悪霊の正体
===移動中===>廃屋敷 二階
二階は一階以上にボロボロだった。正直床が抜けそうで大分怖い。これ、一階に落ちたら死亡判定になるのだろうか?いずれにしろ行くしかないんだろうな。
「しかし、こう暗くっちゃなあ。」
「【ライトボール】」
アテナの手のひらから文字通り光の玉が出てきた。そういえば光属性の魔法があったんだっけ。雰囲気に呑まれて忘れてた。
「これで見えるでしょ。行きましょう。」
そういってアテナは先頭に・・・行かなかった。ハイハイ、判ってますよ。俺が先頭になって階段近くの部屋に入った。
どうやら二階の部屋は一階の小分けされた部屋を繋げたような大部屋になっているようだった。そして今入った広い部屋の床には無数の本が散乱していた。どうやらここは書庫のようだ。
「床が本に埋め尽くされてて入れないぞ。」
「ほとんどの本がボロボロですね。長い間放置されて酷い状態のようです。」
「誰かが隠れるにはある意味丁度いい場所だけどこの中に入るってなったら大変よ?まずこの本の大群をどうにかしないと。」
「んんー?・・・部屋はまだあるだろうし、後回しにするか、もしくは誰かここに残って・・・」
「「後回しにしましょう!!」」
・・・やれやれ。俺たちは書庫を後回しにして奥の部屋へと向かった。場所的に考えて食堂の真上の部屋だ。そこで俺たちが見たのは衝撃の光景だった。
「・・・・・!?」
「これは・・・どういうことなんだ?」
その部屋は一階と同じく広い大部屋になっていた。ただし、そこにあったのはテーブルやイスなんかではない。人だ。30人近い人たちが床で横になっていた。素早く近くにいた人の呼吸を確認する。息をしていない。死んでいるのか?しかし・・・
「こっちの人も息をしていないわ!」「こっちもです。」
どうやら全員が呼吸せずに横たわっているようだ。一見すると死んでいるように見えるが何かおかしい。
「こっちの男女はパーティ服を着ているな。こっちは執事にメイド、コック・・・、この館の住人か?こっちの男性はスーツを着ているな。こっちは作業服、こっちは高校生か?」
確かイベントの招待状に書かれていたのは、館の住人、新たに館を購入した者、解体業者、肝試しに来た若者。ここにいるヤツラは消えたといわれる連中に該当する。しかし、どの人物も年代がバラバラのはずだ。なのに皆眠っているかのようにそのままだ。グロイ話だが腐ったり、白骨化した様子も無い。それにさっき触ったとき、体温をまるで感じなかった。暖かいでも冷たいでもなく感じない。まるでそう・・・
「見てください、アルクさん。」
アルマが指差す先には振り子時計があった。時間は11:50を指している。ただし秒針が動いていない。そして振り子が不自然にナナメに傾いたまま止まっている。
「まるで時間が止まっているみたいだな。ここにいる人たちもそうだが。」
しかしなぜだ?行方不明の連中がこんなにあっさり見つかるなんて。警察や冒険者でも見つけられなかったんじゃなかったのか?
・・・待てよ?そういえばこの屋敷に入ってから時計、というか時間を示す物ははじめて見たな。一階のどの部屋にも時計もカレンダーも無かった。俺がゆっくり振り子時計に近づいたその時!
「アルクさん!!」
アルマの叫び声に咄嗟に振り向く。部屋の中央にそれは、いやその子はいた。10歳にも満たないであろう可愛らしいドレスを着た黒髪の女の子・・・だと思われる。何で思うのかというと・・・顔が見えないからだ。暗いからとかそんなもんじゃない。顔の部分が真っ黒に塗りつぶされていたのだ。
「キィィイイアアアアアアア!!!」
この世の者とは思えない叫び声を上げる女の子(仮)。同時に俺たちは見えない力で吹っ飛ばされた。
「うおっ!」「きゃあ!!」「わわわっ!!」
べヒーモス戦のときの衝撃波のようなものだろうか?それともサイコキネシスとか?どちらにせよ結構効いたぜ。
「うう、とにかくあの子を浄化すれば良いのよね!!だったら浄化魔法で!!」
アテナが果敢に悪霊(仮)に立ち向かおうとしたとき、アナウンスが流れる。
『強力な悪霊の力によりスキルとアイテムの使用が封印されました。』
「えええ!うそでしょ!!」
マジかよ!よりにもよってこんなピンチなときに!
