オーバーキル
「にしても一本道とはいえ他のプレイヤーに出くわさないのはなんでだろうな?」
2パーティで攻略している俺たちが一緒にいる以上パーティ別に分かれるタイプのダンジョンじゃないと思うんだが。
「・・・その答えは目の前にあるじゃないですか。」
・・・おのれアルマ。俺に現実を見せつけよって。
あれから進むこと十分ほど、突然道が開け扉が現れた。言うまでも無くボス扉だ。
「他のプレイヤーさんたちはこの先にいるのでしょう。もしくはこの先に出口があるのかもしれません。」
やめて!あと一時間とか【帰還石】をドヤ顔で見せたのが恥ずかしくなっちゃう!!
「そんなに恥ずかしがる事は無いでしょう?初めて入るダンジョンですし、【帰還石】が有効であることは間違いないですし、この先にいるであろうボスに勝てるという保障も無いわけですし。」
「・・・そうかもしれんが、ここに来てそんな極端に強いボスモンスターが出るとは思えんだろう。」
出たら詐欺ダンジョンと呼んでやる。
「油断大敵、なのです!」
・・・そうですね。ぐうの音も出ません。
「それでどうするの?行くのか行かないのか。」
「行くに決まってんだろ。ボスなら経験値も期待できるし、目的のウルタイト鉱石は一個ずつしか手に入れてないしな。」
「なんだかアルクさん、やさぐれてません?」
気のせいだ。だからアーテルよ。頭を撫でるのは止めてくれません?
「うし、いくぞー。」
そういってボス扉を開ける俺。
「・・・もうちょっとやる気出しなさいよ。」
やる気はあるぞアテナ?八つ当たりというやる気がな。
まあなんにせよ、扉を抜けて先に進む。そこはこれまでのトンネルとは比べ物にならない広い空間。そしてその奥にいるボスとご対面。
「「「ギニャーー!!!」」」
そして飛び交う女性陣3人の悲鳴。まあ、無理も無いかも知れない。そこにいたのは・・・
「キシャアアアア!!!」
体長がゆうに3メートルはあろうかというデッカイ蜘蛛だった。すかさず【看破】を発動。
【ツチグモ Lv.30】
大地の気を食らい巨大化した蜘蛛のモンスター
文字通り見た目どおり蜘蛛の妖怪、いやモンスターか。そして女性陣の拒絶反応が凄い。というか女性じゃなくてもびびる。なんせ人間なんて丸呑みにしそうなほどの巨体の蜘蛛なのだ。凄い迫力だ。
その巨大蜘蛛がカサカサとこちらに向かってきている。
「「「ギニャー!!」」」
そして逃げ惑う女性陣。俺は直感した。コイツラ役に立たないな、と。
「全員で一斉に全力攻撃だ!一気に倒すぞ!!」
「クル!」「がお!」「ピュイ!」「キュイ!」「キュア!」
・・・応えてくれるのが【眷属】たちだけとは。しかもアーテル以外にもレオーネたちまで応えてくれてる。・・・まあ、主があのざまじゃな。
俺の言葉に応えてくれた【眷属】たちは一斉に自らの口に魔力を集中し始めた。何をしようとしているかを察知した俺は拳銃を装備しなおし、ツチグモを牽制する。
「クルルー!!」「がおおお!!」「ピュイイイ!!」「キュイイイ!!」「キュアアア!!」
そして一斉に放たれる五体の眷属からなるブレス。ここで説明しておくとアーテルが放ったのは【レーザーブレス】、レオーネは【サンダーブレス】、フィオレは【ファイヤーブレス】、ブランは【ホーリーブレス】、ノワールは【ダークブレス】である。
どんな攻撃かは名前から察して欲しい。今の俺には説明する余裕は無いので。というのも・・・
「おわあああ!!」
爆風で吹っ飛ばされたので。はっきり言おう、やり過ぎ。ツチグモを倒したかどうかより、ダンジョンが崩落しないかどうかのほうが心配である。
「キシャアア!!」
なんとまだ生きてるよツチグモ。といっても瀕死の重傷っぽいが。言いたくは無いが傷を負ったせいでよりグロくなってしまった。それより問題はそれを見たアーテルたちはまた同じようにブレスを放とうとしている事だ!
