予選第一回戦 第一試合
『ではさっそく・・・の前に・・・チェーンジ!!』
司会のポロンがそう叫ぶと彼らが立っているステージが変形していく。巨大なステージはみるみるうちに小さくなっていき、平面だったステージ上には地面から突き出すように机とイスが現れた。
変形が終わった所でステージ上の三人が着席する。
『よっと、僕たちはこの司会者席から各試合の頭上を回りながら実況、解説を行っていきますねー』
『よろしくねー♪』
『宜しくお願いします』
という事らしい。
「・・・あのステージ、ただの空飛ぶ円盤だと思ったけど案外機械的な産物なんだな」
「うむ、もしかしたら我らでも同じ物を作れるかもしれないのだ」
・・・作るのは良いがアヴァンよ・・・あれにどんな使い道があるって言うんだ。
『では早速行ってみましょう! 初日に行われる予選は参加プレイヤーから無作為に選出された10名~15名によるバトルロイヤルとなります!』
『今回のトーナメントでは参加人数が多く、時間や人数調整の為に人数が固定できませんでしたのでご了承下さい』
『運が良い人は自分以外の9人と、運が悪い人は14人と戦わないといけないってわけですね~』
・・・場合によっては人より5人も多く倒さなきゃいけないってわけだ。大変だが・・・運に任せるしかないな。
『ではデモンストレーションを兼ねてさっそく予選第一回戦、第一試合を行いたいと思います!!』
『試合についてですが、開始15分前にプレイヤーの元に通知が届きます。そして試合開始5分前になったら舞台に自動転送されますのでご注意を。なにか問題がある場合には直接運営のご連絡下さい』
『第一試合は最初なんで参考程度に開始から終了まで見ることにしますが、第二試合以降は順次平行して行いますからね~。審判はAIがきちっとやってくれますよ~』
「・・・うわぁ~、つまり第一試合に出る奴は皆の見本にされるってわけだ。選ばれた奴はご愁傷様だな」
・・・俺はこのとき、フラグって言葉をすっかり忘れていた。ラングを始め、色んな奴が微妙な表情で俺を見ていることも・・・気づかなかった。
『ではさっそくこれから第一試合に出るプレイヤーの元に通知を送ります。はいドーン!!』
ピコンッ!
・・・おや? 俺の【メニュー】がひとりでに開いたぞ? そこにはメッセージが。
『貴方が参加する試合は予選第一回戦 第一試合です。転送開始まで09:37・・・』
・・orz
「「「「やっぱり」」」」
見せ物確定である。
『通知が届いたプレイヤーの方は準備をお願いしますね! 約10分後に転送、15分後に試合開始になります!!』
・・・まあ、選ばれちゃったんだから仕方が無い。覚悟を決めて準備・・・とは言っても既に準備万端だから特になにかするわけでもないんだけどな。
「・・・アルクよ、その格好のままでいくつもりかのう?」
ガットが今の俺の装備にケチをつけてきやがった。・・・まあ、今の俺はヴィオレの作った戦闘服以外なにも装備していない状態だからな。ほぼ丸腰状態だ。ガットからすれば自分の作った装備をつけていないのが不満なんだろう。
「ああ。初っ端から装備を見せ付けるのもどうかと思ってな。まあ、相手次第でちゃんと装備しなおすから安心しろ」
【武装換装】のスキルの効果で装備の変更は一瞬だ。この日のために様々な状況のシミュレーションとそれに合わせた装備の組み合わせを考えて【武装換装】に設定してある。トーナメントで勝ち残る為には出来る限り手の内は隠しておきたいからな。・・・もっとも、初っ端から強敵と当たる可能性もあるから見極めは間違わないつもりだ。
「・・・っと、そろそろだな。じゃあ行ってくるわ」
「頑張りなさいよ」
「負けないでください」
「アルクさんなら大丈夫なのです!」
「ベストを尽くすのだ」
「アニキ、健闘を祈るっす!」
「応援してます」
