二人の関係
モンスターどもを一掃して少し経つがもうモンスターが現れる気配はない。安全・・・ではないだろうが暫くは大丈夫だろうと判断し休憩する事にした。特に頑張ったアーテルとレオーネにはアーニャ特製クッキーをあげるとおいしそうにサクサク食べ始めた。
一方の俺たちはというとドロップ品を確認していた。今回の戦いでグランドカイコの糸とグレートトレントの綿は20個以上手に入り他にも素材や魔石が手に入った。少なくとも一人分のノルマが手に入ったので残りは3人分、つまり似たようなことを後三回繰り返せばノルマ達成となる。・・・大変だなこりゃ。
「んで?」
一息ついた所で同じくクッキーを頬張っているアテナに聞いた。
「?」
・・・可愛らしく首を掲げても誤魔化されないぞ。
「なんか話があるんじゃないのか?」
「・・・なんで?」
何でときましたよこの野郎、もといこの女郎。
「とぼけるな、お前も虫が苦手なんだろう?アルマと一緒に草原に行く選択も出来たはずだ。それにアーニャは前にも森に入っている。アーニャと代わってもらっても問題は無かったはずだ。」
「・・・なんだ、ばれてたの。」
なんともいえない顔をするアテナ。多分、虫が苦手な事がばれたのが悔しいのだろう。俺からすれば今更なのだが。
「んでそこまで無理してくっついて来たのは何か話しがあるからだろう?なんだ?実は男だったっていうカミングアウトか?」
「そんなわけないでしょ!!私が男に見えるって言うの!?」
いや、その立派な・・・は女性にしか見えないが。
「このゲームはキャラとリアルの性別が一致しない場合もあるだろう?深刻な悩みの告白ならそれもあるかな、と。」
「確かにそうだけど!私はリアルでも女よ!!」
なるほど、そうか。・・・正直ほっとした自分がいるのは何故だ?
「・・・じゃあ何だ?実は年齢90歳のお婆ちゃんとかいうカミングアウトか?」
「なんでそうなるのよ!!」
「このゲーム、外見は自由に変えられるだろ?他の深刻な悩みと言ったら年齢サバ呼んで若作りしてる、とか?」
「そんなわけないでしょ!外見はほとんど弄ってないし、見た目どおりの年齢よ!!」
なるほどなるほど・・・え?外見弄ってないの?この容姿とスタイルの女性がリアルに存在していると?しかも見た目から言って10台後半から20代前半だよな?実はアイドルとかだったりするのだろうか。俺は全然知らんけど。
あとさっきから個人情報が駄々漏れなんだが良いのだろうか?
「・・・じゃあ、なんなんだよ。クランを抜けたいとか?」
「だから違うわよ!そんなわけないでしょ!!」
どうやらクランを抜ける気は無いようだ。ほんのり嬉しかったりする。
「実はお前とアルマがこのゲームの経験者だって話か?」
「だから・・・え?」
ハトが豆鉄砲を食らったような間抜けな顔って言うのはじめて見たな。ついでに俺はしてやったりという顔をしているだろう。最初に出会ったときのリベンジをした気分。
「・・・どうして・・・」
「気づいたのかって?最初会ったとき俺はお前らの事を勝手にゲーム初心者だと思ってしまったが、お前らはソロ、パーティ、クランの詳細を知っていたし、武器を選ばせたとき、迷わず武器を選んだだろ?その時点で少なくともこのゲームに対する予備知識があるんだと思ってたよ。」
クランについては俺も知らなかったし、武器もどれにしようか悩んだからな。
「・・・でもそれだけじゃあ・・・」
「確かにそれだけならネットで調べるだけで簡単に分かる。でもな、お前の【天使】っていう種族、お前以外に見た事がないんだよ。まあ、【堕天使】のライフーレはいたけどな。」
「・・・」
「まあ、実際にはもっと高レベル帯になれば種族の進化で【天使】や【堕天使】になった奴がいるのかもしれないが・・・、お前はそれに当てはまらないだろ?ゲームを始めたばかりって言ってたし。なにより俺が最初に種族選択する時に【天使】っていうのは出てこなかったんだよ。【魔族】はあったけど。」
「・・・」
「多分だが、アルマのほうは分からんがお前はβテスターとしてゲームのリリース前にゲームに参加した事があるんじゃないか?【天使】っていう種族はその時の特典じゃないか?」
「・・・」
・・・沈黙に支配される。正直な所、これまでの話は俺にとって、だから何?っていう程度の話だ。何で話さなかった?なんて追求する気もない。ぶっちゃけ知ろうが知るまいが俺のアテナやアルマに対する態度が変わったとは思えないからだ。まあネタバレ的なことを話されたら怒ったかもしれないが。
「・・・ふぅー、一つ訂正よ。私とアルマはβテスターじゃなくαテスターだったのよ。」
