蝶のように舞い、蜂のようにぶっ刺す
『おおーっとアルク選手、ここで武器を取り出したぁー!!』
『しかも中々上等な装備ですね』
・・・おおーい、司会者さんたち? こっちの試合ばっかり見てないで他所の試合も実況してあげて?
「お、おい! アイツ、槍を取り出したぞ! 【格闘術】だけじゃないのか!?」
「今の【魔法】を見たでしょ? 他にもあると思った方が良いわ!」
おっと騎士の男と魔法使いの女が何やら相談してる・・・パーティメンバーかな? ・・・いや、あの二人のマントとローブに描かれてるマーク・・・【双星騎士団】のものか。となるとクランの仲間か。
「・・・」
くノ一の方は話に加わっていない。二人とは無関係のプレイヤーみたいだな。・・・くノ一は変わらず俺を見ながら忍者刀を構えてる。めっちゃ警戒されてるな。
「とにかくあの人を何とかしないとどうしようもないわ!!」
「・・・ここは共闘すべきか・・・おい! そこのくノ一もそれで良いか!?」
「・・・」
くノ一は目線を俺に向けたままコクリと頷いた。臨機応変に動けるのは素晴らしい事だ。問題は俺に話が筒抜けなことだが。
「いくわよ! 【力強化】!【速度強化】!」
魔法使いが騎士とくノ一に【魔法】をかけた。【強化】をかけて底上げしてきたか・・・さてどれくらいのもんかな。
「【スピードスラッシュ】!!」
「シッ!!」
騎士が振り下ろしてきた剣とくノ一の忍者刀を【閃槍アーディボルグ】で受け止める。
・・・むう、二人そろって正面から来るのはマイナスだな。二人で攻めてくるんだからここは挟み撃ちで来ないと。・・・即席じゃ厳しいかな。
「【ウィンドカッター】!」
「おっと!!」
騎士とくノ一を力ずくで押し返し、魔法使いの【魔法】を避ける。
「【火遁:乱れ花火】!!」
お、くノ一さん、てっきり寡黙キャラで行くのかと思ったら、技名はちゃんと言うのね。・・・ただ残念。そのスキルは俺も良くしってるんだ。
「【スピンガード】」
俺は【閃槍アーディボルグ】を回転させ、迫りくる火の玉たちをすべて打ち払う。・・・消耗度を気にしなくても良いから武器で防御スキルを使っても何ら問題ないのだ。
「でぇい!【スピードスラッシュ】!!」
「【正眼突き】!!」
おっと今度は挟み撃ちで来たな。俺は背後を取られないよう気を配りながら時に攻撃を避け、時に槍で攻撃を受け止める。
・・・騎士の方は良く剣の練習をしているな。だが太刀筋が正直すぎる。それに力任せだ。先ほどからスピード重視の【剣術】スキルを使ってくるのは、それをカバーする為か。
逆にくノ一の方は刀の使い方が甘い。スピードこそあるが武器や術の使い方がまだまだだ。多分、術メインにしたほうが本人にはあっていると思うが・・・まあ、人のプレイスタイルに口出しはすまい。
「【アクアストリーム】!!」
「おっと!!」
騎士とくノ一の攻撃の合間を縫って【魔法】を撃ってくる魔法使いだが・・・初級の【魔法】ばかりだな。この試合はPvP仕様のバトルロイヤルだ。パーティを組めない以上フレンドリーファイヤ無効は適用されない。となると味方を巻き込む【魔法】は撃てないのか・・・もしくは初級以上の【魔法】を持っていないのか。
・・・どちらにせよ、これ以上見るべき物はなさそうだ。
「それ!」
「!?」
俺は【閃槍アーディボルグ】を騎士の男に突き立てる。男は盾でガードしようとするが・・・うん、見事に突き刺さっているな。どうやらあの盾の防御力より【閃槍アーディボルグ】の攻撃力の方が上のようだ。
「くそっ!!」
騎士は盾を捨てて引いた。・・・今のは良い判断だな。【閃槍アーディボルグ】の槍先に盾が刺さったままになってしまったが。
「フッ!!」
そんな俺の隙を逃がさないように背後からくノ一が迫ってくる。・・・が。
「それは誘いの隙だ。【ソニック・ラッシュキック】!!」
「くあっ!?」
高速連続キックでくノ一を撃退する。よし、二人と距離が出来たな。
俺は【閃槍アーディボルグ】の槍先から盾を外し、構える。・・・標的は離れた場所に居る魔法使い!
