戦力アップは急務
「アーっハッハッハッハ、久しぶりだな人間よ!!」
「こ、この声はまさか!?」
「よもや忘れたとは言うまい!!この我輩を!!」
「忘れるはずが無い!!お前は!!」
「そう!!我輩は!!」
「・・・え~っと・・・たしかー・・・ダンボール!!」
「ベルバアルだ!!すっかり忘れとるんじゃないか!?」
「いやー、顔は覚えてるんだけど名前が・・・な?」
「年食ったオヤジか!お前は!」
「とりあえず通報だな。」
「ちょっと待ったー!!!」
・・・
「で?茶番はこのぐらいにしてなんでここに?」
「急に素に戻るの止めてくれません?」
お前にだけは言われたくないわ。さっきまでの我輩キャラはどこ言った?
「勿論採掘目的ですよ。新人が入ったんでレベリングも兼ねてますが。」
なんと【ディアボロス】クランにも新人が入ったらしい。んでレベリングを兼ねた素材集め、と。考える事は皆一緒か。・・・どうやって勧誘したんだろう。あの我輩キャラで勧誘したのか?
「ベルバアル、何をしている?」
「そちらの方はお知り合いどすかえ?」
ベルバアルの後ろから二人の男女が話しかけてきた。
男の方は黒い肌と白い髪をして全身がローブに包まれておりさらにフードまで被っていて全身が見えない。唯一見える顔から察するに細身のイケメンと言った所か、チッ!
女性の方は茶色い髪に狐の耳のついた妖艶の美女だ。何故かはだけた浴衣のような着物を身につけ背中には大きな狐の尻尾が見える。そしてナイスバディー、エロい、以上!
「あ、アルクさん、この二人が新人です。【ダークエルフ】のリグシオンと【狐獣人】のレヴィーネです。二人とも、こちらが前に話したアルクさんだ。」
・・・お前は一体何を話したんだ。と言うか俺たちってそんな親しかったっけ?お前は俺の何を知っていると言うんだ。
「知っているさ。べヒーモスにいの一番に駆けていった者だろう。」
「そうどすなぁ。掲示板でもちらほら話されてるようやしねぇ。」
掲示板?何の話しだ?なんか気になるし、あとで確認しよう。というかこれ自己紹介しないといけない流れなのか?
「そうか、俺はアルク、後ろにいるのが【天使】のアテナ、【魔族】のアルマ、【ハーフリング】のアーニャだ。」
すっごい簡潔に紹介してやった。
「クルル!!」
・・・アーテルに頭をべシッべシッと叩かれた。僕たちの紹介を忘れてるぞ!と言いたげだ。
「わかったからはたくな、コイツはアーテル、そっちのライオンがレオーネ、鳥がフィオレ、白いドラゴンがブラン、黒いドラゴンがノワールだ。」
【眷属】たちも紹介してやった。・・・よく考えればこれって自分達の戦力を敵に教えるようなものじゃないだろうか?コイツラが敵なのか知らんが。
「へぇー、かわいい子らやねぇ」
前かがみにならないで欲しいなお姉さん。色々とヤバイぞ、その格好じゃあ。
「まさかドラゴンを【眷属】にした者がいるとは・・・。それにそこの頭の上に乗っかっているのは・・・ペガサス?新種なのか?」
男の方も【眷属】たちに関心があるようだ。この人も【育成士】か【召喚士】かな?雰囲気からして何かヤバイ奴を【眷属】にしていそうだ。
「へぇーアルクさんたちも【眷属】を手に入れたんですねぇ。そういえば最近【ユニーク眷属】を解禁したプレイヤーがいたみたいなんですが・・・。」
はて何のことやら。
「・・・それより他の二人はどうした。レシトリーとライフールは?」
「・・・そっちの名前は覚えてるんですね。二人は【武術界】の方に行ってますよ。」
だって二人ともびじ・・・いやなんでもない。【武術界】ならウルタイト鉱石の方かな。もしかしたらコイツラも【アイゼンガルド】に武具製作を頼むつもりなのか?俺が口出しする事じゃないけど。
「そうか。俺たちはマナタイト鉱石の採掘に来たんだ。多分そっちと同じ理由で。」
レベリングと装備の充実は必要不可欠だからな。
「そうなんですか。・・・もし良かったら一緒に行きません?」
お前魔王軍じゃなかったっけ?人間の冒険者と馴れ合ってて良いんですかね?
