思わぬ共闘
彼・・・これってジェスター(偽)のことだよな。
ジェスター(偽)が嘘を付いている・・・か。正直な所、今更な気がするな。
ジェスター(偽)はふざけた言動が多いし、しゃべり方イラつくし、無駄話も多いし・・・なにより俺から見れば敵だ。敵の言動をはいそうですかと信じられるわけがない。
そんなことはアギラだって百も承知のはず。それでもなお、こんなダイイングメッセージ?を残したってことは・・・俺が既に奴に騙されているってことなのか?
敵に嘘を教える目的、それは自分を有利にする為に他ならない。
つまり、ジェスター(偽)は俺に嘘を教えることによって何らかのメリットを受けていることになる。
この場において、奴がメリットを欲するとなれば・・・奴の力に関することだろうな。
となると【模倣擬人】、【模倣擬物】、【模倣擬植】の三つの力を俺は誤認しているということだろうか?
確か奴曰く、【模倣擬人】は特定の人物の実力や性格、雰囲気なんかまでを完全にコピーする力だと言っていた。そして【模倣擬物】は武器をコピーする力だと。そして【模倣擬植】は相手に自分の意識の一部をコピーして植えつける、と・・・いや、【模倣擬植】に関してはジェスター(偽)ではなくアギラから聞いたんだっけ? 【模倣擬植】に関しては奴が嘘を言ったとかは無いな。
となると【模倣擬人】か【模倣擬物】のどちらかの力を俺は誤認しているということか・・・だが、一体何をだ?
実際に戦った俺だからわかるが力も【模倣擬物】の力も本物だ。奴がコピーしたヤマトタケルやハットリハンゾウの実力は紛れもなく達人級だったし、【神剣トツカ】や【神刀カゲウミ】の力も脅威的だった。
一体、どこに嘘なんて入る余地があるんだ?
俺は激戦を繰り広げているジェスター(偽)とボレアスの戦いを見据える。
・・・だめだ、わからん。
そして悩んでいる猶予もない。間を置けばジェスター(偽)の力が回復し、次はどんな奴に化けるかわかったもんじゃない。ここは無理をしてても力は回復しきっていないうちに仕留めたい。
アギラからのメッセージは気になるが・・・ひとまず置いておこう。
俺は呼び寄せた【グランディスチェイサー】にアギラを乗せ、ジェスター(偽)たちの元へと向かう。
ジェスター(偽)とボレアスの戦いは一見すると互角のように思える。正確にはボレアスは果敢に攻勢にでているが、ジェスター(偽)は無理をせず防御に徹し、隙あらば反撃しているといった感じだ。
・・・明らかに時間稼ぎしているな、ジェスター(偽)の奴。力が回復するまで時間を稼ぎ、【模倣擬人】と【模倣擬物】を使って一気に決めるつもりか。
当然、そんなことはさせない。
俺は【グランディススナイパーライフル】を取り出し、ジェスター(偽)を狙撃する。
パァンッ!!
「おっとぉ!」
ガキンッ!
しかし、ジェスター(偽)は手に持っていた大鎌でライフルの弾丸を弾いた。
「あひゃひゃひゃ! ヘッドショット狙いたぁ、わかりやすすぎるぜ? ア・ル・ク・く・ん・よぉ?」
・・・虚を突いたつもりだったが、良い反応だ。弾丸を弾くだけの腕前と言い、ジェスター(偽)のままでもなかなか手ごわそうだ。
「・・・貴様、邪魔をするつもりか」
おっと、どうやらボレアスにまで不評を買ってしまったようだ。ボレアスはボレアスで、自分の手で決着をつけたかったみたいだな。しかし、ここは譲れない。
「悪いが奴を倒すのを最優先にさせてもらう。お前も俺たちの戦いを見ていたんだろう? 奴が異常な力を発揮する前に決着をつける。・・・文句があるのなら後でいくらでも聞いてやる」
「・・・」
ボレアスは黙ったまま、ジェスター(偽)をにらみ続ける。
ふむ、文句はあってもこちらとまで敵対する気はないようだな。それにボレアスが俺たちを助けたのだって、加勢を期待していた面もあるはずだ。でなかればボレアスには俺たちを助ける理由なんてなかったはずだからな。
ボレアスは自身が身にまとっている黒ローブを変化させながらジェスター(偽)に攻撃を加えていく。
ボレアスの黒ローブは時にハンマーのように固く、また剣のように鋭く変化し、ジェスター(偽)を追い詰める。ジェスター(偽)が反撃に転じるも黒ローブがゴムように柔らかくなって攻撃を通さないようだ。
あの黒ローブは防具でもあり、武器でもあるのか・・・一体どうなってんだ?
