強敵たち
===視点切り替え===>クラン【ディアボロス】
クラン【ディアボロス】のメンバーはクランホームに集まり、話し合っていた。
リーダーであり【魔族】のベルバアル、【吸血鬼】のレシトリー、【堕天使】のライセーレ、【狐獣人】のレヴィーネ、【ダークエルフ】のリグシオン。【魔王】を目指すベルバアルの元に集った精鋭たちである。
「・・・それで? 【魔導具】は順調なのか、レシトリー?」
「順調・・・とは言い難いですわね。そもそもそんな強力な【魔導具】がそうほいほい入手できるはずもありませんわ」
「やっぱり、【魔導具】よりレベリングを優先したほうが良いんじゃないか? ベルバアル!!」
「レベリングは常日頃からしているだろう、ライセーレ。我々は地力は十分にある。あとは切り札を用意しておくべきだ・・・勝つために」
「なんやぁ、何時にも増してやる気どすなぁ、ベルバアルはん」
「・・・当然だ、レヴィーネ。アルクたちのクランも出場することがわかっているのだ。因縁の相手との決着・・・負けるわけにはいかん」
「拘りますわね・・・以前に戦った時にはそれほどの相手とは思いませんでしたわよ?」
「・・・甘いな、レシトリー・・・少なくともアルクはあの頃とは段違いに強くなっている」
「・・・確かに、あのカオスって奴に絡んでいたときの動き、俺には見えなかった」
「俺もだ、リグシオン。そしてあれでもまだ全力ではなかったはずだ」
「それで? ベルバアルはんには勝算はありますのかぇ?」
その言葉に怯むベルバアル。
「・・・だから、こうして皆で【魔導具】を集めてるんじゃないかぁ」
「・・・急にヘタレましたわね、ベルバアル。まあ、仕方がありませんわ。我らがリーダーの為ですもの」
「・・・ありがとう、みんな」
クラン【ディアボロス】のリーダー、ベルバアル。メンタルの弱い彼だが、リーダーである事に誰も異存は無い。それは皆が、彼はやる時はやる男である事を知っているからだ。
===視点切り替え===>クラン【双星騎士団】
【武術】と【魔法】に力を入れるクラン【双星騎士団】。そのメンバーは強くなる事に余念が無い。今も、メンバーたちはクランホーム内の訓練設備で実戦形式の訓練を行っていた。
その指導を行っているのは【双星騎士団】の副リーダー、シャンテである。
「みんな~、その調子よ~! 頑張って~!!」
「「「「はい!!」」」」
そんな彼女たちに近寄る男性が一人。
「・・・精が出るね、シャンテ」
「あら~、ラーサー・・・もう、団長のお仕事をサボってどこに行ってたの~?」
「ごめん、シャンテ。でも今は自分のレベリングに集中したいんだ」
「もう・・・この間の緊急クエストを受けてからずっとその調子ねぇ・・・そんなに気になる相手がいたのかしらぁ?」
「気になる相手ばかりだよ。誰も彼もみんな強い・・・こうしてる今もきっと・・・シャンテも油断していると負けてしまうよ?」
「私は~、こうして皆と戦うのも好きだから~。トーナメントも大事だけど~、楽しむ事も大事よ~」
「・・・そうだったね。でもシャンテ・・・今、僕は楽しくて仕方が無いんだ。こうして強くなっていくのが・・・そしてトーナメントで強い人と戦えるのが」
「・・・もう~、しょうがない人ねぇ。わかったわ~。こっちは私が面倒見ているから、ラーサーは好きなようにして頂戴~・・・負けちゃ駄目よ?」
「勿論だよ、シャンテ。僕は誰にも負けない!!」
クラン【双星騎士団】のリーダー、ラーサー。彼はまだ戦いにおいて本気になったことが無い。それは彼の才能ゆえか、それとも・・・その答えは戦いの中にある。
===視点切り替え===>クラン【秘密結社DEATH】
【秘密結社DEATH】・・・秘密結社でありながら、堂々とクランホームを構える豪気なプレイヤーの集まりである。彼らの信条はたった一つ。勝利こそ全て、である。
その【秘密結社DEATH】のリーダー・・・もといボスは、側近であるレディの報告を玉座にて受けていた。
「・・・やはり、上位のクランはガードが固いな」
「イエス、ボス。トーナメントに向けてどこのクランも姿をあまり見せなくなりました」
