レアモンエリア
「これ、レイドクエストの扉だよな?」
洞窟の奥、どう見てもこの奥に何かありますよ、といわんばかりに不自然な扉が存在していた。
「・・・いえ、これはレイドクエストではなくレアモンエリアの扉です。」
「・・・なんだって?」
レアモン?レア物ってことか?レアなエリアってことか?
「あ、レアモンって言うのはレアモンスターの略です。」
ああ、そっちの意味のレアモンね。
「レアモンエリアは文字通りレアなモンスターが出現するエリアの事です。クエストと違ってクリア条件はないのですが、一度入るとレアモンエリアは移動してしまうです。」
レアなエリアってのは間違ってなかったか。それにしても・・・
「エリアが移動?」
「そうなのです。一度レアモンエリアに入ってからエリアの外に出るとそのエリアへの扉が消えて、また別の場所に扉が出現するのです。出現場所はまったくのランダムで次にどこに出現するのかまったくわからないのです。それにレアモンエリア内に出現するモンスターも毎回異なるので、どんなモンスターがいるのかまったく不明なのです。」
それはまたえらいギャンブル性の高いエリアだな。レアなモンスターが欲しい人にはうってつけなのかもしれないが、それって他のプレイヤーが入っても同じく移動するってことだろ?人によってはまったく出くわさない場合もあるんじゃないか?
それはつまり俺たちは相当運が良くて、この機会を逃すと次のチャンスが何時になるかわからないってことでもある。ただし、だ。
「問題なのはこのエリアで出るのがどんなモンスターなのか、だな。」
いくら強くてレアなモンスターでも何でも良いってわけではない。経験値と素材狙いだけでも意味があるのかもしれないけど。
「それなら扉の所にヒントの文がある筈なのです。」
なに?そんな親切なものが?見つけるのはギャンブルなのに、見つけた後はそうでもないのか。
「フーン、・・・あ、これか。なになに・・・
『かつて大陸中を暴れまわった魔龍の封印されし地』
・・・だって。」
・・・怪しさプンプンなのです。
「怪しさプンプンなのです。」
あ、心の声が被った(笑)
「ま、まあ少なくとも龍が出そうじゃないか。アーニャの目的のドラゴンがいるのは間違いないだろ?」
魔龍って言う時点で普通のドラゴンじゃない気もするけどな。
「・・・そうなのです!!アーニャたちの求めるものがこの先にあるのです!!・・・魔龍というのが気になりますが。」
「キュイキュイ!!」
やっぱりそこが気になるか。でもブラン君はやる気マンマンだ。
「なら行こうか。ここで逃すともう出くわす事は無いかもしれないしな。準備はOK?」
「OKなのです!!」
「キュイー!!」
準備がよろしいようなので扉を開けて中に入っていった。・・・あ、アテナとアルマも呼べば良かったか・・・まあいいか、もう遅いし。
===移動中===>エリア3 封印の地
扉をくぐるとそこにはさらに地下深くへと通じる石の階段があった。不気味な演出だなー、とは思いながらも今更引く気はないのでそのまま奥へと進む。暫く進むと広い空間に出た。戦いには十分すぎるほど広い空間、そして奥には。
「・・・あれが魔龍・・・か?」
そこにいたのは蛇のような長い体でとぐろを巻いて鎮座しているドラゴンだった。蛇とは違って翼や手足らしき者も見える。とぐろの高さからいっても数メートルはある。全長で考えたら数十メートルはあろうかという巨体だ。眠っているように見えるがそれにしても・・・。
「体のあちこちが腐ってるように見えるんだが・・・」
「あれはドラゴンじゃないです!ドラゴンゾンビなのです!」
試しにドラゴン(仮)に【看破】を発動っと。
【デスドラゴンゾンビ Lv.35】
かつて魔龍へと堕ちたドラゴンが長い年月を経てもなお生き続けた姿
ドラゴンでは無くアンデッドと成り果てている
・・・確かにドラゴンじゃないみたいだが・・・!!
