想定外
ハンゾウ(偽)が【神刀カゲウミ】とやらを使って地面に影を作り出し、さらにその影から黒い刃が次々と飛び出してくる。その様はまるで剣山のようだった。
俺は【エナジーフェザーマント】を使って空中へ逃れたが・・・逃げ遅れた【ビートル君】や【ガタック君】が何機か破壊されてしまった。【グランディスザッパー】も同じく串刺しにされてしまった。
そして今、俺はアギラの元へ飛翔している。
影の刃がアギラにまで迫っているからだ。
ハンゾウ(偽)とアギラは一応は仲間内のはずだ。
しかし、先ほどハンゾウ(偽)はアギラを攻撃していた。このゲームはフレンドリーファイアは無効のはずなのに、だ。
このことから考えてもハンゾウ(偽)はアギラを味方として設定していないし、本気でアギラを攻撃する気だということが分かる。
まあ、アギラはアギラでハンゾウ(偽)の事を嫌っていたようだから、仲間意識なんてものはなかったのかもしれないが・・・建前上でも仲間を容赦なく攻撃を仕掛けるとは。
奴の影はどんどん広がっていく・・・影から飛び出していく刃もどんどん増えていく。
影の刃がアギラに届くのも時間の問題だ。
このままでは間に合わない!
「【韋駄天の俊走】!!!」
俺は超加速しながらアギラの元へと飛翔する。
ボォンッ!
ちぃ、アギラを照射していた【ビートル君】が破壊された!
さらに影の刃がアギラに・・・もう少し・・・もう少しで・・・
「よっと!」
間一髪でアギラを拾い上げることに成功した! やばかった・・・【韋駄天の俊走】による超加速が無かったらまず間に合わなかっただろう。
今だ動き出す様子の無いアギラをお姫様抱っこで抱きかかえて空高く避難する。
そこで一旦、奴の攻撃を回避できたと判断し、【韋駄天の俊走】を解除。さすがにいつまでも加速し続けるのは消費が激しいからな。
地面の方はというと・・・駄目だ、どんどん影が広がっていく・・・おいおい、どこまで広がっていくんだよ。既に数キロは地面が真っ黒になっている・・・居住ブロック全域まで広がっていきそうな勢いだ。
それだけでなく影の刃もドンドン増えていく。今や数千、数万という刃が地面から飛び出している。住宅ブロックにあった多数の建物が無残に切り刻まれ、瓦礫の山と化している。
幸い、影の刃は俺たちがいる高さまでは届かないようだが・・・
「甘いぞっ!」
そこで遠く離れてしまったハンゾウ(偽)からそんな声が聞こえてきた。
すると、地面から生えてきた影の刃が伸びてきた!
「影とは本来、形なき物。故にどこまでも形を変えることができる」
「クッ!?」
迫りくる無数の刃を避け続ける俺。いくら空高く飛翔しても、どこまでも影の刃が追いかけくる。
ここは要塞内部の居住ブロック、天井があるために空に逃れるとは言っても限度がある。
このままじゃまずい!
「リモートコントロール! 【グランディスバスターキャノン】発射!!」
俺は空中で待機していた【グランディスチェイサー】を再度リモート操作し、今度はハンゾウ(偽)に向けてキャノンを発射する。
奴はちょうど先ほど俺がいた場所に佇んでいた。照準を合わせなおす必要はない。
直撃するはずだと思っていたが・・・
「無駄だ」
ハンゾウ(偽)は自分の周囲から影の刃を大量に伸ばし始めた。大量の刃がハンゾウ(偽)の周囲を覆っていき、やがて奴の姿をすっぽり覆い隠してしまった。
ドォォォォンッ!!
そこにキャノンから発射されたエナジー砲が直撃したのだが・・・奴の姿は影の刃に覆われたままだった。やがて奴を覆っていた影の刃がほどけていくと、そこには無傷の奴の姿が・・・
あの影の刃は攻撃だけじゃなく防御にまで使えるのか。
バキィン!!
「ぐあっ!?」
奴へ攻撃している間にも、大量の影の刃が容赦なく俺に迫っていた。その攻撃の苛烈さに避けきることができず、右足にかすってしまった。
ただ、そのかすっただけで【功鎧アルドギア】が砕けてしまった・・・威力まで、これほどとは・・・直撃すればひとたまりもないだろう。
ヤマトタケルもそうだったがハットリハンゾウもとんでもない奴だったんだな。こんなでたらめな力を持っていたとは・・・
だが、奴の力にも制限がある・・・つまり、この状況にも限りがあるはずだ。
このまま逃げ回っていれば奴もいずれ力尽きるはず。
「そこだ!」
!? しまった!
いつの間にか居住ブロックの端まで来てしまっていたようだ。前方に壁が・・・ハンゾウ(偽)の奴、ここまで計算して俺を誘導していたのか!
まずい・・・前方の壁にまで影が・・・影から刃が飛び出してくる。
逃げ場がねぇ・・・これじゃあ加速しても行き場が無い!
ここまでか・・・覚悟を決めて防御を固めようとするが、奴の攻撃を防ぎきれるだけの防御手段なんて俺には・・・
諦めかかった、その瞬間。
周囲が黒く染まった。
やられた? いや、違う。影の刃じゃない。
これは・・・黒い布? のようなものが俺の周囲を覆っている。
何が起こったのかと周囲を見渡すと・・・黒い布の中に仮面が浮かんでいるのに気が付いた。
あの仮面は・・・
「・・・ボレアス?」
そう、その仮面は【秘密結社DEATH】のボス、ボレアスの物だった。
黒い布が周囲を覆っているせいで外の様子が分からないが、迫って来ていた影の刃はいまだ俺の元へは届いていない。
これは・・・
「助けてくれた・・・のか?」
俺の問いに応えることなく、ボレアスの仮面は不気味に浮かんでいるだけだった。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
作者のやる気とテンションとモチベーションを上げる為に
是非、評価とブックマークをポチっとお願いします。
m(_ _)m




