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開会宣言

熱唱が終わると共に惜しみない拍手を送る。


俺だけではなくこの会場にいる全員が、だ。


熱唱を終えたポロンとミューズ、そして【オルフェウス】のバックダンサーたちは観客の拍手に応えるように四方八方に手を振っている。


ラングとガットの話じゃあ、ポロンとミューズは昔俺があったことがある知り合いらしい。とはいえ、もう何年も経ってる上にここはゲームの中で、今の俺たちの外見はアバターだ。俺だって言われるまで分からなかったし、向こうだって俺たちのことは分かっていないだろう。・・・だから、さっきからちらちらこっちを見ているような気がするのも気のせいだ、うん。


バックダンサーたちがステージから飛び降り、二人取り残されたポロンとミューズがマイクを持って話し始める。・・・今気づいたが、ステージまで結構な距離があるのに普通に二人の表情まで見えてるな。


『皆さん、こんにちはー! Seven World Online公式アイドルにして本日の司会を務めさせていただくポロンでーす!!』


『同じくミューズで~す♪』


『いや~、ミューズさん、いよいよ始まってしまいましたねー!!』


『正確にはこれからですけどねー』


・・・あのミューズって子は所々で毒を吐くことでも有名らしい。本人が美声なせいでツボにはまるファンも多いんだとか・・・俺が知ってる彼女はもうちょっと純真だったような気がするが・・・一体、誰に毒されたんだろうか?


「「・・・」」


・・・なぜかラングとガットが俺を見ているが無視する。


『今日から三日間、あつーいバトルが繰り広げられるわけですが!!』


『お祭りとはいえマナーと節度は大切です。はっちゃけ過ぎちゃうと強制ログアウトの刑に処されるので気をつけてくださいね♪』


・・・笑顔で言う事か? それ?


『なお、トーナメントの様子はリアル世界にも生配信されてます! 活躍すればするだけ注目されるチャンスです! 羨ましい!!』


『逆に、あんまりマナーがなってないと悪目立ちしちゃいますけどね♪』


ゲッ、そんなのまであるのか。さすがに予選のうちはそうそう映ることは無いだろうが・・・勝ち上がっていくほどに目立つことに間違いないな。・・・ポロンはアイドルになってもまだ目立ちたがり屋なのか。


『まあ、詳しい注意なんかはあの人に任せましょう』


『そうですね。ではさっそく呼んじゃいましょうか? せ~の!!』


『『室長さ~ん!!』』


・・・なんかテレビのバラエティ番組みたいだな。


・・・ドシンッ、ドシンッ!!


・・・? なんだ? なんか地鳴りみたいなのが・・・


「お、おい!? あれを見ろ!?」


相変らずノリのいい観客の一人がスタジアムの外を指差した。見ると・・・それはもう大きな何かがこちらに迫ってきていた。


「あ、あれは・・・怪獣?・・・巨人?」


「いや・・・あれは!?」


「「「「室長だ!?」」」」


確かにその巨大な何かは、いつも公式生放送で良く見るスーツ姿の室長さんだ。・・・あの人って巨人だったの? ・・・あと、さっきから観客の中にサクラというか運営からの回し者が混じってないか?


『ハッハッハ!! とうっ!!』


その巨大室長は高らかに笑い声を上げると空高く舞い上がった。・・・ウル○ラマンのように。飛び上がった室長はスタジアムの真上に・・・っておいおい。


「「「うわぁ~~~!!!」」」


パニックになりかける観客たち。しかし、室長は空中でみるみるうちに体を収縮させ・・・


スタッとポロンやミューズのいるステージの上に着地した。


『ハッハッハ! どうもSeven World Online運営室の室長です!!』


いつの間にか持っていたマイクで自己紹介しながらダンディに笑う室長だが・・・観客たちは若干引き気味である。


『・・・あちゃー、しょっぱなからインパクトが強すぎたみたいですよ室長!!』


『ある意味、この後のバトルより目立ってしまったかも知れませんね』


まったくである。こういうのを悪目立ちっていうんだろうな。


『そ、そうですか? まあ、大丈夫でしょう。我々が把握している限り派手なスキルを取得しているプレイヤーもたくさんいますから、バトルは今以上に盛り上がることでしょう』


・・・フォローに必死だな。大丈夫なのか?・・・あと、派手なスキルって言った時にこっちをチラッと見た気がするんだが・・・気のせいだよな。


『・・・ゴホンッ。えー、それでは改めまして本日から始まる第一回バトルトーナメントですが・・・』


お、やっと真面目な雰囲気に・・・


『諸注意なども有りますが、その前に一言だけ。皆さん。Seven World Onlineはゲームです。そしてこれから始まるバトルトーナメントもゲームのイベントの一環です。参加者の中には真面目に、真剣に取り組んでいるプレイヤーもいれば、文字通り遊び半分で参加しているプレイヤーもいることでしょう! しかし、私はそれで良いと思います。個人で楽しめ、皆で楽しむ事が出来るゲーム、それがSeven World Onlineの目指すべき姿であると思っています』


・・・室長が熱く語っている。言ってることはまさにそのとおりだと思うが。


『このバトルトーナメントは一種のお祭りです。それも参加者だけではなく見ている側も楽しめるお祭りだと考えています。皆が楽しめるお祭りにするためには皆の協力が必要不可欠です! 今回のトーナメントを成功させるためにも、そして次のイベントへと繋げるためにもプレイヤーの皆様にはぜひとも協力していただきたい!!』


そう言って頭を下げる室長。


「「「「おおおおおーーーーー!!!!」」」」


そしてそれに答える観客たち。・・・うん、今回のバトルトーナメントっていうイベント。そうそう悪い結果にはならなさそうだ。


「・・・まあ、悪質なプレイヤーはアカウント停止されるから、そうそう悪い事にはならないだろうけどね」


「うるさいぞ、ラング」


せっかく一致団結して盛り上げていこうとしているのに余計な水を差すな。


『ありがとうございます、皆さん。それでは今回のバトルトーナメントですが・・・』


そこからはトーナメント期間中の諸注意だった。


まあ、ほとんど事前に連絡のあったことばかりだ。


一際強く言われたのは体調関係。


精神を丸ごとダイブさせるこのゲームの都合上、長い時間ログインしているとその分だけ肉体がほったらかしになる。ゲームの開発側でも十分なテストは行っているが、万が一なんらかの異変を感じたら直ぐに申し出て決して無理はしないこと、だそうだ。


特にトーナメント参加者は一試合終わったら必ず一時間以上のインターバルを設けるから、一試合ごとにログアウト、ログインを行うくらいのつもりでいてくれ、だそうだ。


まあ、ここでケチがついたら次のイベントどころかゲームの存続自体怪しくなってくるかもしれないからな。そこは皆わきまえてるだろう。・・・多分。


「・・・ゲームに熱中しすぎると数時間なんてあっという間に過ぎてしまうからね。本人だけじゃなく周囲の人間も注意しないとね」


・・・ゲーマーって大抵そういうモンだよな。・・・気をつけよう。


と、ここで室長からの注意事項の説明も終わったようだ。


『それでは皆さん!! これより第一回バトルトーナメントを開始致します!!』


「「「「「おおおおーーーーーー!!!!」」」」」


室長の宣言を皮切りにいよいよバトルトーナメントが開始となるのであった。


作者のやる気とテンションを上げる為に


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m(_ _)m

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