海中戦闘
海の中は非常に透き通っていて綺麗だった。
【潜水】スキルのおかげでゴーグルが無くとも目を開けることが出来るし、息もすることが出来る。イメージ的には体の回りを薄い空気の膜で覆っている感じだろうか。このバリアーみたいな物のおかげで海中でも問題なく動けるというわけだ。まあ、動けるといっても地上のように歩く感じではなく手足をばたつかせて泳いでるんだけどな。
ここで問題となるのが二つ、一つは【潜水】スキルのレベルはまだ1なので10分程度が限界だということ。まあ、これに関しては【潜水】を繰り返し使ってレベルを上げるしかない。もう一つは海中での戦闘だ。
以前、水中で戦った時もそうだったが、水の中というのは戦う手段が限られる。剣を振ろうにも水の抵抗が邪魔をする。魔法系も似たようなもので、当然、【火魔法】は使えず、【風魔法】も同じく水の抵抗に邪魔され、【雷魔法】は水の中では拡散してしまう。まともに使えるのは水、光、闇、あとは氷といった所か。
・・・あれ?思った以上にやばくない?
そう思い立った俺はメンバーに予め海中での動作確認をするようお願いしている。さすがにモンスターも出る海の中で戦闘手段も無いまま海底まで潜っていくのは自殺行為だからだ。これでもし海中戦闘が厳しいとなったら一旦撤収して手段を考える必要があるかもしれない。
とまあ、こんな感じで海中での戦闘は思ったより厳しいのだ。
あーあ、目の前を暢気にすいすい泳いでる魚が羨ましいぜ。
・・・おや?魚の群れが向かってくるぞ?しかもあの魚、凶悪そうな顔してるぞ?なんか牙っぽいものが見えるし。
【シーピラニア Lv30】
海に生息する肉食の魚モンスター
おう、魚は魚でもモンスターだったか。しかも肉食のピラニア。・・・もしかして俺たちは餌なのか?
「皆!モンスターだ!!」
なお言い忘れたが、水の中でも会話は普通に出来る。こういう所はゲーム仕様なんだろう。海の中で使うハンドサインなんて知らないから正直助かる。
っと悠長に考えてる場合じゃない。俺は長剣を取り出す。
「【スピードスラッシュ・ファントム】!!」
・・・うーむ、やっぱり鈍いな。10回は攻撃したのに当たったのは1匹だけだ。100匹近い群れなのに。対してピラニアの動きは素早い。1匹1匹は何とか回避できるがまとめて来られるとアウトだ。
今度は獲物を槍に持ち替える。
「【スピードチャージ】!!」
今度は斬る、のではなく突くほうに重点を置き、ひたすらに槍で突きまくる。おお、こっちの方が効果が高いな。やはり突きに特化した方が水の抵抗が少ない分、攻撃が当たりやすいようだ。これは水中では槍がメインになるかな。・・・なんでだろう、取ったどー!な人が思い浮かぶのは何故だろう?あの人は槍じゃなくて銛なんだけどな。・・・銛の武器はないんだろうか。
ま、まあ、とりあえず海中での戦闘も何とかなりそうだ。他のメンバーはというと・・・
アテナは刀を手にしつつ、【光魔法】のレーザーのようなもので撃退している。さすがに水の中で弓矢は効果なかったようだ。【爆発魔法】はどうなんだろうか?使っていないところを見るとそっちも効果が無かったのか?
まあ仮に使えたとしても水の中で爆発なんて起こったらやばいかもしれん。地上より爆音の影響が大きいし、衝撃でどっかに流されていくかもしれん。後でアテナに注意しておこう。
アルマのほうは普通に戦えてるな。【水魔法】で水流を操作してピラニアを一箇所に集めて、【氷魔法】で一気に凍結、粉砕している。ある意味水中でのお手本のような戦い方かもしれない。
海中戦闘ではアルマがメインになるかな。さすがにあれをすぐに真似する事はできん。く、俺の魔法系のスキルレベルが高ければ・・・。
アーニャは、というかアーニャがしがみ付いている【成体化】したノワールは地上の時と変わらず、普通に戦えている。その細長い体ですいすい泳ぎながら、ピラニアに体当たりしたり、尻尾で叩いたり、爪で引っかいたり。【ダークブレス】も健在だ。
ドラゴンは水の中でも強いのだろうか?ノワール自身には水属性は無かったはずなんだが。
そうそう、ドラゴンと言えば、天龍馬たるアーテルも普通に戦えている。水の中にも関わらず、その翼を広げ、まるで宙を舞うかのように水の中を駆けまわり、ピラニアを攻撃している。正直摩訶不思議な光景なのだが、アーテルはアーテルなので気にしない事にした(意味不明)。
とまあこんな感じでいつもどおり、とは行かないまでもそこそこ戦える事は確認した。あとは【潜水】スキルのレベルか。一応スキルが切れそうになるたびに再度使用すれば連続で潜り続ける事ができるのだが、そのたびにMPを消費してしまうし、MPが尽きたり、うっかりスキル使用を忘れてしまったらアウト。
その時どうなるかは・・・考えたくもない。
おっとそうだ、一つ試してみたい事があったんだった。俺は槍を片手に持ったまま、もう片方に拳銃を取り出した。前に水中で銃を撃った動画を見て試してみようと思っていたのだ。
確か動画ではブワワワッと泡を発しながら弾丸が進み、すぐに失速して底に落ちていったはずだ。果たしてこのゲームの世界でも再現されているのか・・・実践!