「【ウィンドカッター】を【魔法付加】! 【スピアディスチャージ】!!」
【閃槍アーディボルグ】に風の刃を付加し、槍投げのように投げる。
「【ランドウォール】!!・・・きゃあ!?」
魔法使いは土の壁を出して防ごうとしたが・・・残念。【閃槍アーディボルグ】は土の壁を綺麗に貫通し、魔法使いに突き刺さった。・・・土の壁で防ごうとすることは予測できたからな。だから切れ味抜群の【ウィンドカッター】を付加したんだが・・・ここは俺の読み勝ちかな。魔法使いの女性が光となって消えていく。
「くそおおお!! 【ハイスピードスラッシュ】!!」
おっと、魔法使いがやられたのを見た騎士の男が斬りかかってきた。なんだ、【中級剣術】も使えるんじゃないか。出し惜しみせずに最初から使ってれば良かったのに・・・って俺が言えた義理じゃないよな。
「・・・【俊天の疾走】」
俺は一瞬だけ加速し・・・
パシィ!!
「・・・白刃取り・・・だと!?」
騎士の男は俺が白刃取りで剣を受け止めたのに驚いたようだ。・・・だが、その隙は致命的だぞ。
「【サンダーボルト】!!」
「ぐわあああああ!!」
鎧を着込んだこの騎士にも効くように【雷魔法】の電撃をたっぷり浴びせてやった。騎士の男も光となって消えていく。・・・鎧、こげちゃってるけど大丈夫だよな?
「ちぃ! 【多重分身の術】!!」
おっとくノ一のお姉さんはまだリタイアしてなかったか。そういえばリタイアの光は確認してなかった。反省。
それはともかく【多重分身の術】か・・・くノ一のお姉さんが8人に増えたな。眼福だが・・・7人は幻、本体は一人だけ。そして【分身の術】は俺も使えるからよく知ってる。分身には影が無い。
「行くぞ!!」
しかし、くノ一たちは高速でバラバラかつ不規則に動き回る。・・・なるほど、高速で動き回って影を特定させないつもりか。しかも舞台上はさっきの魔法使いがばらまいた水やら土やらが散乱している。影の特定をしにくくするためにここまで計算していたのなら・・・やるな、くノ一のお姉さん。
「よっ! ほっ! 【バックステップ】!」
俺は迫り来る8人のくノ一の攻撃を律儀に全て避ける、避ける、避ける。・・・忍者刀でしか攻撃してこないのは、術を使うと本体がばれるからか。意外と使い道が絞られるからな、【分身の術】は。
「どうした! 避けるばかりか!!」
俺に攻撃が当たらない事に焦れたのか、くノ一のお姉さんが挑発してくる。・・・のだが、くノ一ならもっとクールにいこうぜ。
「・・・別に避けてばかりじゃないさ」
俺は手に持った【閃槍アーディボルグ】を構える。
くノ一のお姉さんが驚きに目を見開いている。・・・どうやら攻撃を避けながら槍を放った場所まで誘導されている事に気が付かなかったらしい。
「くそっ! だがまだ!・・・」
「【震脚】!!」
俺は【閃槍アーディボルグ】を構えたまま脚を大きく踏み出す。と同時に地面が少し揺れた。突然の事に対応できなかったのだろう、くノ一のお姉さんたち・・・のうちの一人が体勢を崩した。
「そこだ! 【スピアディスチャージ】!!」
俺が投げた槍はくノ一のお姉さんの本体を貫いた。
・・・蝶のように舞い、蜂のように刺す・・・というには力技過ぎたかな。刺すっていうよりぶっ刺すって感じだし。
『勝者!! アルク!!!』
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