科学は妖術に勝てるのか
さてどうしたものか。
あの厄介な防御スキルの風・・・あれが使われる前に攻撃するか、防御を突き破るほどの攻撃を加えるしかないだろうが・・・前者の場合は【俊天の疾走】で特攻、後者は俺の持つ全装備を解禁して、になるだろうな。
うーん・・・あんまり躊躇している余裕はないんだが・・・どうもおかしい。
レヴェーネのあの余裕はなんだ?
俺の相手なんて余裕ってことか、それとも・・・
「どういたしやした? 来ないんならこっちから行きますえ? 【切り葉の舞】」
レヴェーネが踊り始めると何処からか木の葉が・・・しかも風に乗るように宙を舞いながら近づいてくる。
「これは・・・うっ!」
木の葉の一枚は手で払うとダメージを受けた。・・・どうやら切れる木の葉らしい。
「【ウィンドウォール】を【魔法付加】!【結晶の障壁】!!」
風属性を付加した結晶の壁で防ぐ。風の壁との合わせ技のおかげで木の葉は壁に当たることなく散らされていく。やはり予想通りだ。あの木の葉、刃のように鋭いみたいだが、風に乗って向かってくるだけだからより強力な風で押し返すことができるみたいだ。【結晶の障壁】で物理的にも防ぐことができるみたいだしな。・・・結晶の壁が傷だらけになっているが。
「ほほう、さすがはアルクはん、即座に対処法を見出すなんてなぁ・・・【狐火】!」
おっと結晶の壁が溶かされる前に後退、後退。
・・・むぅ・・・距離ができてしまったな。これがレヴェーネの仕掛けだとすると・・・
「【幻惑の霧】」
今度はレヴェーネの周囲に霧が・・・レヴェーネの姿をすっぽり覆い隠してしまった。
「何のつもりだ・・・おっと!?」
霧の中から紫の火の玉が・・・自分の身を隠しつつ攻撃してくるつもりか?
「【火遁:乱れ花火】!!」
お返しとばかりにこちらも火の玉を霧の中に送り出す。・・・相手の姿が見えないから照準も下手くれもないが・・・やはり当たらなかったのか霧の中からは攻撃が放たれてくる。・・・向こうからはこっちの姿が見えるのか正確に俺の狙ってくる。
「【サイクロンストーム】!!」
とりあえず霧を吹き飛ばそうと【風魔法】で攻撃するが・・・
「・・・効かない?」
いくら【風魔法】を使ってもレヴェーネを覆う霧は不自然なほどに動くことはなかった。・・・ただの霧じゃないってことか。
うーむ、やりにくい。真正面から向かってくるタイプじゃなく相手を翻弄しながら戦うタイプか。・・・意外と新鮮だな。
さてどうするか・・・幻惑には科学で対抗するか。
【閃槍アーディボルグ】をしまい、取り出したのは【グランディスマグナム】、そして・・・
「行け、【ビートル君改】!」
偵察メカの【ビートル君改】だ。数台のビートル君を霧の中に突入させる。
さてはて【ビートル君改】はレヴェーネを見つけられるかな?
ピコンッピコンッ
お、【ビートル君】から反応が。・・・見つけたみたいだな。
「【グランディスマグナム】ホーミングエナジーショット!!」
これぞアヴァンが【グランディスマグナム】と【ビートル君改】に追加した新機能! 【ビートル君改】の反応を頼りに追尾効果のあるエナジーショットを放つことができるのだ!!
「キャア!!」
お、当たった? ではダメ押しに連射、連射、連射。
「え? そんな・・・キャアアア!!」
・・・霧の中から悲鳴が聞こえる。やったぞアヴァン、効果は抜群だ!
「この調子で・・・おわぁ!!」
霧の中からなんか出てきた!
・・・これは・・・水の玉? 霧の中から水の玉を乱射しているのか?
水の玉をよけながら俺もエナジー弾を放つ。・・・相手が霧の中だからいまいち効果がわからないな。とは言え、確実に当たってるはずだが・・・
と、動き回っていると地面にあった水たまりを踏んでしまった。瞬間。
「いてっ!」
水たまりを踏んだ足からビリビリ衝撃が!これは地面に落ちた水の玉か?・・・まさか雷属性? 雷属性が負荷された水で感電させられた?
よくみるとそこら中に水たまりができている。まさかこれを狙って?
「ホホホホホ! どうどすか? わっちの【電水の玉】は!?・・・アイタッ!!」
・・・霧の中から高笑いが聞こえた。・・・ついでに悲鳴も。どうやらこっちの弾も当たったらしい。
しかしどうもさっきからチマチマ攻撃してくるな。何か狙ってる? それとも・・・誘いか? 俺が霧の中に入ってくるのを待ってる?
とはいえ、このままじゃジリ貧だ。トーナメントのルール上、制限時間内に決着がつかなかった場合、HPが多い方が勝ち残る。向こうのダメージ量が不明な以上俺が負ける可能性もあるわけだ。・・・まさかそれ狙いか?
かといって外からの攻撃も・・・レヴェーネの正確な位置がわからない以上、ホーミングに頼るしかない。・・・そしてホーミング弾は大した威力はないのだ。
おそらく一番の対抗策はあの霧を中のレヴェーネごと打ち倒せるだけの大規模攻撃。だが今の俺には・・・どうしたものか。
・・・ここは覚悟を決めるか。
虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうしな。中にいるのは虎じゃなく狐だけど。
装備OK! 覚悟OK! いざ行かん未踏の霧へ!!
俺はゆっくり、慎重に霧の中に歩を進めていく。
全身が霧の中に入ったところで・・・
「ホホホホホ! 引っ掛かりましたえ!!【弧連霧爆】!!!」
声が聞こえたと同時に目の前が光に包まれた。
・・・
霧全体が大爆発を起こし舞台上が煙に包まれる。
その大爆発を起こした張本人であるレヴェーネはと言うと・・・空中へ避難していた。
「・・・ふぅ、何とか上手くいったようどすが・・・これで決まりましたかえ?」
レヴェーネは大技が決まったにも関わらず警戒を怠っていなかった。
爆煙が立ち込める中を注意深く観察している。
・・・うん、その判断は正しい。
だがちょっと遅かったな。
「!?」
レヴェーネが驚愕の表情で俺を見ている。
俺が無傷なのに驚いているんだろう。
俺の周囲には【ビートル君改】が数体、滞空している。
そして【ビートル君改】たちが張ったバリアが俺の全身を包んでいた。
【ビートル君改】の新機能の一つだ。
【ビートル君改】は単体で【グランディスエナジーシールド】を張ることができる。空中を自在に飛び回る盾といった感じだ。
さらに【ビートル君改】が数体協力することで360度をカバーするバリア・・・【グランディスエナジーバリア】を張ることができるようになるのだ!
霧の中に足を踏み入れると同時にレヴェーネの周囲にいた【ビートル君改】たちに戻ってくよう指示しておいたのが功を奏したようだな。
俺はバリアを解き、【グランディスマグナム】の銃口をレヴェーネに向ける。防御の隙は与えない。
「・・・化かしあいは俺の勝ちのようだな。【グランディスマグナム】バスターモード・・・シュート!!」
今度は【グランディスマグナム】の放つ閃光の中にレヴェーネの姿が消えていった。
『勝者!! アルク!!!』
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