・・・おおう。仲間達の声援っていうのは・・・良いもんだなぁ。
「予選落ちせんようにのう」
「がっかりさせないでくれよ?」
・・・ガット、ラング・・・お前達は素直に応援できんのか。
と思っていたら俺の体が光に包まれて・・・
===転送===>予選第一回戦 第一試合会場
気が付くと丸い石畳の舞台の上だったとさ。
『おっと、さっそく第一試合会場にプレイヤーたちが転送されてきました!!』
と、いうことらしい。移動が楽なのは良いことだよな、うん。・・・実は名前を呼ばれて歓声の中、入場してくるのに少し憧れていたんだが・・・さすがに予選では無いか。明日以降に期待しよう。
さてはて俺の対戦相手たちは・・・
「ヒャッハー!! なんか弱そうな奴がいるぜ!」
「武器も持ってねぇなんて死にてぇのかぁ!」
「怪我しないうちにギブアップしちまいな!」
「ウヒャヒャヒャヒャ!!」
・・・そこにいたのは世紀末名な格好をしたいかにも・・・なヤツラでしたとさ。
大柄の体にボロボロ・・・もとい傷だらけの服を着ていて肩にはトゲトゲの肩パッド。手には斧やら釘バッドやら物騒な獲物を多数持っていて・・・なぜか皆モヒカンだった。
そんなヤツラが俺を除いて14人。
「おーい、司会者さーん! これ本当にランダムで選出されてるんですかー!?」
ランダムで選ばれたはずなのに似たような奴らがばかりっておかしいだろ。
『勿論です。不正はありません』
俺の問いに答えてくれたのは室長さんだったが・・・本当か? 俺以外の14人が皆モヒカンなんてありえるのか? 絶対狙って選ばれたとしか思えないんだが?
「ヒャッハー! 今更ビビッても遅いんだよ!!」
「トーナメントに参加したことを後悔させてやるぜ!!」
・・・確かにビビるよなぁ。・・・そんないかにもザコっぽいチンピラ発言する奴がリアルにいるとは・・・いや、リアルではないか。じゃあ、あれはキャラ付け?・・・どっちにしろありえねぇ。
『バトル開始まで・・・9・・・8・・・』
お、なんか空中に表示が。それにいやに機械的な音声でカウントダウンが。
『今、聞こえているのがいわゆる審判AIの声ですね。司会に代わり試合の開始と終了を告げます』
『3・・・2・・・1・・・試合開始!!』
カウントダウンが終わり試合が開始される。と、同時に・・・
「「「「「シィィネェエエエエ!!!!」」」」」
14人のチンピラが一斉に襲い掛かってくる。俺一人狙い打ちって・・・これ、バトルロイヤルじゃないよな?・・・いや、弱い奴から狙うのは定石か?
・・・どうみても俺より強い奴がいるように見えないが。
とはいえ、せっかくの最初の試合だ。・・・派手に行こうか!!
「両手に【ウィンドプレッシャー】【ファイヤーボール】を【魔法付加】!」
俺は向かってくるチンピラどもに向かって両拳を構え・・・
「【ジェットブラスト・ラッシュパンチ】!!」
ドカドキドゴバキドゲドグァ!!!
「「「「「ぎゃああああああ~~~~!!!」」」」」
14人のチンピラどもは俺の拳を受けて情けない声を上げながら吹っ飛んでいった。
チンピラどもはそのまま場外へ・・・あ、見えない壁にぶつかったみたいに空中で止まった。そういえば、各舞台ごとに結界で覆われてるって言ってたな。だから場外は勝敗の判定基準にならないって。
となると、あのチンピラどもひとりひとりにトドメを刺すか、ギブアップを聞き出す必要があるわけか。意外に面倒だな。・・・仕方が無い、さっさと・・・
『勝者!! アルク!!!』
・・・え~・・・・
『え~~・・・』
『・・・え、もう終わっちゃったの?』
『どうやらそのようですね』
予選第一回戦、第一試合は・・・まさかの一発KOだった。
・・・どんだけ見掛け倒しなんだよ! アイツら!!
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