【看破】が引き金になったのか魔龍ゾンビが突如目を覚まし襲い掛かってきた。
「ギュイイイイアアアアアアアア!!!」
相変らず巨大モンスターの叫び声はすさまじく煩い。
「キュイー!?」
幸いにも警戒していた俺たちは間一髪避けることができたが・・・。
「アーニャ!!アンデッドって【眷属】にできるんだっけ!?」
「私には出来ないのです!!アンデッドを【眷属】に出来るのは【死霊術】のスキルを使える【死霊術師】のクラスだけなのです!!アーニャは【死霊術】を持ってないのです!!」
当然ながら俺も持ってない。持っていても【眷族】にしようとは思わないが。だってグロイんですもの。それはともかく魔龍ゾンビは正気を失っているがごとく、攻撃を繰り返してきた。黒い霧のようなブレス、噛み付き、爪による攻撃。どれも強力そうではあったがそんな闇雲な攻撃に当たる俺たちではない。
「仕方が無い!!【眷属】に出来ない以上、倒すぞ!!」
【鉄の大剣】を取り出しながらアーニャとブランに叫ぶ。
「了解なのです!!ブランちゃん、【成体化】なのです!!」
「キュイイイイイイ!!」
ブランの雄叫びと共にその体が光に包まれ、どんどん巨大化していく。そしてある程度の大きさになった所で光がはじけた。そこから現れたのは3メートル近い真っ白の立派な巨体に、獰猛な顔つきと巨大な牙と爪を携えたまさにドラゴンと呼ぶべき姿がそこにあった。
「ブランちゃん、【ホーリーブレス】なのです!!」
「キュイイイイイイ!!」
あ、鳴き声は変わらないのね。そしてブラン、聖属性のドラゴンだったのか。アンデッドモンスターには天敵だな。
「ギュアアア!!」
現に魔龍ゾンビが苦しげな声を上げている。おっと、俺も負けてはいられない。幸いな事に先日のイベントで丁度良い称号が手に入ったばかりだ。
【悪霊の浄化者】
アンデッド、レイス系のモンスターにダメージ増
さらにこんなときのために取得しておいた【浄化魔法】とべヒーモス戦で手に入れた【スキル獲得券】で取得したスキルを使う。
「【鉄の大剣】に【浄化】を【魔法付加】!」
【魔法付加】は文字通り武器や防具に魔法を付加するスキルだ。これで普通に剣で切ったときに浄化作用も追加されるはずだ。
「【スピードスラッシュ】!」
「ギュア!!」
・・・うーむ。効いてることには効いてるけどブランの攻撃ほどじゃないな。それにアンデッドのせいか斬撃自体効いてないみたいだ。やはりアンデッド系には魔法で対処しないと駄目らしい。しかし俺はINT(魔法攻撃力)があんまり高くないんだよなぁー。まったくあの二人は何でこんな肝心なときにいないんだ(自業自得)。
「ギュアアアアアア!!」
「ブランちゃん!!」
魔龍ゾンビがブランに向かって体当たりを仕掛ける!のを、
「【パワースラッシュ】!!」
力ずくで軌道を変える。スピードとパワーは若干俺の方が上のようだ。もっともダメージもあんまり与えられてないみたいだが。
「キュウウイイイイ!!」
再びブランの【ホーリーブレス】が魔龍ゾンビを包み込む。どうやらブランの攻撃が一番効果がありそうだ。と、なると俺は援護に回ったほうが良いな。悔しいがメインはブラン達に譲ろう。しかし・・・。
「グルルルル!」
気のせいか?魔龍ゾンビは確かに弱っていってるのに腐食部分がどんどん無くなっている気がする。これはもしかすると・・・もしかするかもな。
「アーニャ!ブラン!!その調子で攻撃を続けてくれ。俺は援護に回る!!」
「わかったのです!!」
「キュイイ!!」
こうして俺たちは嫌というほど魔龍ゾンビに【ホーリーブレス】をぶち込んでやった。
・・・
「・・・これは・・・どうなっているです?」
「キュイイ?」
今、俺たちの目の前にいるのは息も絶え絶えに倒れこんでいる元魔龍ゾンビ、もとい黒龍だった。
「多分聖なる力で浄化されたとか何とかだろう。元々アンデッドだったし、魔龍に堕ちたとか言ってたしな。」
【看破】でもそれがわかる。
【ブラックドラゴン Lv.35】
かつて魔龍と化したドラゴンが浄化され、本来の姿を取り戻した姿
「多分、これがこのエリアでの正しい攻略法なんだろう。浄化の力がなかったらお手上げだったけど俺たちは運が良かったな。さあ、アーニャ、ソイツを【眷属】に。」
「ええ?アルクさんが【眷属】にするのではないのですか?」
その問いに俺は首を振る。
「馬鹿を言うな。コイツをここまで弱らせた、もとい浄化したのは君とブランだろ。援護程度しかしてない俺がそんなあつかましい事は出来ん。」
「でも、でも・・・。」
煮え切らないアーニャ。気持ちはわかるだがな。
「早くしろ。復活してしまうぞ、ソイツ。」
倒れこんでいる黒龍を見てようやく決心したのか、
「・・・わかったのです!!【テイム】!!」
アーニャがそう叫ぶと黒龍が光に包まれてどんどん小さくなっていき、やがてバスケットボールより大きいぐらいの卵になった。
ふー、ようやく終わったか。
「アルクさん、ありがとうございます!!それでなんですけど・・・?」
「・・・なんだ?」
「キュイ?」
「あれ、なんだと思いますです?」
アーニャが指差したのは魔龍ゾンビが鎮座していた場所のさらにその奥だった。そこにあったのは・・・。
「・・・うそーん。」
そこにあったのは・・・扉だった。




