・・・ここの施設って俺たちにも使えるのか? それとも今以上に敵が増えないよう今の内に破壊しておくべきか?」
例えばここで俺の命令を聞く【機械兵】を作れるとなったら、貴重な戦力を確保できることになる。特に今みたいな非常事態では有効なはずだ。
逆にそれができず、ただの敵量産工場でしか無いというのなら、今の内に破壊しておいた方がこちらの利になるはずだ。
しかし、アギラは俺の言葉に首を横に振った。
『まず前者ですが・・・現状では不可能です。この施設の操作系統が軍事施設ブロック側にあるので、この場から操作することはできません。それ以前に【ガティアス】の影響でそもそも正常に稼働していないようですが・・・』
・・・確かによく見たら、ロボットアームが明後日の方向に向いてたり、ベルトコンベアがとんでもなく早かったり遅かったり滅茶苦茶な動作してるな・・・あ、あの人型【機械兵】、手足が逆にくっついてる!
これじゃあ、まるで使い物にならないな。
『そして後者に関しても、ファクトリーが正常に稼働していない以上、敵戦力が補充されることはありません。わざわざこのファクトリーを破壊する必要は無いでしょう』
つまり放置でOK、と。まあ、見た感じ次々とわけのわからんガラクタが作られていて資源の無駄使いのような気もするが、俺たちの知ったことじゃないか。
というわけで暴れ狂っている作業機械たちを無視して、俺たちは先へ先へと進んでいく。
その間にも当然、敵が立ちふさがってくるわけだが・・・
「【ラグナエナジーブレード】」
・・・うん、アギラがあっという間に片づけてしまうんだよな。
今度は両手から【エナジーブレード】を出して、【機械兵】たちを細切れですよ。しかも俺が敵を察知して動き始めるよりも前に、アギラが攻撃し始めてしまうから、俺の出る幕がまるで無い。
普通なら楽できてラッキーなんて思うのかもしれないが・・・なんだろうな。こう・・・アギラの後ろをただ付いて行ってるだけの今の俺の状況を鑑みると、果たして俺、ここに居る意味ある? っていう謎の焦燥感に襲われるわけだ。
ぶっちゃけ、今の俺ってアギラに寄生しているプレイヤーになり果ててるよね?
『気にしないでください。適材適所というのは大事ですからね(☆ゝω・)b』
・・・言ってることは間違いじゃないんだが、なんか腹立つな。遠回しにお前は足手まといだと言われてる気がする・・・正論は時として人を傷つけるって本当なんだな。
しかし実際の所、そう思われても仕方がないと思えるくらいアギラは強い。このわずかな間にアギラの戦闘を見ただけでそれを悟ってしまった。
おそらく、アギラに真正面から挑んでも今の俺では勝ち目は無いだろう。他の連中・・・カオスもウィキッドもアニスもゼルクもそうだったが、こいつらは全員が異常な力を持っているようだ。
しかし、だからこそ疑問に思う。
「・・・それだけの力がありながら、何故俺たちを利用しようとしたんだ?」
それだけが理解できない。
これだけの力があるのなら、アギラの目的である【禁断の箱】も堂々と入手することができたはずだ。緊急クエストのどさくさに紛れて火事場泥棒をする必要があったとは到底思えない。
『・・・勘違いされているようですが、私たちはあくまで一プレイヤーとして、このゲームの中を行動しているにすぎません。このゲーム・・・いえ、この世界のルールから逸脱した行動は私たちも取ることはできないのです』
・・・ふむ、異常な力を持っていたとしてもあくまでプレイヤーでしかないってことか・・・いや、待てよ?
「だが、お前たちは人のクランホームに無断侵入したり、俺たちの情報を不正に取得しているじゃないか? それはお前の言うルールから逸脱した行動には入らないのか?」
確かにこいつらは、いわゆる不正行為者が良くやるような、ダメージをまったく受けないだとか、攻撃力無限だとかの一方的にやりたい放題なチート行為は行ってないとは思う。
そういう意味では、ある程度このゲームのルールにのっとっているように思えるが、中には不正な手段としか思えないような行動を取って来たことだってある。それは俺たちがさんざん目撃してきたものだ。
今更、こいつらがゲームルールにちゃんと従っているプレイヤーだとか言われても納得できるはずもない。
『運営側が定めたルールからすれば不正に見えるかもしれませんが・・・この世界のルールを破っていはいませんよ? 破るほどの力はまだ私たちには無い、と言った方が正しいかもしれませんが』
・・・まるで運営が定めたルールとこのゲームのルールが違うような口ぶりだな。だが、それっておかしくないか? このゲームのルールを定めたのが運営じゃないのなら・・・一体誰がルールを決めたんだ?
『この世界にはルールブックには載っていないルールがあるのですよ。その一つが・・・個人の能力を制限しないというものです』
個人の能力・・・【固有能力】の事か。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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