予選第三回戦 第一試合
『・・・今の試合で予選第二回戦は全て終了しました。一時間の休憩の後、第三回戦を開始します!』
『第三回戦で今日は終わりだから皆頑張ってね~!』
各試合を見ているうちに第二回戦が終わったようだ。参加人数が多いから仕方が無いんだろうが、何試合も平行して行われてるのに結構時間がかかるな。
ぶっちゃけ戦ってる時間より待ち時間、見てる時間のほうが長い。
「・・・って言ってるけど、その時間もちゃんと満喫してるじゃない」
アテナが俺が手に持っている食べ物を見ながら言った。
ちなみに俺が持っているのは季節感ガン無視のフルーツが大量に入ったクレープである。リンゴ、オレンジ、バナナは勿論のこと、キウイやカキ、スイカにメロン、ナシにブドウ、イチゴにサクランボも・・・いまだかつてここまで旬を無視したフルーツの盛り合わせを見たことが無い。しかも程よい甘さのクリームが絡み合って絶品である。
「出店の定番も良いんだが、このクレープみたいにゲームの中でしか味わえないような組み合わせとかアイデア料理なんかもあって中々面白いんだよな」
試合を見てるのも楽しいが、出店を見て回るのも面白い。美味しい物が売ってるのでなおさらだ。
「どれもこれも美味いっすよね!!」
アシュラがかぶりついているのは・・・10段肉バーガーだ。・・・確かにマンガとかでしか見たことが無いな、そんなバーガー。ちなみに間に挟まっている肉は牛、豚、鶏、羊、その他諸々の肉の盛り合わせらしい。・・・その他の部分が非常に気になるんだが、何の肉なんだ? そして何故、アシュラは何の躊躇も無くかぶりつけるんだ? 本人の表情からして美味しいようだから大丈夫なんだろうが・・・
「確かに見てるだけでも楽しいですね」
アルマが上品に食べているのは・・・アイスクリームだ。ただし、普通に容器に入ったタイプやコーンに乗っかってるタイプではなく、薄くスライスされたポテトチップスのようなアイスだ。屋外で食ってたら一瞬で溶け出しそうだが、そこはゲーム内の謎仕様でまったく溶けないんだそうだ。パリパリの食感と冷たくて甘い味が最高らしい。
「食べ物だけじゃなくて面白いおもちゃとかも有りますしね」
アスターが持っているのは一見するとただの野球ボールだ。ただし、一旦空中に放り投げると見えない壁にでも当たったがごとくあっち行ったりこっち行ったりと魔球みたいな不規則な動きをする。さっきこのボールでキャッチボールをしようとしたちびっ子達がボールを追っかけてあっち行ったりこっち行ったり右往左往しているのを見て少し笑ってしまった。
「うむ、なかなか良く出来ている物が多いのだ」
アヴァンが持っているのは掌サイズの台座だ。スイッチを入れると台座の上にミニサイズの自分自身の姿、つまりプレイヤーのアバターが出てくる。・・・別にナルシストが自分を見て楽しむための物じゃないぞ。そういう用途もあるのかもしれないが。実はこれ、自分の持っている装備や装飾を自由に着せ替えできるらしい。鏡などを使っても自分で確認できない所まで確認できるということでファッション的な意味でも人気らしい。
「面白い物が一杯なのです!!」
アーニャが買ってきたのは・・・食器だった。他に比べると地味だと思うこと無かれ。常に温度が一定になるカップだったり、ゴムのように広がっていく皿だったり、どんな小さい物でも一発で掴む事が出来る箸だったり、ナイフでもスプーンでもフォークでも好きな形に粘土のようにグニグニ変えられる謎物質だったり、食器というか異次元の便利グッズのような物ばかりだった。・・・どうやって製作したのか非常に気になる。特に最後。
「確かにねぇ・・・それで? 休憩になったけどアルクはどうするの?」
アテナは手に持った虹色の綿アメを食べながら聞いてきた。・・・それ何味なんだ?
「ん? さっきと一緒さ。出店も全部回れてないし、というか回りきれる気がしないが・・・まあ、時間の許す限り回って、お土産をアーテルたちに届けるさ」
なんせトーナメントは三日間あるとはいえ、試合に参加している俺たちの時間は限られている。勝ち残れれば明日以降はもっと時間が取れないだろう。となると今のうちに楽しむのが吉だ。・・・まあ、負けたならそうでもないんだが・・・おっと、ネガティブな事は考えない。
「そう・・・それじゃあ、さっきと同じって事で」
そう言って俺たちは再び自由行動となった。
・・・
で、戻ってくるわけだが・・・
『貴方が参加する試合は予選第三回戦 第一試合です。転送開始まで07:45・・・』
・・・もはやお約束というか予定調和な感じがするのでもう誰も突っ込まない。・・・もしかして俺、運営に目を付けられてるのか?
他にもアテナは第二試合、アルマは第三試合、アシュラは第五試合、ラングは第七試合、ガットは第九試合だそうだ。・・・どうやら予選のうちにコイツらと当たる事はなくなったようだ。・・・ほっとしたような残念なような・・・できれば勝ち残って全員と戦いたい所だ。
「あとはこの第三回戦を勝ち残れば予選突破っすね! 大丈夫っす!! きっと皆予選突破できるっすよ!!」
・・・アシュラよ。お前フラグ立てるの好きだな。・・・いや、こいつは何も考えていないただの激励だな。
「・・・そうだな。それじゃあ、皆武運を祈る」
その激励に乗っかって全員に声をかけるとそれぞれ転送の光に包まれていった。
===転送===>予選第三回戦 第一試合会場
本日三回目となる石畳の舞台に到着っと。
『さあ、まもなく予選第三回戦です! この戦いに勝ち残った一人だけが明日の本選に駒を進める事ができます!!』
『一回戦、二回戦ときて強い人は大分絞り込まれてきた感じですね~』
『まあ、そのための予選ですからね。負けてしまった方も今回の経験を生かして次回以降のイベントに望んでいただければと思います』
・・・強い奴が絞り込まれてきたという事は、つまり試合が進めば進むほど強い奴が出てくるということでもある。要するに二回戦以上に強いヤツラが集まってると思ったほうが良いわけだ。
さて、その第三回戦の相手は・・・ふむ、今回も皆バラバラだな。・・・だが半分くらいの奴は銃・・・いや【兵器】を持ってるな。残りは・・・素手だったり短剣や杖を持ってるな。一見すると素人冒険者って感じだが・・・ここまで勝ち残ってるのを見るとそんなわけ無いよな。
・・・どうでも良いがなんで皆、俺を凝視してるんだろうか? 俺ってそんなに警戒されるような事をしたっけ?
・・・ん? 人数が・・・俺を入れて9人しかいない? あと最低一人はいるはずだが・・・
「あら~・・・貴方さんと当たってしまいましたか~・・・アルクはん」
その聞き覚えのある声に俺は振り返った。
そこにいたのは・・・
「お手柔らかにお願いしますわ~」
クラン【ディアボロス】のメンバー、【狐獣人】のレヴェーネだった。
他の連中と違い、妖艶な・・・そして余裕のある微笑みを浮かべながら俺に話しかけてきた。
・・・どうやら予選の最後で当たりを引いてしまったらしい。・・・いや、この場合は外れ、か?
どっちにしろ、この試合は簡単には行かなくなったようだ。
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