これからの方針
「さて、この後だがアルクはこのゲームをどう進めるつもりだい?」
「んー?レベルを上げつつ各世界を回るつもりだけど?それぞれの世界でできることは一通り体験したいかな。」
「フム、確か最初のうちはソロで動くと言っておったな?」
「ああ、団体行動は苦手だしな。」
「「それは知ってる。」」
さいですか。
「しかしそれなら冒険者メインという事だね。それなら僕達には都合が良い。」
「何の都合だ?」
二人は黙ってそれぞれのアバターカードを見せてくる。
「クラン【インフォガルド】にクラン【アイゼンガルド】?しかもクランリーダーだと?」
「そう僕の作ったクラン【インフォガルド】は主に情報の売り買いしているクランなんだ。レアアイテムの入手法やクエストの攻略法とかを本人達から買って必要とする人達に売ったりとかね。」
「ワシの作ったクラン【アイゼンガルド】は主に生産メインじゃ。武器や防具、アクセサリーは勿論、服や料理まで、それぞれ腕の揃うヤツが集まっておるわい。」
なんと、コイツラそんなことをしていたとは。いや、そういえば前にやりたい事があるって聞いた様な気が・・・忘れちった。
「ガットの生産に関してはわかるが、ラングの情報ってのは商売になるのか?確かプレイヤーが情報をやり取りする掲示板があったよな?ゲーム内からも書き込める。」
確か俺もゲームを始める前にチラッと見たはずだ。あまりに膨大にありすぎてすぐに見るのやめたけど。
「チッチッチ、甘いねアルク。本当に核心に迫った情報っていうのは掲示板には載らないのさ。何せココの運営は優秀で核心をつくようなネタバレはすぐに削除されちゃうんだよ。」
「あー、そういえば超優秀なAIが常に監視してるって騒がれてたな。世界的な有名企業が欲しがってるくらいに。でもそれならラングのやってる事もアウトなんじゃないか?」
「当人同士のやり取りならOKなんだよ。情報交換は基本だしね。その対価がお金だったって全然問題ない。運営だってそれも承知しているはずさ。現にプレイヤー同士でお金のやり取りができるわけだしね。それにトラブル防止にも役立ってるしね。」
「トラブル防止?」
「例えばあるプレイヤーがレアアイテムを入手したとするだろ?このゲームは新しいアイテムとかが発見されるとそれに関する簡単な説明がヘルプに追加されるんだ。プレイヤー全員分にね。そのアイテムが重要だったり優秀だったりすると今度は入手したプレイヤーを必死に探し出すプレイヤーが出始めるんだ。」
「それは・・・なんか怖いな。」
意味は違うがストーカーみたいだ。レアアイテムが欲しいって気持ちもわかるが。
「そこまでならまだいいほうさ。問題は入手したプレイヤーが誰か特定されてしまった時だね。みんなこぞってそのプレイヤーの所に集まって、情報を要求したり、アイテムを買おうとしたり、フレンドになるよう強要したり、ね。今はないけど無理矢理アイテムを寄越せって昔はあったぐらいだからね。」
「それは酷い。・・・昔は?今は無いのか?」
「そこまで酷くなるともう恐喝だからね。運営が一発でアカウント停止さ。君も覚えておくといい。迷惑プレイヤーがいたらその様子を録画するなり、スクショするなりして運営に通報するといい。実際、ゲーム開始前からそこらへんが強く言われていたからこのゲームではそんなにいないんだけど、それでもいるところにはいるからね。バカをするやつは。」
なるほどね。コイツらはゲーム開始初日からいたから多少なりともそう言う奴がいたことを知ってるってことか。まさかクランまで立ち上げていたとは驚きだけど。
「それを聞いた僕はそんなわけで秘密厳守が前提でプレイヤーから情報を買い、必要な人たちにその情報を売るクラン【インフォガルド】を作ったってわけさ。いわゆる情報屋だね、ま、僕達以外にも似たような事をやってるクランやプレイヤーもいるけどね。結構大変なんだよ?たまーに偽情報とかがあったりしたりね。」