「短期間でレベリングを行うのなら、新しい場所を探すより、既存の場所を周回したほうがリスクが少ないからな。それぞれ、専用の狩場でもあるのだろう。・・・それで、レディ。要注意プレイヤーのリストはこれで全部か?」
「イエス、ボス。ほとんどが緊急クエストで上位となったクランのメンバー、他にも何人か・・・」
「【ディアボロス】や【双星騎士団】・・・有名どころばかりだな。だが一位だったふざけた名前のクランと【アークガルド】とやらの情報が乏しいな」
「イエス、ボス。一位だったクラン・・・カオスというプレイヤーはソロで活動しているらしく情報が余りありません。ですが実力は確かな物かと。【アークガルド】というクランは・・・どうも【インフォガルド】が巧妙に情報を隠しているようです」
「【インフォガルド】? 大手の情報クランか・・・同盟でも結んでいるのか?」
「イエス、ボス。しかし、ご安心下さい。【アークガルド】はあちこちの世界に積極的に飛び回っていると聞きます。必ず情報を手に入れてまいりましょう」
「頼むぞ、レディ。必勝を期すために」
「イエス、ボス!!」
クラン【秘密結社DEATH】のリーダー・・・ボスは常に一番強い者が務める決まりになっている。そして現在のボスはクラン結成当時から一度も負けたことが無い。それは実力と知略、その両方を兼ね備えているからに他ならない。
===視点切り替え===>クラン【モンスターイズライフ】
【眷属】の収集に力を入れているクラン【モンスターイズライフ】。
そのリーダーを務めるのは、まだあどけなさを残す女の子、ミーシャである。彼女は今日もクランホーム兼牧場で【眷属】たちに餌を与えていた。
「は~い! みんなぁ!! 今日のご飯だよ~!!」
「キュー!」「キキー!」「があ!」「ぷー!」「めー!」
「・・・あの、リーダー? 本当にトーナメントに出るんですか?」
そんな彼女に話しかけるのはクラン結成当初からの親友、バルバラである。
「勿論だよ! 我らが【モンスターイズライフ】を宣伝するチャンスだからね!!」
「でも、リーダー? この前の緊急クエストで上位に入った人たち、みんな強そうでしたよ?」
「大丈夫だって!? 私達だって6位になれたじゃない! 優勝は厳しいかもだけど、そこそこ行けるって! きっと!!」
そんな彼女に駆け寄る一匹の【眷属】。
「コ~ン!!」
「あ、キュウちゃん!! トーナメント、宜しくね!!」
「コン!!」
「ラングさんの話だと【アークガルド】の皆さんもトーナメントに出るみたいだし、会うの楽しみ~」
クラン【モンスターイズライフ】のリーダー、ミーシャは無類の動物好きである。そんな彼女のクランには数多くの【眷属】がいる。可愛らしいモンスターから、凶悪なモンスターまで・・・それはひとえに彼女の傍に最強の獣が控えているからである。
===視点切り替え===>クラン【ヴァーミリオン】
【兵器】を中心とした機械系の開発を行うクラン【ヴァーミリオン】のクランホーム・・・もとい研究所では白衣を着た一人の男性と一人の女性が話しあっていた。
男性の方が【ヴァーミリオン】のリーダーたるヴァラット、女性の方が副リーダーのシェリルである。
「だから! そんな貧弱な装備では話にならんと言っているだろうが!!」
「なに言ってるの! こんな武器を使ったらあっという間にエネルギー切れになるじゃない!!」
「そうなる前に敵を倒せば良いだろうが! やられる前にやるのが戦いの基本だろう!!」
「一撃必殺なんて今時はやんないわよ! どんなに高出力な武器を使っても避けられたらそれでおしまいよ!!」
「だからこその高出力ユニットだろう! パワー、スピード、ガード・・・全てを兼ね備えた完璧な【兵器】!! それぐらいでなくては【アークガルド】とかいうクランの【機工士】には勝てんぞ!!」
「・・・ふぅ、口で言っても分かってもらえないみたいね」
「それはこっちのセリフだ」
「なら、いつも通り・・・」
「実戦で試してやろう!!」
常日頃からケンカが絶えないヴァラットとシェリル。反目しあいながらも彼らが作り上げる【兵器】は不思議と強く、美しくまとまっていく・・・彼らが作り出すのは至高の芸術品にして無敵の【兵器】。
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