危険な香り
===転送===>観客席
「・・・ただいま」
「お帰りなさい・・・って勝ち残ったのにテンション低いですね、アルクさん」
戦いが終わり観客席に戻ってきた俺を出迎えてくれるアスターたち・・・どうやらアテナたちはまだ戻ってきてはいないようだ。
「どうしたのです? アルクさん。あの狐のお姉さんに勝って本選に出場できるのに嬉しくないのです?」
・・・レヴェーネに勝った・・・ねぇ。
俺は足元・・・服の裏にくっついていたそれを取った。
「・・・なんなのだ、それは?」
「・・・木の葉? さっきの戦いの中で攻撃に使われた物ですか? でもあれはスキルによる攻撃じゃあ・・・」
そう、それはレヴェーネが使っていたスキル・・・【切り葉の舞】・・・だっけ? の攻撃の中にあった木の葉だ。・・・見た目は。
「【鑑定】してみろ」
その木の葉に似たなにかを【鑑定】した結果がこれだ。
【呪開のブローチ(葉) ☆9】
呪いの力が込められたブローチ
身に着けると隠匿効果が無効化される他、レベルの低い相手からの看破でもステータスが開示されてしまう
「の、呪いのブローチなのです!?」
「・・・いつの間にこんなものを付けられたのだ?」
「・・・多分、俺が木の葉を素手で払ってダメージを受けた時だ。どうやってか分からんがあの時のどさくさでつけられたんだろう・・・俺も気が付いたのは試合が終わってからだ」
レヴェーネがどうにも奇妙なスキルを使っていた。【忍術】や【魔法】に似ているようで違うスキルを。
「それに関しては調べてみたのだ。【狐獣人】の【種族スキル】は【狐妖術】というスキルらしいのだ。試合で使っていたのがまさしくそれだったらしいのだ」
・・・まんま妖術だったか。確かに普通じゃなかったな。
「・・・っていうことは・・・つまりアルクさんのレベルやステータスがあの狐のお姉さん・・・えっとレヴェーネさんでしたっけ? にバレたってことですか?」
「レヴェーネというか・・・【ディアボロス】の連中全員に、かな」
レヴェーネが途中から霧を出して俺を誘い込む戦略を取ってきた。最後の爆発をみればそれも納得の作戦だったのだが・・・俺のステータスを確認したうえでの作戦だったと考えられる。おそらくレヴェーネのレベルは俺より低かったのだろう。つまり、自分よりレベルの高い相手用の切り札をちゃんと準備していた。それがレヴェーネの余裕に繋がっていたのだろう。
・・・もしくは俺のレベルやステータスを確認した上で、自分ではかなわないと判断し、のちに戦うかもしれない他のメンバーのために長期戦を仕掛けて少しでも情報を引き出そうとした?・・・さすがに考えすぎだ。
「ほうほう、それが【ディアボロス】の連中が集めている【魔導具】ってやつみたいだね」
「・・・ラング、いつの間に戻ってきた?」
いつの間にか戻ってきたラングの奴が、いつの間にか呪いのブローチを興味深げに見ていた。・・・いつの間に取られたんだろう。
「今しがた、だよ。・・・せっかく勝ってきたのに誰も出迎えてくれなくて悲しかったよ」
・・・そんなことは自分のクランに言え。・・・あれ? ロゼさん含め【インフォガルド】の連中、どこ行った?
「今日の試合ももうすぐ終わりそうだから皆、情報収集に散っていったよ・・・僕を置いて」
・・・お前、リーダーだよな? というか、お前が指示したんじゃないのか?
「まあ、それは置いといて・・・このレアリティの【魔導具】を使い捨てにするとは【ディアボロス】の連中も中々豪気だねぇ。・・・まあ、相手がアルクならそれも納得だけどね」
何でだよ。俺ってそんな危険人物認定されてんの?
「へぇ~、これって一応アクセサリ扱いなのね~ん。私も初めて見たわ~ん」
急に話に入り込んできたのは【アイゼンガルド】のアクセサリ担当のオカマ・・・ヒューナスだ。
ヒューナスも興味深く呪いのブローチを見つめている。効果はともかく、見た目はただの木の葉なんだがな。そんなしげしげと見て意味あるのか?