「撤退だ!!一階に、いや屋敷から一旦出るぞ。」
こうして俺たちは一目散に敗走したのだった。おお、なんと情けない。
===移動中===>廃屋敷 玄関前
俺たちは屋敷の前まで何とか逃げ延びていた。というかあの悪霊の女の子(仮)はそもそも追いかけてこなかった。もしかしたらあの子はあの部屋から出られないのかもしれない。外から屋敷の二階の窓を見てみるが真っ暗で何も見えなかった。
とりあえず情報を整理しよう。
まず、あの女の子(仮)が、日記に書かれていたお嬢様で悪霊なのは間違いない。
問題はなぜあのお嬢様だけが悪霊になっているのか。他の連中に何があったのか、だ。コックの日記から判断するにお嬢様の誕生日パーティがあった日になにかがあったと思われるが・・・
残る手がかりとして考えられるのは二階の書庫と、あの悪霊の少女がいた部屋の奥にある部屋、多分、旦那さんや奥さん、そしてあの子自身の部屋だろう。
正直、一番重要そうな部屋があの子の部屋なんだがあの悪霊の少女を突破して部屋にいけるか?いや無理だろう。サイコキネシスみたいなもので吹っ飛ばされたしスキルもアイテムも使えないんじゃ話にならない。
・・・外からよじ登ってみるか?本当に泥棒みたいだけど。それにスキルなしでいけるか?アテナは空が飛べるから良いとして・・・いや一人では行きたがらないだろうな。
クエスト内容は屋敷の謎を解いて悪霊を浄化だった。悪霊の浄化はわかる。屋敷の謎っていうのはなんだ?
「あ、魔法が使えるようになってる。」
見るとアテナが光の玉を手のひらから出していた。どうやらスキルとアイテムが封印されるのはあの悪霊の前だけらしい。
「アルクさん、これからどうしましょうか?やはりあの書庫を調べるべきでしょうか?」
「そうだな、今行けるのはあそこ・・・?」
じっと屋敷を見る。やはり何か違和感を感じる。なんだ?何かが変わってる?ボロボロの外見、ベランダ、噴水・・・!?
「なあ、あの噴水、俺たちが最初来たとき雨水が溜まっていたよな。」
「そうだったけ?・・・っていうか今も溜まってるじゃない?」
違う、そうじゃない。
「さっき、裏口から外に出たとき、あの噴水は干からびていたはずなんだ。」
「ええ?・・・見間違いじゃない?」
「いえ、私も見ていました。確かにあの噴水には水なんてありませんでした。」
「・・・もう一度、一階を調べよう。」
二人を連れて玄関から屋敷に入り、コの字型の屋敷を時計回りに周って、裏口から出る。
「うそ・・・」
「やっぱりか。」
裏口から出た直後に見た噴水は確かに干からびていて、雨水など溜まっていなった。
「どういうことでしょう?」
それは俺が聞きたい。だがわかったこともある。変わったのは噴水だけじゃない。屋敷やベランダを良く見ると先ほどよりも朽ち果てているのがわかる。
今、俺たちが屋敷の中を一周したのに10分と掛かっていない。しかし、外からみる屋敷の様子は数ヶ月は経過したかのように感じた。
これはどういうことか。そういえばさっきの階段も最初見たときと様子が変わっていた。
俺は再び玄関から入り階段を確かめる。
・・・さっきより酷くなってる。
もしかしてこの屋敷では時間の経過が早い?俺たちの数分がこの屋敷では数ヶ月みたいに時間が早く流れている?
いや待て、悪霊から逃げるために玄関から出た後の外から見た屋敷の様子は最初にみた屋敷の様子とほとんど同じに見えた。もしかして時間が早く進むだけじゃなく逆に戻るタイミングがある?
トリガーはなんだ?
・・・!?
「二人とも、悪いがついてきてくれ。」
今度は裏口から屋敷に入り、反時計周りに屋敷の中を進みながら玄関から外に出た。
「・・・戻った?」
そう、噴水には再び雨水が溜まっていた。それに屋敷の様子もマシな状態に戻っているように見える。
「一体、どういうことなんですか?アルク。」
「すまん、それに答える前に、もう一回だけ付き合ってくれ。」
再び、裏口から屋敷に入り反時計周りに進む。今度は外に出ず、階段を調べる。
「やっぱりだ。階段の腐った部分が小さくなってる。」
後ろをついてきた二人も驚いている。
「何となくわかったぜ、この屋敷の謎ってヤツが。」
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