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偽りの忍

驚くよりも早く、考えるよりも先に体が動いていた。


俺はアギラを刀で突き刺したハットリハンゾウの姿をした()()()に、手に持っていたライフルの銃口を向けようとしたが・・・それよりもソイツの動きの方が早かった。


アギラから刀を引き抜いた()()()は、アギラを俺に向かって押し出した。


俺はアギラをとっさに受け止めたが、その隙に()()()は姿を消していた。


どこに行った・・・なんて口にする暇もなかった。


なぜなら・・・()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。


その刀は紛れもなくアギラを突き刺したものと同じ。そしてその刀は・・・俺の背後にいる()()()が押し付けてきている。


一瞬で背後に回り込まれた・・・しかし、そのことに疑問は無い。なぜなら、そのスキルに関しての知識だけは俺にもあったからだ。


「・・・【影渡り】か」


「その通り。影から影を渡る、【忍術】スキルの中でも最上位に位置するスキルの一つ・・・習得は困難だが、あらゆる忍びの術を極めているハットリハンゾウならわけもなく使うことができる」


【影渡り】というスキルはまだ俺には使えないが、忍者掲示板では話題になっていたのを覚えている。忍者好きのプレイヤーがひたすら【忍術】スキルのレベリングをしまくった末に習得できたスキルだと。この情報を経て追従しようとするプレイヤーが続出したのだとか。まあ、俺もその一人だけど。


それにしても、この口ぶり・・・やっぱりヤマト(偽)か。いやジェスター(偽)というべきか? そういえば結局こいつの本名がわからないんだよな。今はハンゾウ(偽)になりきっているみたいだが。


だが解せないこともある。


「なぜ真っ先にアギラを狙った? お前らの仲間だろうが」


ヤマト(偽)改め、ハンゾウ(偽)の狙いがアギラであることはわかっている。そのアギラを刺すというのはどういうことか? 百歩譲って逃げられないようにするためだとしても・・・まず狙うべきは俺の方だろうに。


「こちらの実情をべらべらと話す輩は仲間にあらず。それに仮に仲間といえど任務に支障をきたすというのなら切り捨てるのが忍びの掟」


・・・本当になりきってるな。ジェスターやヤマトとはまた違う口調と性格になってやがる。こういう所もこいつに対するやりにくさの原因になってるんだろうな。


「なるほど・・・と言いたいが、その割には詰めが甘いんじゃないのか? アギラはまだ死に戻ってないし、俺にも攻撃せず呑気に話し込んでるなんてな」


「心配無用。その女はもう身動き一つ取ることはできん」


「なに?」


そういえば確かにアギラが動き出す様子がない。瞳孔が開いたまま固まっている・・・ロボット風に言えば機能停止しているような状態だ。


これはまさか・・・


「毒・・・いや、ウィルスか」


俺はチラリと首筋に突き付けられている刀を見た。よく見てみると、表面に何やら付着していた。


「左様・・・刀に【妨害粉】を塗り付けていたのだ」


【妨害粉】・・・察するに対アンドロイド用の【弱体粉】といった所か。アギラは自身に【クラッキング】をかけていたっていうし、機械専用のスキルやアイテムがあったとしてもおかしくはない。


つまり事実上、アギラの助けは期待できなくなったってわけだ。もっとも、動けたとしてもアギラが俺を助けてくれたかどうかは疑問だが。


まあ、ハンゾウ(偽)に不利になりそうなことをしゃべっていたことには変わりないので、先に口を封じたのはある意味間違いではないと思う。


わからないのは、なぜ俺にさっさとトドメを刺さないのかということだ。


「無論、お主がアギラ殿からどこまで情報を聞き出したのかを確認するためだ。まさかアギラ殿が重要な機密までしゃべったとは思えないが・・・いずれにせよ、お主にも私たちと一緒に来てもらう」


・・・ああ、なるほど。だからハンゾウ(偽)は俺にもアギラにもトドメを刺さないのか。


俺がこの場で死に戻った場合、クランホームで復活することになる。それはハンゾウ(偽)からすれば逃げられたも同然だ。


アギラが死に戻った場合、こいつにとっては目的を達したことにはなるが、代わりに俺への対処ができなくなる。アギラがいなくなれば、俺もこいつの相手をする必要がなくなるわけで、俺が逃げ回るか最悪ログアウトされると思っているのだろう。


つまり、ハンゾウ(偽)は俺もアギラも同時に確保したいわけだ。


忍び故の合理的な判断といえばそれまでだが・・・俺のことを舐めてるな、コイツ。


「付いて行っても良いが、どうせアニスにまた記憶を消されるんだろ? お・こ・と・わ・り・だ。【韋駄天の俊走アークヘブン・アクセル】!!」


俺がそう言い終わるや否や急加速状態へと移行する。


しかし、いくら加速しても、俺の首筋に突き付けられた刃が消えるわけではない。俺が動き出そうとしていることに気づいたハンゾウ(偽)がその刃を俺の首に突き刺そうとしたが・・・今度は俺の方が早い。


「【転身】!!」


俺が加速しながら【転身】を行い、その姿を【リリットエルフ】へと変化させた。幼い子供になることで・・・つまり、()()()()()()()()ことでハンゾウ(偽)の刃から逃れることができた。


とはいえ、アギラも同時に手放すことになり、サイズが合わなくなった戦闘服も【攻鎧アルドギア】も空中に放りだされてしまった。


そこで、俺はハンゾウ(偽)からほんの少しだけ距離を取りつつ


「もいっかい【転身】!!」


今度は【マキナ】へと姿を変える。同時に戦闘服も【攻鎧アルドギア】も再装備。こういう時、瞬時に装備しなおすことができるのが、このゲームの良さだよな。


力なく崩れ押しそうになったアギラを再度抱きかかえ、同時に驚いた様子のハンゾウ(偽)に向かって、


「【グランディスボム】」


爆弾を投げつけた。


ドォォォォン!!


爆発と同時に俺はアギラを抱えたまま、急いでこの場から離れる。


すたっと飛び降りた先は住宅街の道路のど真ん中だ。


どこかに身を隠すことも考えたが、【影渡り】を使ってくるハンゾウ(偽)相手に物影に隠れるのは逆に不利だ。


俺は加速を解除し、アギラを道端の壁際に座らせる。さらに【ビートル君】を出し、ライトでアギラを照射させる。


【影渡り】には弱点がある。それは影が無ければ効果を発揮しないのは当然のこと、出入りできるだけの大きさの影が無ければそこから出ることも入ることもできないということだ。


つまり、こうしてアギラに光を当て続け、影を小さくしておけばハンゾウ(偽)がアギラの影から出てくる心配はないってわけだ。


・・・正直、俺にはアギラを守らなきゃいけない理由は皆無なんだが・・・まあ、いろいろ教えて貰ったし、聞きたいこともまだまだあるからな。わざわざハンゾウ(偽)に渡してやる道理もない。


さて、と。


俺はアギラから離れ、道路の真ん中に立つ。さらに【ビートル君】【ガタック君】を全機発進させ、ライトで俺の影を消してもらう。


こうすれば・・・


「・・・フン、1対1での戦いが望みか」


ハンゾウ(偽)は俺の前に出て来ざるを得ないってわけだ。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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