「・・・呪いの・・・っていう割にはちゃんと自分で取り外しできるのね~ん」
・・・そういえば呪いの装備によくある効果って、装備者にデメリットをもたらすのもそうだが、自分の意志では外すことができない、みたいな物もあるな。・・・危ねぇ・・・もし自分では外せないような装備だったらこれから先、対戦相手にスタータスが筒抜けになるところだった。
・・・ただ、少なくとも俺のレベルやステータスはレヴェーネには筒抜けだったんだよな。・・・装備は最小限だったし、アーテルもすぐにひっこめたから全部が全部見抜かれたわけじゃないが・・・やられたな。
きっと今頃、【ディアボロス】のメンバーにあんなことやこんなことをべらべらと・・・
「嫌やわ~、わっちはそんなことはしませんえ?」
と思ったら当のレヴェーネが近寄ってきた。
「・・・レヴェーネ、このブローチを取り返しに来たのか?」
このレアリティからして使い捨てにするのはもったいない、と考えてしまうのも無理はないが・・・
「いいえ~、そのブローチのこと、アルクはんは気付いていないと思って教えて差し上げようと思っとったんどすが・・・気付いていたとはさすがどすねぇ」
気付かんでか。確かに死角にこっそりと取り付けられていたから最初は気付かなかったが・・・冷静になれば違和感ぐらい感じるわい。
「とにかく、わっちは他人のステータスをペラペラと喋るようなことはしませんえ? なによりベルバアルはん以下、うちのクランはあくまで自分の実力で勝つことを至上としておりますからねぇ」
・・・フェア精神にのっとっている、と。それとも騎士道精神か? ・・・あれ?ベルバアルって【魔王】を目指してるんじゃなかったっけ?
「・・・そうかい。なら口止め料代わりにコイツは返しておく」
そう言ってラングの奴から取り返した呪いのブローチをレヴェーネに放り返す。・・・ええい、名残惜しそうな顔をするな、ラングにヒューナス。
「あら? よろしいんどすか? お近づきの印に差し上げますえ?」
ブローチをキャッチしつつも、こちらをからかうような微笑みで確認してくる。・・・こちらを翻弄してくるような挑発的な微笑み。・・・戦い方といい、ほんと狐みたいな性格してるな。
「遠慮しておく。アンタとの闘いは終わったが、【ディアボロス】との闘いが終わったわけではないからな」
なにより、こいつの雰囲気には危険な香りがプンプンする。
「そうどすか? 残念やわぁ。あんなに熱くしてくれはったのはベルバアルはん以来やったのに・・・」
・・・戦いで熱くなったって言ってんだよな、それ? なんで顔赤らめてんの?
「まあ、宜しおす。アルクはん、今度機会があったらもっともっとわっちを熱くしておくんなまし。その時にはわっちもご期待に応えられるように色々磨いておきますからねぇ」
・・・戦いのことだよね? 腕を磨いておくっていう意味だよね?
「それでは、アルクはんの活躍を期待しております。・・・ほな、また」
そう言ってレヴェーネは去っていった。
・・・うーん、いまいちアイツの性格がよくわからんな。・・・アイツの言葉、額面通りに信じても良いのだろうか・・・
ガシッ! ガシッ!
俺が悩んでいると誰かが両肩をつかんできた。
「・・・アルク?」
「・・・今のはどういうことですか?」
・・・何ということでしょう。そこにいたのはアテナさんとアルマさんじゃありませんか。・・・後ろから肩をつかまれてるから顔は見えないが。・・・見なくても誰だがははっきりと分かるな。
「詳しく、話を聞かせて貰えるわよね?」
「そうですね、是非、詳しく聞きたいですね」
・・・ちくしょう、レヴェーネの奴、二人が戻ってきたのがわかってわざとあんな言い方しやがったな!
それからしばらくの間、俺は詳しく説明を強要されるのであった。
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