・・・そもそも撃てるんだろうか?まさか暴発はしないよな。あと発射音も大丈夫だろうか?ま、まあ物は試しだ。ピラニアの一匹に狙いを定めて・・・発射!!
「・・・」
・・・うん、普通に発射されて普通に飛んでいって普通にピラニアに当たった。要は地上で撃ったときと一緒だ。このゲームではそこまで再現されていないのだろう。ちょっと残念。
と思っていたら勝手に【メニュー】が開き、目の前にメッセージが現れた。
『緊急アラート!!ゲーム内にて不具合が発見されました。直ちに修正・処理を試みます。しばしお待ちください。by人間界総合管理AI【ヒューザー】』
・・・何これ?これって今俺が銃を撃ったせいだよな?他のみんなにはメッセージが来てないみたいだし。
「リアルタイムメンテナンスよ。」
いつの間にか近くまで寄ってきていたアテナが話しかけてきた。どうやら解説役をやってくれるらしい。
「このゲームでは7つの世界を7つの超高性能AIとその下にいる無数のAIで常に管理・監視されているの。そして今みたいに何らかの不具合が生じた場合は即座に速攻で修正されるのよ。」
・・・とのことらしいが・・・
「・・・そういうメンテナンスとかアップデートって普通日時を決めてやるもんじゃないのか?それに大勢のプレイヤーがログインしたままなんだぞ?」
オンラインゲームなんかやった事がある人なら分かると思うが、週に一度くらいの割合でメンテナンスやアップデートのために一定時間ログインできなかったりする場合がある。というよりプレイヤーがいない間にメンテナンスやアップデートを行うのが普通だ。
「このゲームはログインできなくなるようなメンテナンスやアップデートは今のところないわよ。現に私達だって毎日ログインできてるじゃない。」
・・・そういえばもう一ヶ月近く毎日ログインしているが、メンテナンスやアップデートでログインできないなんてことはなかったな。
「高性能なAIにおけるリアルタイムなメンテナンスやアップデート。細かい修正ならすぐに適応され、それ以上のものでもエリアごと、もしくは各世界ごとにプレイヤーを排除した上で立ち入り禁止になるぐらいで、ゲーム自体にログインできなくなる事はない。だからこのゲームは24時間、365日常時稼動しっぱなし。それもこのゲームの売りなのよ。」
・・・近頃のゲーム、というかAIはそこまで進化していたのか。まあ、精神をフルダイブさせる仮想世界を作れるくらいだからな。
「・・・随分詳しいじゃないか、アテナ。」
言外にそんなゲーム関係者だと分かるような内情みたいな事を吹聴しても良いのかよ、という意味も込めて言ってみる。
「・・・PVでも言ってたし、利用規約にも書いてあるわよ?」
・・・すいません、どうやら俺の認識不足だったようだ。と、そこに再びメッセージが。
『修正が完了しました。プレイヤーアルク様にはお詫びとして【スキル獲得券】を進呈します。今後ともSeven World Onlineをよろしくお願い致します。by人間界総合管理AI【ヒューザー】』
修正が終わったらしい。試しに銃を撃ってみる。今度は、撃った途端、弾丸が泡を立てながら失速して海底に落ちていった。どうやらリアルでの動作が反映されているのが正しかったらしい。
「随分早かったわね。多分、既に用意はしていたけど反映するのが漏れていたってところかしら?まあそれはそれとして何かもらえたかしら?バグや不具合を見つけたら何かしら貰えるって聞いたけど・・・」
「ああ、【スキル獲得券】が4枚送られて来た。」
丁度人数分である。・・・お詫びの品ではあるんだろうが口止め料とも思ってしまうのは俺の心がゆがんでいるからだろうか?
まあ、予定外の収入はあったが、引き続き探索を続ける事にした。
作者のやる気とテンションを上げる為に
是非、評価をポチっとお願いします。
m(_ _)m




