天龍馬
「それが問題の【幻獣の卵】だね?」
テーブルに置かれた卵を見てラングの奴が呟いた。そうなんだがラングよ。問題、ではないからな?
【幻獣の卵(???) ☆13】
魔龍の力を取り込んだ天馬の卵、何が産まれるかは未知数
「ふむ、確かに種族の所が?になっているね。多分べヒーモスの時と同じく初登場のモンスターになるんだろうね。というかレアリティ13っていうのを初めてみたんだけど。」
「ワシも同じくじゃ。武器や防具でも見た事がないのう。」
「んん?【インフォガルド】や【アイゼンガルド】でもレアリティ13は見た事がないのか?これ、エリア3、つまりLv.30相当の大陸で見つけたものだぞ?」
魔龍ペガサスのレベルは45だったが。
「おそらく特殊条件で手に入る卵なんじゃないかな。その入手難度の分だけレアリティが上がっているんだろう。検証できないのが残念だよ。」
レアモンエリアは一度誰かが入ると別の場所に移動するらしいからな。もうあの場所には扉はないだろう。
「それにワシらはトップクラスの情報ギルドや生産ギルドだとは思うが、トップではないのじゃ。そもそもこのゲームが開始されてから一ヶ月ちょっと。まだまだワシらの知らんことも多いじゃろう。」
そういえばまだ俺も始めて2週間経ってないんだよな。それでもまだ行ってない世界があるし、まだまだゲームの序盤のほうなんだよな。このゲーム広大すぎ!!
「まあ、御託は置いといて始めようか。何が産まれるかドキドキだな。」
俺はこれまで皆がやっていたように両手で卵に触り、魔力と霊力を注ぎ込む。っていうか皆自然にやってたけどどうやるんだ?魔力流れろー、霊力流れろーって念じる事しかできないんだけど。
あ、手のひらからなんかあったかいのが卵に流れていく感じ。どうやら念じるだけでOKらしい。そういや魔法とかもそうだった。
まあ、それはともかくどんどんあったかいのが卵に移っていく。どんどん、どんどん・・・?止まった?でも卵に変化は無い。・・・これはもしかして・・・
「ちょっと失敬。」
卵から手を離し、【収納箱】から買いなおしていたMPポーションとLPポーションを飲む。
「・・・もしかしてMPとLPが尽きたのかい?」
「・・・どうやらそのようだ。」
「・・・ちなみに君のMPとLPの数値は?」
「どっちも250を超えているな。」
どうやらそれでも卵を孵化させるには足りなかったらしい。
「「「「・・・」」」」
なんか絶句している人たちがいるが、回復はしたので気にせず再開する。結局三回ほど回復を繰り返し(またポーションがなくなってしまった)、とうとうその時が来る。卵が光だしヒビ割れとともに砕け散る。
そしてそこにいたのは・・・
「・・・」
「・・・」
静かに見詰め合う俺とそれ。まず大きさはやはり50cmほど。シルエットはペガサス、つまり翼の生えた馬だ。ただし、頭の部分は馬のそれではなくブランやノワールのようにドラゴンの頭だ。翼は鳥のような羽だが、体の部分にはドラゴンの鱗らしき物が見える。そして最後に全身が黒いが所々白のラインが入っている。魔龍ペガサスのような真っ黒の影のようなものではなく黒い肌の馬、もといペガサス、もといドラゴンペガサス。いやペガサスドラゴンか?といった様相だ。
そしてなによりこのペガサスドラゴンもまたヌイグルミのように愛らしい姿をしていた。良かった。あの魔龍ペガサスみたいな禍々しい姿じゃなくって。
そのペガサスドラゴンが愛らしい瞳で俺のことをじっと見ている。そういえばこの子、今まで産まれた【眷属】たちみたいに鳴かないな。
「ほら、おいで。」
怯えさせないよう優しく声をかけながら両手を広げる。するとパタパタと翼を動かしながら俺に抱きついてきた。ようやく俺を親?主?と理解してくれたのか産声を上げた。
「クールルー♪」
馬のようにヒヒーンでもブランのようにキュイでもない不思議な鳴き声だったが、ちゃんと声も出せる模様。無事に産まれたようで何より。
「よしよし、お前の名前も考えてある。お前の名前はアーテル、だ!」
「クルル!」
うむうむ、喜んでくれているようだ。ちなみにアーテルというのはラテン語で黒という意味だ。シュバルツとかブラックとか色々考えたが何となくこの名前にした。ノワール(フランス語で黒)とある意味兄弟みたいなもんだし、ある意味でお揃いってことで。
ピコン。
ん?アナウンスか?