「ストーップ!待て皆!あとは俺がやるから下がれ!」
「クル。」「がお!」「ピュイ!」「キュイ。」「キュア。」
幸い崩落の危険はないっぽいが壁やら天井やらがあちこち崩れてるだろ?威力がありすぎるのも考え物だ。あとは俺が速やかにキルしてくるからどうか落ち着いて欲しい。
幸いな事にみんな俺のことを聞いて壁際まで下がってくれた。一部不満そうだったが。さて、あとは俺が・・・。
「「フ、フフフフフ・・・」」
「!?」
な、なんだ、この地獄の底から響いてくるような恐ろしい笑い声は!?しかもステレオ!?
声の発生源を見ると怪しい瘴気(笑)をかもし出す天使と魔族の姿が!?・・・恐怖と混乱の余りおかしくなったか?
「・・・我が敵対者よ、凍れる時の中でその身、その命を散らしめよ!!」
アルマさん?なんですかその詠唱は?
「【凍結氷山】!!!」
アルマが叫んだ瞬間、ツチグモは凍りついた。あの巨体を丸々閉じ込め、出来上がった氷の塊は氷山の様子を呈していた。
・・・これが【凍結魔法】か、凶悪すぎ。瀕死だったツチグモにここまでやる必要なかっただろ。
幸い、壁際に全員避難していたので被害は無かったが。
「・・・怒れる炎よ、渦巻く嵐よ、すべてを焼き払え!!」
・・・アテナさん?なんで貴方も詠唱しているんですか?
「【大爆発】!!!」
・・・アテナの【爆発魔法】の閃光と共にツチグモを氷漬けにした氷山は跡形も無く弾け飛んだ。
・・・
先ほども言ったがこのゲームではフレンドリーファイアは存在しない。なので自分や味方の撃った魔法でダメージを受ける事は無い。ではダメージを受けるのは敵だけなのかといわれるとそうではない。アーテルたちのブレスで天井や壁が崩れたように周りの地形にはダメージがある。俺が崩落を心配したのもその点に理由がある。
ようするに、だ。大惨事の起こった部屋にいたとして、魔法によるダメージで死ぬ事はない。ただし崩落に巻き込まれることは十分に考えられるわけだ。実際、壁際まで避難していなかったら巻き込まれていたかもしれん。まあ、避難できなかった奴らもいるわけだが。
「あの・・・アルクさん・・・?」
うわー、ほとんど瓦礫の山だよ。人が通れる程度のスペースが残っているのが幸いだな。
「ちょっとー、アルクー?」
あ、奥に扉がある。やっぱりまだ続きがあるっぽいな。と言ってもいい時間だし、先に進むのはきついけどな。
「あのー、すいませーん。」
ツチグモは・・・やっぱり倒したみたいだな。反撃すらも許されず逝ってしまったツチグモが哀れでならない。合掌。
「ちょっとー、無視しないでよー。」
お、ドロップ品にウルタイト鉱石が10個もある。ラッキー!
「あのー、アルクさん。」
「ん?どうしたアーニャ。」
「・・・そろそろ助けてあげてください、なのです。」
・・・仕方ないな。俺は瓦礫に挟まれて地面に這い蹲っているアテナとアルマに目をやった。正直なところ、自分で放った魔法に間接的とは言え自分も巻き込まれるとは間抜けとしか言いようがない。しかも我を失っていたとはいえ俺やアーテルたちの邪魔をしてしまったわけだしな。
「・・・反省したか?」
「「コクコク」」
・・・やれやれ。と思いながら大剣を取り出す。
「【バスタースラッシュ】」
二人の上に積み重なった瓦礫を切り飛ばす。せっかく手に入れた【大剣術】の初使用がこれとは。
「「どうもすいませんでした。ありがとうございます。」」
反省の態度を見せる二人は俺だけでなくアーニャや【眷属】たちにもちゃんと謝っていた。素直に謝れる事は良い事だよ?
「うむ、よろしい。じゃあ戻るぞ。丁度そこに【転移装置】があるから次は続きからチャレンジできるみたいだしな。それになによりもっと重要なことがある。」
「「「重要なこと?」」なのです?」
俺はアーテルの頭を撫でながら教えてやった。
「アーテルたちがLv.20に到達した。ようやく【成体化】を見ることが出来る。」
===ログアウト===>お疲れ様でした。




