火力押し
ハンゾウ(偽)の【影渡り】を封じる手段はいくつもあるが、当然ながら奴の【忍術】がそれだけなはずはない。というか、奴の言葉を信じるなら、奴はすべての【忍術】を使うことができることになる。
当然、俺の知らない【忍術】も、だ。
加えて俺はハットリハンゾウとは手合わせしたことがない。したがって、ヤマト(偽)の時とは違ってハンゾウ(偽)の実力はまったくの未知数なわけだが・・・まあ、ヤマトタケルと同レベルのNPCであろうことは簡単に予想できる。
となると、今の俺のステータスでは真正面から戦いを挑んでも勝ち目はないだろう。
ならば・・・
「【グランディスガトリングガン】斉射!!」
ドドドドッ!
ハンゾウ(偽)に向かってガトリング砲を斉射する。
相手は【忍者】だ。
素早い動きと多彩な【忍術】を駆使して敵を翻弄しながら戦うスタイル・・・ならばこちらは【マキナ】による【兵器】の火力押しで押し切らせてもらう。
剛よく柔を断つってな感じで。
「【土遁:土壁】!」
対するハンゾウ(偽)はというと地面に手を置くと、自身の身の丈を超すほどの土の壁・・・つまり、盾を作り出し俺の攻撃を防いだ。
しかし、しょせんは土の壁だ。高火力の【兵器】相手にいつまでも保つはずがない、と俺は構わずガトリング砲を撃ち続けた。案の定、程なくして土の壁は穴だらけとなり、崩れ去った。
だが、その崩れ去った土の壁の先にいるはずのハンゾウ(偽)の姿が無い。
土壁で出てきた影から【影渡り】で移動したか。
今俺がいるのは住宅街・・・空から人工的な光が照射されており、影自体はそこら中にある。
俺の周囲は【ビートル君】と【ガタック君】がライトを照射してくれているおかげで影は無い・・・が、さすがに広範囲を照射するのは無理がある。せいぜい俺の周囲数mといった所が限界だろう。
しかし、その数mだけでも影を消してくれたことで奴の奇襲からは逃れることができる。さすがにさっきのようにいきなり背後に現れたら対処のしようがない。さっきのような不意打ちはもう通用しないだろうしな。
・・・厳密には奴の【影渡り】を封じる手段はもう一つあるんだが・・・それには別のリスクがあるしな。
まずはこのまま奴の出方を見るべきか。
ヒュッ!
「む!?」
その時、わずかに聞こえてきた風を切る音。
俺はすぐさま【グランディスマグナム】を取り出し、1機の【ビートル君】に迫っていた何かを撃ち落とした。
「これは・・・手裏剣か」
それは【忍者】の定番アイテム、手裏剣だった。
まあ、奴が【忍者】なら手裏剣だって使ってくるだろうが、問題はその出どころだ。
手裏剣が飛んできた方向を計算してみるも・・・そこは建物と建物の間の隙間だった。すでにそこに奴の姿は無い。
問題は奴の姿が無いことではなく、その場所・・・建物の影になっているだけあって、ほぼ真っ暗だ。【マキナ】の正確なセンサーでなければ見通すことができなかったかもしれない。
そんな真っ暗な場所なら【影渡り】は使いたい放題だ。
ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!
パンッ!パンッ!パンッ!
次々と飛んでくる手裏剣を撃ち落としていく。
手裏剣はすべて別々の方向から飛んできている。その出どころは・・・やはり建物の影になっている箇所ばかりだった。
おそらく奴は【影渡り】で一瞬だけ出てきて、手裏剣を投げたらまた【影渡り】で移動という変則的なヒットアンドアウェイを行っている。
しかも狙いは俺ではなく、俺を照射している【ビートル君】と【ガタック君】だ。
直接俺を狙わず、外堀から埋めていくつもりか?
リスクを負わず、着実に敵を追い詰めていくやり方は如何にも【忍者】らしいが・・・そんなやり方がいつまでも通用するはずがないだろうに。いくらなんでも俺を舐めすぎだ。
ヒュッ!
「そこだ! バスターモード・・・シュート!!」
いくら影があるとはいっても無数にあるわけではない。手裏剣がこちらに届く範囲の影を把握し、ここまでの奴が出現したと思われる場所とタイミングを計算すれば・・・次に奴がどの場所の影に現れるか予測できる。
その予測した場所は・・・最初に手裏剣を投げてきた建物の隙間!
ちょうど手裏剣を投げた瞬間のハンゾウ(偽)を補足し、【グランディスマグナム】をバスターモードにして発射する。
奴が投げた手裏剣を蒸発させながら、エナジー砲がハンゾウ(偽)に襲いかかる。
ドゴッッッ!!
周囲の建物を巻き込みながら、ハンゾウ(偽)を襲ったエナジー砲。
直撃したとは思うが・・・さすがにこれで倒せたとは思えないな。
「【風遁:手裏剣烈破】!!」
また別の方向から奴の声が聞こえてきた。やはり【影渡り】で逃げ延びていたか。
しかも今度は大量の手裏剣が一度に・・・【風遁】による加速まで追加されてやがる。
「くっ!?」
さすがにすべてを撃ち落とすのは無理だと判断し、その場から後退するが・・・
ボンッ!ボンッ!
ちぃ、【ビートル君】が2機やられた。
「【グランディスザッパー】射出!!」
目には目を、手裏剣には手裏剣をというわけで、俺は手裏剣【兵器】を射出し、迫りくる奴の手裏剣を払い落していった。
しかし、そのことに安堵している余裕はない。
なぜなら・・・またしても奴の姿が消えたからだ。
くそっ・・・今度はどこに行った!?
「【雷遁:手裏剣乱舞】!!」
!? また別方向から大量の手裏剣!? 今度はバチバチ音を鳴らしながら不規則にこちらに向かってきている。【雷遁】によって雷をまとわせた・・・だけじゃなく、磁石のように反発させながらこちらに向かわせてきているようだ。
仕方がない。【マキナ】という種族の特性上、【魔法】はあんまり得意じゃないんだが・・・
「【アクアウェーブストリーム】!!」
俺は【水魔法】を使って手裏剣たちを押し流した。これなら雷も関係ないだろう。
「【水遁:手裏剣降雨】!!」
「なに!?」
今度は空から!? まるで雨のように手裏剣が降って来る!
・・・ハンゾウ(偽)の奴、容赦ないな。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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