「あひゃひゃひゃ! 随分と不思議な武器を使ってんじゃんボ・レ・ア・ス・くぅ・ん? 【神刀カゲウミ】の攻撃を防いだことと言い、その黒いのも【神器】・・・いんやぁ、その摩訶不思議な能力は・・・【宝具】かなぁ?」
「!?」
・・・ボレアスが一瞬、動揺したな。【宝具】? 封神演義に出てくる仙人が使う武器のことか? ボレアスの奴、そんな物を使っていたのか・・・俺も欲しいぜ!
なんて考えつつも、狙撃を続ける俺。奴の話には過分に興味はあるが、だからといって攻撃の手を緩めるほど、ボケてはいない。
「あひゃひゃひゃ! こりゃまたずいぶんと意外な組・み・合・わ・せ・だ・ねぇ!」
しかし、ボレアスの攻撃の隙間に狙撃を続けるも避けられる、弾かれる。防がれる。
俺とボレアス、二人を同時に相手をしてもなお・・・ジェスター(偽)は互角以上の戦いを繰り広げていた。
おかしい・・・ジェスター(偽)の実力はヤマトタケルやハットリハンゾウには遠く及ばないはず。なのに、トッププレイヤークラスの実力を持つ俺とボレアスの二人がかりでも仕留められないとは。
最初からジェスター(偽)はそれだけの実力を持っていた? だがそれならヤマトタケルやハットリハンゾウに化ける必要なんて最初から無かったんじゃないか?
この違和感・・・やはり俺は奴の力を見誤っているのか。
「・・・ヌンッ!!」
と、ここでボレアスが勝負に出たようだ。
黒ローブを思いっきり長く伸ばし、ジェスター(偽)を縛り上げた。
これは・・・俺へのパスか。
ならば今の俺にできる最大の一撃を使ってやる。
「【戦鎧アルドギア・グランディスアーマー】!!」
俺は追加装甲【グランディスアーマー】を装着する。さらに生き残った【ビートル君】や【ガタック君】も周囲に集結させる。
アーマー各部が展開し、
「【エナジーレーザー】発射!!!」
エナジーレーザーを一斉に発射する。
レーザーが当たる瞬間にボレアスは奴の拘束を解き、無防備となったジェスター(偽)にレーザーが集中し、爆発が起こる。
・・・直撃したはずだ。いくら奴でも無事では済まなかったはず。
・・・なのだが、どうしても奴を倒せたと思えない。
爆煙により、奴の姿は見えないが、そう確信できる。
そして・・・
『【固有能力:模倣者】の効果により【模倣擬人】が発動しました』
アナウンスが・・・奴の生存を告げ、さらに俺たちに絶望を告げる。
力を回復したというには早すぎる・・・ジェスター(偽)の奴・・・余力を残してやがったな!!
やがて爆煙が晴れ、姿を現したのは・・・
「・・・やれやれ、争いごとは苦手なんですがね」
そこに姿を現したのは・・・【天使】。
【神仏界】で俺たちの案内をしてくれたラグエルさんだった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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