トーナメント当日
===ログイン===>【アークガルド】クランホーム
おはようございます。
・・・何時もと挨拶が違う? 今日は、というか今日から3日間は朝からトーナメントがあるせいでいつもの不定時間の挨拶じゃないのだよ。
ぶっちゃけ、こんな朝早くログインするのなんて初めてじゃないだろうか。
「おはよう、来たのね」
「おはようございます」
そして俺がログインすると大抵いるアテナとアルマである。・・・一体コイツらは何時からログインしているのだろうか。下手したらリアルにいる時間よりゲームの中にいる時間のほうが長いのではと勘ぐってしまう。
「・・・言っておくけど私たちがログインしたのもついさっきよ?」
「まあ、私達はゲームの中のほうがある意味で自由ですからね」
・・・そうか。コイツらはリアルでは二重人格なんだっけ? 体が一つしかないリアルより、お互いの精神が自由に行動できるゲームの中のほうが都合が良いのかもしれん。・・・それはそれでどうかと思うが。
なお、当たり前のように俺の心を読むのはスルーする。むしろ喋る手間が省ける分だけ俺にとっては楽なのかもしれない。
「・・・あんまり面倒くさがってるとその内喋れなくなるかもしれないわよ?」
「そういえば最近の日本人はパソコンやスマホに頼りすぎて漢字が書けなくなってるそうですね?」
・・・書く能力が衰えていくように、喋る能力が衰えていくって? ハハハハハ・・・気をつけよう。
「他の連中は?」
俺は声に出して質問する。
「皆来てるわよ。貴方が最後」
・・・うーむ。集合時間30分前にログインしたはずなんだが・・・皆早いな。なんというか遠足が楽しみすぎて早く来すぎた子供みたいだな。・・・俺? ハハハハハ・・・人の事言えないな。
他のメンバーは【眷属】たちと一緒に庭で遊んでいた。
「クルー♪」
「だう♪」
俺の姿を見つけると同時に飛んでくるアーテルとアウル。よしよし。
「おはようなのです!」
「うむ」
「おはようっす! アニキ!!」
「おはようございます」
・・・朝から元気だね、君たち。低血圧なお兄さんからしたら羨ましい限りだよ。
「おぃーっす。・・・皆揃ってるみたいだな。ちょっと早いけど準備出来てるんなら・・・行くか」
俺の言葉にメンバー全員が立ち上がる。今回は【眷属】組は留守番になるため一旦お別れだ。
「じゃあ、行ってくるな、皆。今回は出番がある奴とない奴がいるし、いつ出番がくるかも分からんが・・・まあ、自由に過ごしていてくれ。モニターはつけておくからもしかしたら俺たちが映るかもしれないぞ。・・・カイザー、ラグマリア。こっちは頼んだぞ」
「クル!」「がお!」「ピュイ!」「キュイ!」「キュア!」「キュウ!」
「だう!」「あい!」「まう!」
「了解デス」
「分カリマシタ」
うんうん、良い返事だ。お兄さんは嬉しいよ。
と、いうわけで俺たちは早速トーナメント会場で行ってみることにした。
===移動===>【人間界】トーナメント特設会場
「「「「「「・・・」」」」」」
「・・・なんというか、遠近感がおかしく感じるな」
【転移装置】で移動した先にあったのは・・・超巨大建造物だった。結構離れた距離から見ているが・・・全体像がまるで見えないな。外観から考えて・・・スタジアムだろう。
「でっかいっすねぇ」
「・・・一体何万人入る事を想定しているんですかね?」
・・・確か、世界最大のスタジアムでも15万人だと聞いたことがあるが・・・明らかにそれ以上だろ、ここのスタジアム・・・
「施設もですけど出店も一杯並んでるのです!!」
「あのとてつもなくでかいモニター、ちゃんと映るのだ?」
【転移装置】からスタジアムまでの道のりには既に多くの出店が並び、多くの人で賑わっている。・・・朝からこれじゃあ時間経ったらとんでもない事にならない?
そしてスタジアムの外壁にはこれまた超巨大モニターが設置されている。・・・あれなら確かに出店を周りながらでもトーナメントの様子が見れるだろうな・・・しかし、あのモニタ、一体何インチあるんだろうか・・・そもそも何インチっていうレベルなのか?
・・・ここの運営はきっとあれだ。ゲームの世界だからって調子こいて現実ではありえない規模のスタジアムを作りたかったに違い無い。
とりあえず、俺たちはスタジアムに向かって歩き始める。
「・・・道のりが遠いんだけど・・・」
「・・・これ、下手をしたら一日でも周りきれないかもしれませんね」
一体、何万人・・・いや何十万人来る想定なんだろうか? 人ごみは苦手なんだが・・・それにしても・・・
「既に良いにおいが漂ってくるな」
既に出店から焼きそばやらお好み焼やらたこ焼きやら美味しそうなにおいがそこらじゅうから・・・ごくり。・・・朝から重い? フッ、ゲームの中じゃ関係ナシ!
「任せてくださいっす、アニキ! ボクが買ってくるっす!!」
「・・・え? おい、アシュラ!!」
出店(食い物限定)に突撃していくアシュラ。その様子は立派な・・・パシリである。
「・・・せめて何が食いたいか聞いたうえで代金を貰ってから行けや」
アイツはなにか? 人の話を聞かないで突撃してしまう病気にでもかかってるのか?
「・・・ふぅー、仕方が無いですね。僕がついていきますから皆さんは先に行っててください」
「アーニャも行くのです!!」
アスターがアシュラのお守りに着くそうだ。アーニャは・・・料理に興味あるんだろうな。
「わかった。適当に買って来て合流してくれ。代金はクラン資金から出すから」
「わかりました」
アーニャを連れてアシュラの元へ駆け寄っていくアスターの姿は・・・立派な保護者さんである。・・・アイツ、リアルでは歳いくつなんだろうな。俺より年下だったら・・・なんだか泣けてくるな。
買出し組のことは保護者さん(?)に任せて、俺たちはようやくスタジアムの前まで辿り着き、中に入る。
余談だが、スタジアム内に入るのに入場料とかは無いそうだ。代わりに指定席などもない。勝手に入って勝手に座って勝手に見てということらしい。・・・なんでそこは適当なのか分からんが、このゲームは優秀なAIに監視されてるらしいから別に大丈夫なんだろう。
入口から入り、長い階段を潜り抜けた先にようやく観客席と・・・戦いの舞台が姿を表した。
まず観客席だが・・・四方をグルリと回る感じで観客席が用意されている。・・・これ、何十万どころか何百万まで行きそうなぐらい席があるような気がするな。このスタジアム、東京ドーム何個分? あるいは何十個分? ・・・圧巻である。
そしてスタジアムの中央には・・・戦いの舞台、丸い石畳の舞台が何十個と並んでいた。
「・・・舞台が何十個もあるわね?」
「参加者は数万人にも及んで、初日は十数人によるバトルロワイヤルってあっただろ? 一試合ずつやってたら時間がいくらあっても足りないから並行して何試合もやるってことなんじゃないか?」
これだけの規模の施設を用意するなんて運営も大変だな、と思いつつ懸念がよぎる。
「・・・しっかし、これだけの規模になると観客席なんて意味があるのか? 最前列から見ても舞台までには相当な距離がある。正直、あの場に人間が立っても黒い棒程度にしか見えないんじゃないだろうか?」
「・・・それに関しては問題ないみたいだよ?」
唐突に割り込んでくる第三者の声。
そこにいたのは・・・ラングたちだった。
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