狐は妖艶に笑う
クラン【ディアボロス】のメンバーの一人、レヴェーネ。
以前、少しだけ一緒に戦ったことがある。・・・が、それは結構前のことだ。今の彼女の実力は・・・わからん。
「・・・まさか、ここで知り合いに当たるとはな」
「まあ、くじ運しだいではこういうこともありますんでしょうねぇ~」
・・・まあ、確かにランダムで選出されるならそういうこともあるとは思ってたが・・・てっきり運営の陰謀で対戦相手が選ばれてるのかと・・・いや、この状況がまさにそうなのか?
『バトル開始まで・・・9・・・8・・・』
「あ、そろそろ始まりそうでありんす・・・それでは~」
そう言ってレヴェーネが離れていく。・・・出来ればこっちを睨んでいる他の連中を一緒にやっつけてほしいんだが?
『3・・・2・・・1・・・試合開始!!』
試合が始まった。
と、同時に・・・
「撃てぇー!!」
ドドドドドドド!!
銃を持った奴らが一斉に撃ち始めた・・・俺を。
『おーっと、第三回戦第一試合! 開始早々アルク選手を滅多撃ちだー!!』
『やっぱり第一回戦、第二回戦と目立ち過ぎたんですかねー?』
「やっぱりかよ!【スピンガード】!!」
【閃槍アーディボルグ】を取り出し、銃弾を防御する。ちくしょー! どいつもこいつも俺ばっかり狙いやがって!!
「あらあら~・・・アルクはんは人気者どすなぁ~」
・・・レヴェーネは離れた場所で悠々とそんな俺を眺めている。なんであっちは狙われないんだ!
そんな理不尽な状況にさらに追い打ちをかけるように・・・
「「「「【限定召喚】!!」」」」
銃を持ってない奴らが【眷属】を召喚したー! でっかい犬やら猫やらがわらわらと出てきたー!!
召喚された【眷属】たちは銃撃を回り込むように俺ににじり寄ってくる。・・・やっぱり狙いは俺かよ!?
というか、なんなのこの連携? アイツら事前の打ち合わせでもしてたのか!?
「アルクはんがわっちと話してる間になにやら相談しておりましたえ?」
・・・レヴェーネー! お前、敵の回し者かー!! ・・・あ、元々敵だった。
『アルク選手絶体絶命の大ピンチかー!!』
・・・確かにこのままじゃまずいな。このまま何もせずフルボッコにされるなんて嫌だぞ!!(特大のブーメラン)
「【エナジーフェザーマント】!ウィングモード!!」
アヴァン作の【エナジーフェザーマント】の翼で空中へ避難する。
『おおー!アルク選手が飛んだー!!』
・・・司会者、いちいち解説いらないから、他の試合に行ってあげて。
「ひるむな! 撃てぇー!!」
おっと危ない。さすがに三回戦まで勝ち残ってくるような連中だな。動揺することなく冷静に攻撃してくる・・・だが連中の中に空を飛べる奴はいないようだな。
これは千載一遇のチャンス!!
「頑張ってくださいなぁ、アルクはん」
・・・普通にぷかぷか浮いているレヴェーネがおる。
「・・・何やってんのお前? お前も試合中だよね」
「嫌やわぁ、わっちはこういう野蛮な戦いかたは嫌いおす」
・・・ようするに俺が他の連中を倒すのを待ってるってことか・・・良い根性してやがる。
だが邪魔をしてこないなら好都合・・・ご期待通りに動きましょうか!!
「【限定召喚】! 来い! アーテル!!」
「クルー♪」
俺が召喚したのは【幼体】のアーテルだ。
『キャー! 可愛いー!!』
『アルク選手も【眷属】を召喚したー! しかしあのモンスターは・・・ペガサス?』
『【天龍馬】というレアな種族ですね』
・・・おおーい、室長さーん。余計なことをばらさないでもらえますかねぇ。
・・・まあ良いか。【天龍馬】のアーテルのお披露目だ。
「派手にやれ、アーテル! 【レーザーダイブ】!!」
「クルー!!!」
【幼体】のままのアーテルが光に包まれ突進していく。
「「「「うわぁあああ!!」」」」
「「「「ひぎゃあああ!!」」」」
高速で突撃していくアーテルを避けることができず、次々と倒されていく相手プレイヤーおよびその【眷属】たち。アーテルの攻撃に耐えられず次々と光となって消えてく。
「へぇ~・・・あんなちっこいままなのにやりますなぁ」
そう、レベルがカンストしたアーテルは【幼体】のままでも激強になったのだ!!
「クルー♪」
「お、終わったか。お疲れ、アーテル」
俺とレヴェーネ以外を倒し終わったアーテルが俺の胸に突進してくる。勿論攻撃ではない・・・ちょっと痛かったが。アーテルの頭をよしよしとなでながらゆっくりと地面に降り立つ。
同時に俺に相対するように降り立つレヴェーネ。
・・・ここからが本番か。
「ご苦労だったな。戻って休んでくれ、アーテル」
「クルッ!!」
アーテルを送還し、レヴェーネに【閃槍アーディボルグ】を構える。
「おや? あの可愛らしい子と一緒に戦わないんどすか?」
「・・・勿論、戦うさ。必要になったらな」
・・・現状、レヴェーネの力は未知数だ。そしてベルバアルのいる【ディアボロス】に所属している以上、そう簡単に倒せるとも思えない。
相手が一人である以上、まずは俺一人で様子を見た方が良い。
「ほな私も戦わせてもらいますわぁ」
レヴェーネが取り出したのは・・・扇子? いや鉄扇か。両手にひとつずつ鉄扇を広げてこちらに微笑みかけている。その表情は余裕の表れか、それとも・・・
「まずはこちらから行かせてもらいますわぁ。【狐火】!!」
レヴェーネが鉄扇を振るうとこちらに無数の紫色の火の玉が飛んでくる。
・・・あれはたしか前にも見たこたことがある。
「【結晶の障壁】!!」
俺は目の前に結晶の壁を作り出し防御を固める。
火の玉が結晶の壁に当たると・・・壁がドロドロに溶けだした。
やっぱりそうか。以前見た時もそうだった。・・・あの火の玉を受けるのはまずいか。
俺は結晶の壁が火の玉を防いでいる間に回り込んでレヴェーネに向かう。
「シッ!!」
【閃槍アーディボルグ】を突き出す。
ガキンッ!!
しかし、それはレヴェーネの鉄扇で阻まれる。
・・・受け止められたか。・・・あの鉄扇も中々強力な武器のようだ。
こりゃあ、油断してると負けるな。
「考え事ですかぇ? 【狐風舞】!」
「うぉ!?」
避ける暇もなく吹き飛ばされた。ダメージは無いようだが・・・どうも妙なスキルを使うな、アイツ。
「【ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」
吹き飛ばされながらも無数の拳を飛ばす。
「無駄どすえ。この風は防御スキル。あらゆる攻撃を防ぐ風壁でありんす。アルクはんのパンチもわっちには届きおまへん」
俺の攻撃は・・・その言葉の通りレヴェーネに届く前にかき消えてしまった。
レヴェーネは妖艶に笑っている。
・・・背筋がゾクゾクしてきたぜい。
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