「・・・もし万が一、だ。」
「?」
「もし万が一、この前みたいな緊急レイドが発生したら・・・。」
「すいません、やはり僕達は別で行動しますね。」
すぐさま手のひらを返すベルバアル。別に何の根拠もないが、俺たちが前回の緊急レイドのトリガーだっただけにもしかしたら今回も、・・・と思ってしまうのだ。まあ考えすぎだろうが。
緊急レイドは確かに経験値も報酬もおいしいのだが、なにぶん大変なのだ。時間的にも戦力的にも。この前は攻略できたが、次もそうとは限らない。せめて装備を整えてからにして欲しいものだ。
「なんだ行かないのか。何か起こった方が面白いのに。」
「そうどすなぁ。どうせなら刺激があった方が楽しおますのに。」
・・・どうやらこの二人も危険と刺激を求めるタイプのようだ。【魔王軍】のクランにはある意味ふさわしいのか。新人って話だったけどもう既にそれなりのレベルなのだろうか?
「そうは言っても二人は碌な装備がないだろう?今緊急レイドが起こっても死に戻るだけさ。」
おお、なんかベルバアルがリーダーっぽいこと言って二人を宥めてる。・・・ああリーダーだったか、そういえば。
「ではそう言うわけで・・・フハハハ、さらばだアルク!!いづれ雌雄を決しようぞ!!」
「じゃあな。」「また会いましょうなぁ。」
そういって【ディアボロス】の連中は去っていった。一体何しに出てきたのだろうか、とか出番が欲しかったのか?と思わなくもない。そして、あの変わりようはロールプレイというより芸人の領域に行きかけている気がするが黙っていよう。
「・・・なんだか面白ヤバイ連中だったのです。あんな連中とも知り合いだったのですか?」
知り合い?どうだろう。むしろ襲ってきた連中だったと思うんだが。あのキャラじゃなぁ。・・・面白ヤバイってなんだ?
「知り合いって言うかライバルじゃない?」
「雌雄を決しようとか言ってましたしね。」
お前らも相手してやれよ。ずっと黙りこくりやがって。絡みたくないのは分かるが。
「と言っても、今やりあったら負けるだろうけどな。」
主に装備の面で。アーテルたちがいれば分からないかもしれないけど、向こうにも強力な【眷族】がいるのかもしれないしな。現にドラゴンの【眷属】を見てもさほど動揺してなかったし。
「戦力アップは急務だな。せめて装備面で並ばないと勝てそうに無いぞ、あいつらは。」
全員が頷く。いつの間にか戦う流れになっているがこれもこのゲームの面白い所なんだろう。
「それじゃあ俺たちも行くか。鉱山・・・の前にギルドの確認と情報収集だな。」
・・・
ギルドに関してはアルマが【中級魔法士】クラスを獲得、新たに【氷魔法】【雷魔法】を取得した。アテナは【中級僧侶】クラスを獲得し、【中級回復術】【中級浄化術】を取得した。
俺?魔法系のクラスやスキルはまだまだ育ってないから何も無かったよ?アーニャも同じ。
そして情報に関してだがマナティア鉱山ダンジョンの入り口はこの街のすぐ近くにある。入り口は一つだが、中は広大で移動だけでかなりの時間を食うらしい。中には数日かけて攻略する者もいるとか。また、迷路のように分岐がたくさんあり、迷ったら二度と出られない、とか言われているらしい。
まあ、俺たちの目的は攻略ではなく採掘なのだが、奥を目指した方が良い素材が採れるんだろうな、多分。【帰還石】もあるし迷ってもそんなに心配はないとは思うのだが。
やるべきことを終えた俺たちは早速、マナティア鉱山ダンジョンへと向かった。