『ユニーク固体の初【眷属】化を確認しました。ヘルプの【眷属】項目にユニーク固体が追加されます。』
さらに俺宛に、
『称号【ユニーク眷属の先駆者】を取得しました。』
「・・・」「・・・」「・・・」
・・・
おっと、結局アーテルの種族は何になったんだ?【看破】発動っと。
【アーテル 天龍馬 Lv.1】
本来の聖の力に加え、魔と龍の力を取り込み進化した天馬の新しい種族
うーむ、若干中二病をこじらせたかのような設定な気がするが嫌いじゃない。
「【天龍馬】っていう種族だってさ。知ってるか?ラング?」
「・・・いや知らない。今調べたけどモンスター掲示板にも載っていない。まさに新種だね。もしくは【眷属】限定の種族なのかもしれない。」
ふむ、やはりアーテルはレアな種族のようだ。世界で俺だけの【眷属】。・・・悪くない。
「っていうか今のアナウンス、君だろう?そのアーテル君はユニーク固体の【眷属】というわけだ。今頃【眷属】関係の掲示板ではお祭り騒ぎだろうね。」
チッ、気づかない振りしてたのに。
「あとアルク、【眷属】のステータスは【メニュー】から参照できるから、わざわざ【看破】を使う必要はないよ?」
あ、そうなのね。・・・ほんとだ、無知ですいません。ま、まあそれは置いといて、きっとこのアーテルもレベリングすれば【成体化】を覚えてさらにカッチョイイ姿になるに違いない(親バカ)。
ちなみについでに確認した称号のほうはこんな感じ。
【ユニーク眷属の先駆者】
はじめてユニーク眷族を手にした者への称号
眷属の種族経験値取得率上昇
うむ、アーテルのレベリングには便利だ。素直に喜んでおこう。
「そうだ、アーニャ。ブランは【成体化】をどのくらいのレベルで覚えた?」
ブランとノワールを抱えてこちらを見ていたアーニャに質問する。
「【成体化】ですか?Lv.20になった時に覚えたのです。」
「【眷属】は一律でLv.20で覚えるみたいだよ?Lv.20で大人になったってことかもね。」
ラングも補足してくれる。Lv.20ならレベリングにそんなに時間はかからないよな。
「あの、アルクさん。【成体化】ってなんですか?」
そうか、アテナとアルマはブランが【成体化】した所を見てないのか。
「アーニャ、ブランの【成体化】をみんなに見せてあげてくれるか?」
「了解なのです!ブランちゃん、【成体化】なのです!!」
「キュイー!!」
いまや【眷属】たちの兄貴分とかしたブランがその勇ましいドラゴンの姿を見せる。アテナたちは勿論の事、アーテルやノワールたちまで唖然とした顔で見ている。
「・・・これが【成体化】か。他人のモンスターの【成体化】は見たことがあるけど、こうしてみると迫力が違うね。ドラゴンだからかな?」
「うむ、確かに立派で強そうじゃのう。・・・ワシらも【眷属】の入手を考えてみるかのう。」
んん?さっきから二人の発言が微妙に引っかかる。
「なあ、【インフォガルド】や【アイゼンガルド】のメンバーには【眷属】を持ってる奴はいないのか?というかお前らは持ってないの?」
「僕は持っていないよ。クランメンバーの中には持っているのもいるけど少数だね。正直身も蓋もないことをいうと【眷属】を育てる手間暇を考えると、自分たちのレベリングを優先してしまうんだよね。パーティ枠も埋まってるしね。」
そうか、【インフォガルド】は結構な数のメンバーがいるんだったか。【眷属】のレベルを上げるにはパーティメンバーとして連れて行かなきゃいけないからな。
「しかしリーダー、この子たちを見ると、戦闘要員だけでなく、マスコットとして【ホーム】に置く事も検討するべきかとおもいます。」
ロゼさんがいたって真面目な顔で提案しているけど要するにペットが欲しいってことだよね。ラングの奴も、「そ、そうだね。」とか言って引き気味だ。
「ワシらんとこのクランは生産メインじゃからのう。戦闘は二の次なんでラングのとこと同じく【眷属】のレベリングが難しいんじゃよ。それにレベルを上げても活躍の場がないしのう。」
こっちも似たような理由か。確かに【眷属】に鍛冶仕事を手伝えって言われても無理だよな。あ、鳥系だったら羽をパタパタさせて風を送るくらいできるんじゃあ。・・・いや、【眷属】がかわいそうか。
「この子たちの癒し効果は抜群だけどねぇ。一日中工房に篭ってたりもするからあんまりかまってあげられないかもしれないんだよねぇ。」
と言いつつヴィオレはうちの【眷属】たちを見てうっとりしている。ガットが何か言いたそうだったが口を開く事は無かった。賢明な判断だ。
「戦闘が厳しいなら魔石を食べさせてあげると【眷属】は経験値が得られるですよ?」
ふと、俺たちの話を聞いていたアーニャが呟いた。んー?ラングの奴が驚いている?ロゼさんも?っていうか・・・
「え?【眷属】って魔石を食べられるの?」
「ハイなのです。一日十個までと決まっていますですが、レアリティの高い魔石ほど経験値が多く得られるのです。普通に戦ったほうが効率は良いらしいのですが、戦いが厳しい人向けにそういったお助けがあるらしいのです。かくいうアーニャも最初はマーケットで買った魔石をブランちゃんに食べさせてから戦い始めるようになったです。」
そういえばアーニャは自分で戦闘力がゴミ(笑えない)って言ってたな。産まれたばかりのブランをどうやってレベリングしたのか疑問だったけどそう言うことか。
「・・・これは良いことを聞いたね。ロゼ、帰ったら早速検証と検討を始めよう。」
「わかりました。」
「それにブランちゃんは補助魔法が使えるのです。アーニャが料理している時も助けてくれたです。」
「・・・ってことは【眷属】は生産職の補助も出来るってことだね!」
「わかっておるわい、ヴィオレ。帰ったら皆と相談してみよう。」
うん、皆落ち着け。
ちなみに当の【眷属】たちは、元の姿に戻ったブランを取り囲んでがおー、とかクルルーとかわめいてる。言葉はまったく理解できないが多分、「兄貴すげー!!」的なことを言っているんだと思う。




