いよいよ始まる
「やあ」
「どうもです」
そこにいたのはラングにロゼさんだった。
「ワシらもおるぞい」
「よっ! 気合、入ってるかい?」
「いや~ん、おひさしぶり~」
さらにガットにヴィオレ、オカマ・・・ヒューナスもいる。
「お前ら、もう来てたのか。随分早いな」
「そりゃあね。早く来ないと良い席が取れないからね! ・・・もっとも杞憂だったみたいだけどね」
ご苦労な事で・・・杞憂だった?
「どうやら、観客席に居る間は【特殊遠視】と【特殊遠聞】ってスキルが自動的に付加されるそうだよ。だから観客席の最後列に居たとしても試合の様子はばっちり見れるんだってさ」
・・・話から察するに会場限定で試合の様子が見聞きできる特殊なスキルか。ゲームの中ならではの仕様ってやつだな。となるとどこの観客席にいても試合を見る分には一緒ってことか。
「ちなみに選手の控え室みたいな物はないそうだよ? 参加者は敷地内に居れば、時間になると自動的に舞台上に転送されるんだってさ」
「お前、なんでそんなに詳しいの?」
同じ参加者であるはずの俺が知らないのに何故? 情報クランだから?
「【メニュー】にトーナメント向けのパンフレットが追加されていてそれに載ってるよ?」
・・・俺たちは【メニュー】を開いて確認する。・・・気が付かなかったぜ。というかこんな大事なこと、なんで連絡してくれないのか。しっかりしろ、運営。
「まあ、詳しい説明は開会式であるそうですよ?」
・・・すまん、運営。俺たちがフライング気味だったのね。
「というわけで君たちの分の席も確保してあるから・・・行こうか?」
どうやら【アークガルド】【インフォガルド】【アイゼンガルド】の三クランで観客席の一角を確保しておいてくれたらしい。頼んだ覚えはないのだが・・・というかコイツラもトーナメントに出るライバルのはずなんだが・・・まあ、良いか。
「ちょっと待ってくれ。今、アシュラたちが「買ってきたっす、アニキ!」・・・たった今戻って来たから丁度よかったな」
俺たちが来た道から丁度アシュラたちが戻って・・・来た?
「・・・おい、アシュラ。なに食ってんだ?」
「イカ焼きっすね」
・・・果たして1メートル超えの巨大イカの丸焼きをイカ焼きと呼ぶのだろうか? というかイカなのか、それ?
「はしたないよ、アシュラ」
「なに言ってるんすか、アスター! 買い食いこそ祭りの魅力じゃないっすか!!」
・・・言ってる事は分かるが限度があると思うんだ。その巨大イカ焼きは明らかに通行の邪魔だ。あと、祭りじゃなくてトーナメントね。
「・・・で、アーニャは何を食ってるんだ?」
俺には掌サイズのデフォルメされた雪だるまっぽく見えるんだが?
「雪だるまアイスなのです。常温で出しっぱなしでも全然溶けない不思議アイスらしいのです。それにかなり美味しいのです」
・・・どうやらトーナメント会場の出店は不思議商品で一杯のようだ。他にも色々買ってきたらしい。
「ま、まあ、皆揃った所で案内を・・・あれ? ロゼ?」
「・・・む? ヴィオレもおらんぞ?」
ようやく席に案内してもらおうとしたら今度はロゼさんとヴィオレがいつの間にかいなくなっていた。
「あらん? あの二人だったら出店の方に走って行ったわよん?」
・・・世の中の女性は買い物と美味しい物が大好きだという・・・つまりそういうことなんだろう。
「・・・あの二人は場所わかってんだろ? なら大丈夫だろう。・・・案内してくれ、ラング」
「・・・そうだね」
・・・どうやら皆、朝からテンション高いようだ。・・・やっぱり祭りだな、うん。
ラングたちが確保しておいてくれた場所はスタジアムの角、L字型に設置されている観客席だった。既に【インフォガルド】や【アイゼンガルド】のメンバーが占有していて賑わっている・・・大半は名前も知らないんだけどな!
「文字通り一角を確保しておいたよ」
なにやらドヤ顔しているラングをスルーしてアシュラたちが買ってきた戦利品を適当につまむ。
・・・あ、このスルメ、美味い。・・・スルメだよな? これ。俺の知ってるものと色も大きさも違う気がするんだが・・・。
この7色の層が出来てる飲み物はなんだ? ジュース? 白い層は・・・リンゴか。・・・おお、次の黄色いの層はオレンジか。ってことは次の紫の層は・・・ブドウだな。ミックスされてないミックスジュースか。・・・どうやって作ったんだ?
「むむむむむ、アーニャの知らない料理が一杯なのです!!」
・・・アーニャよ。その手に持っているマンガ肉は料理と言っても良いのか? いや、美味いけどさ・・・何の肉なんだ? これ?
こんな感じでわいわいがやがややってる内にどんどん人も増えてきた。
うーむ、ファンタジー丸出しの格好の奴からSFチックな奴まで色々だな。
・・・あのジャージ姿にスリッパを履いてる奴はネタ装備なのか?
・・・あのちびっこ集団、もしかしてトーナメントに参加するんだろうか? 心情的に相手にしづらいな。
・・・おお、見たことが無い【眷属】を引き連れてる集団が・・・どっかのクランかな?
・・・おおう、あのセクシー衣装を纏ったお姉さん方とは是非お近づきに「アルク?」「アルクさん?」・・・ゴメン、やっぱりなんでもない。
こうして見るとバラエティ豊富だなぁ・・・あの世紀末な服装している人たち作品違いじゃない? あの全身黒タイツ集団、ここにいて良いのか? 通報した方が良いんじゃないか?
あ、緊急クエストで見かけた連中もいるな。・・・すごい人数だな。あれもう何百人単位だろう。うちとは規模が違うな。
あ、ベルバアルだ。・・・あそこは知ってる顔の奴しかいないな。あそこもうちと同じで少数精鋭のようだ。・・・なぜかちょっと安心した。
こんな感じで人間観察?をしているといよいよ時間が迫ってきたようで・・・
「あ、あれは何だ!?」
観客の一人が空を指差しながら叫んだ。・・・誰だ? 古典的なこと叫んだ奴は?
と言いつつ釣られて頭上を見るとそこには・・・未確認な飛行物体的な物が。
「・・・UFOか?」
「・・・いやー、ちょっと違うんじゃないかな?」
そのUFOもどきはどんどん降下し、舞台上・・・俺たちが視認できる位置まで降りてくる。そこまで来てようやく分かった。円錐を逆さまにしたようなあれは・・・ステージだ。
「YAHHHHH!! みんな盛り上がってる!?」
「「「「「「YEAHHHHHHH!!!!!」」」」」」
ステージの上に立っているのは・・・Seven World Onlineの公式アイドル、ポロン(イケメン)とミューズ(美女)だな。生で見るのは初めてだ。・・・生でって言い方が正しいのかどうか知らんが。
二人のうちの一人、ミューズが観客に向かって呼びかけると観客側からも凄まじい歓声が沸きあがる。
「それじゃあ、みんな!! 張り切っていくよ!!!!」
今度はポロンが叫ぶと、二人はそのままSeven World Onlineのテーマソングを歌いだした。
あ、空からバックダンサーが降ってきた。あれが【オルフェウス】とかいう音楽クランか。
「・・・さしずめ、バトルトーナメントのオープニングって所かしらね」
「と、言う事はそろそろみたいですね」
「ああ、そうみたいだな」
いよいよ始まるのか、バトルトーナメント。
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