そしてプレイヤーたちの弾除けにもなってるってことか。今の話が本当なら、個人プレイヤーに行くはずだった恐喝が、【インフォガルド】に行く事になるわけで。まあ、人手があればそれだけで力になるし、運営もスムーズになるんだろう。多分助かった人も結構いるんじゃないだろうか。・・・消された人も結構いるかもしれないけど。
「実はワシらのクランも似た様なモンでな。」
「ガットの生産クランが?」
「うむ、ワシも最初はソロで好きに武器を作ってたんじゃがランクが高い武器を作れるようになるにつれ、武器の製作依頼やら大手クランからの勧誘が多くなってのう。酷いときは一日で百個近くの武器を作らされそうになってな。」
「百個って一人で?さすがに無理だよな?」
「無論じゃ。そもそもそんなに作っとったら自分の作りたい武器も作れんし品質も落ちる。おまけに性質の悪い事に向こうは数の暴力で強引にやらせようとするしの。」
「それは・・・大変だったな。」
「うむ、あの頃は大変じゃった・・・運営に通報するのが。」
そっちかよ。
「それで?それはどう収まったんだ?」
「ワシと似たような職人たちが他にもいたからな。そいつらと一緒にクランを結成してこう宣言したんじゃ。『作って欲しければそれに見合うだけの素材と制作費を持って来い!!低レベルの物は一切作らん!!』とな。」
「うわー、なんか色々敵に回しそうな発言だな。」
「うむ、実際文句の言うヤツは多かったが、ちゃんとしてるヤツはちゃんと素材と金を持ってきおったからな。それができる上位のプレイヤーからは『昔より頼みやすくなった』と喜んでくれるヤツもおっての。そういうヤツも味方してくれて落ち着いたんじゃ。」
なるほどね。個人の負担をクランの負担に分散し、かつ上位の顧客の後ろ盾によって性質の悪いヤツラから難を逃れたって事か。ただ、
「それは良かったんだが、何でガットがクランリーダーに?」
「・・・ジャンケンで・・・。」
「あー、すまん。何となく判った。」
なぜかお通夜のような空気に。
「ま、まあ話は脱線したけど、僕達に都合がいいって言ったのはそういうことさ。何か情報を知ったらその情報を売って欲しい。」
「ワシは素材じゃな。特に珍しい素材なんかあったら言い値で買おう。あとは高ランクの武器なんかが手に入ったら見せて欲しいのう。」
ふむ。つまりクランとしての依頼、いや宣伝か。コイツら仕事してるな。・・・ゲームなのに。
「まあ、それはいいんだが、一ヶ月遅れの俺なんかが手に入れる情報なんてたかが知れてないか?もう既出のモンばっかりだと思うんだが。素材だって高ランクの入手なんて大分先になるだろ?」
そう俺が答えると二人は悪ーい顔でニヤつき始めた。
「いーや、僕達はアルクが必ず何かやらかしてくれるって信じてる!!」
ガットのヤツがウンウン頷いているが、ちょっと何言ってるかわからないな。
「ま、別に今すぐってわけでもないよ。とりあえずフレンド登録しておいて、連絡くれればいいから。君のアバターカードを貸してくれるかい?ついでにフレンド登録のやり方を教えてあげるよ。」
んー、まあ深くは考えないで置こう。黙ってアバターカードを渡す。
「【メニュー】のフレンド検索のところで、アバターカードの端っこにちょこっと書いているプレイヤーナンバー・・・を・・・入力。」
ん?どうしたんだ?というかプレイヤーナンバーなんてあったのか。
「・・・ガット、このナンバーを見てくれ。」
「・・・フム、No.777777か。さっそくやりおったの。」
「なに?」
ラングからアバターカードをひったくるとナンバーを確認する。・・・確かにNo.777777だった。
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