・・・αテスター?確か、βテストが社外へ委託されるテスト、αテストは社内で行われるテストだったはずだ。じゃあ二人はゲーム会社の社員?いや、そういう人間は運営側に回るはずだ。年齢的にもおかしい。ということは・・・なるほど。
「・・・つまり二人はゲーム開発者の身内、ってことか。」
「その通り。」
これで色々納得がいった。二人も最初ソロで行く予定だったと言っていた。どこかのクランに所属しようとしなかったのはゲーム開発者の身内だとばれると要らない揉め事が起きそうだからか。プレイヤーの中にはマナーが悪い奴もいるし、運営には日々クレームや要望が送られていると聞く。そんな連中にばれたら二人がどんな目に合うか想像に難しくない。
そして俺とクランを組もうとしたのは俺が完全な初心者で予備知識も皆無、しかもソロプレイを明言していてしがらみがないからか。まあ、ナンパや勧誘避けも本当だろうけどな。
しかし、ばれたくないのなら何で【天使】なんて種族を?アルマは初心者でも選べる【魔族】だったのに。ってまさかコイツ・・・。
「・・・アテナ、もしかして万が一の時は自分だけ矢面に立とうとか思ってないか?」
そう考えればある程度納得できる。アテナだけが開発者の身内、【天使】という種族がその証拠。対してアルマのほうはアテナとそっくりな見た目以外証拠はなにも無い。
「・・・それは考えすぎよ。」
・・・そうやって淀みなく答えられること自体、考えてた証拠なんだが・・・。まあ、もし本当にそうだったとしても、アルマのほうが黙ってないと思うから確かに考えすぎかもな。実際、ほとんど効果ないと思うし。
「・・・んで?そのつまらんカミングアウトが話したかったことか?」
「・・・つまらないとは随分ね。これでもこっちはそれなりに悩んだのだけど?」
正直悩むようなことか、と言いたいがさすがにそれは無責任か。当人たちしか分からない悩みだし代わってやることもできないからな。
「ソイツは失礼、だがな。俺がそんな事を引き合いに出してチート行為を強要するように見えるか?」
見えてたらショックだな。立ち直れないぐらいに。
「見えないからこうして話してるんでしょ。」
・・・それもそうだ。
「それに本題はそこじゃないわ。」
・・・本題じゃなかったのか。
「なんだよ?」
「もし私がいないときはアルマのことを気にかけてほしいのよ。あの子、しっかりしているように見えてたまに抜けてる事があるから。」
・・・お前、人のこと言えるのか、と思ったが睨まれたので口には出さないでおいた。
「どう?頼めるかしら?」
正直過保護な気がするが何か理由があるのかもしれない。少なくともアテナ本人は本気のようだ。ならば俺も真剣に答えねばなるまい。
「やだ。」
「・・・え?」
ハトが豆鉄砲以下省略。とりあえずあわあわしているアテナにははっきり言ってやらねばならない。
「いいか!俺は楽しむためにゲームをやっているんだ!義務や責任感で人の顔色を伺うなんて真っ平ゴメンだ!!そして!お前に言われるまでも無く!!クランメンバーを気にかけるのは当たり前だろう!!!」
ビシィィっとアテナに人差し指を突き付けながらながら言ってやった。
決まった・・・。
きっとアテナは俺に惚れてしまうぐらい感動している事だろう。
「・・・人を指差さないで。」
「すいませんでした。」
どうやら俺は自分で自分の言葉を台無しにしてしまったようだ。良い子のみんなは気をつけよう。
「・・・ありがとう、アルク。」
なにやらアテナがボソッと呟いたが、俺は難聴系主人公のごとく聞こえなかった・・・なんてことは無くしっかり聞こえたが聞こえない振りをした。
「しっかしあれだな。アテナも妹?姉?どっちか知らんが心配性だな。」
「・・・?アルマは姉でも妹でもないわよ?」
・・・え?
「お前とアルマって双子・・・姉妹じゃないのか?」
嘘だろ!?そっくりな容姿なくせして!?
「違うわね。従兄弟やはとこでもないわよ。」
なんだって!?それじゃあ、まさか・・・まさか・・・。
「・・・まさか、親子・・・」
「そんなわけ無いでしょ!私とアルマは同い年よ!!」
ああ、良かったぁー。親子でもおばあちゃんと孫でもないんだな。
「じゃあなんなんだよ、お前とアルマの関係は。まさか赤の他人か?」
「それこそまさかでしょ。少なくとも赤の他人でも他人の空似でもないわよ。」
????
わけがわからん。どういうことなんだ?
頭から煙が出そうなほど混乱している俺に向かってアテナは口元に人差し指を当てながら言い放った。
「それはまだ、ひ・み・つ、もう少し私達と仲良くなったら教えてあ・げ・る(はあと)」
あからさまに話題を逸らしやがった。
・・・ちょっとドキッとしてしまった自分が恨めしい。




