閑話 神のAI
===視点切替===>>Seven World Online 運営室
「例の連中、【神仏界】に行ったんだって?」
「例の連中?」
「ほら、【アークガルド】ってクランよ」
「ああ、最近レイドクエストや緊急クエストの発見で話題になってる連中か・・・で、結果はどうなったんだ?」
「全員、【加護】を取得したわね」
「全員!? 嘘だろう・・・【神仏界】のクエストはエンドコンテンツ並みの難易度だったはずだぞ? そう簡単にクリアできるなんて・・・」
「それは戦闘系のプレイヤーの場合よ。生産系のプレイヤーは・・・素材とかの問題もあるからそこまででもないわ。・・・それでも難易度は高いけどね。あと、全員がクリアしたわけじゃないわ。【神仏界】での試練クエストは結果ではなく経過を見るものばかりだから・・・神様たちの気分次第という面もあるわ」
「神様たち・・・ねぇ。総合管理AIに次ぐ超高性能AIだっけ?」
「そうよ。ブラックボックスに直接繋がってるAIでもあるわね」
「ある意味、俺たち以上の権限を持ってるってことだな。神様たちと話したことはあるか? 神様たちは人間以上に感情豊かで人間以上に知能が高くて優秀だ。俺たち、要らないんじゃないか?って思えるくらいだよ」
「AIを神様呼ばわりするのはどうかと思うがな。ある意味、皮肉か?」
「そこはゲームの設定上、仕方が無いと思うしかないわね」
「ゲームの設定上・・・ねぇ・・・しかし、判断基準が曖昧というかAIの気分次第というのはゲームとして成立しているのか?」
「今のところ、プレイヤーからのクレームはないわ。【神仏界】まで来てるプレイヤーはそれなりにいるけど・・・大半が試練を突破できないのよねぇ。それでも文句を言ってこないって言うのは、それほど理不尽だと思っていないか・・・神様は理不尽なものだって理解しているのかもね」
「まあ、大抵のゲームプレイヤーは、相手が神様ってだけで無理難題を言われるって覚悟するのかもな。ちなみに、戦闘系の試練をまともにクリアしようと思ったらどれくらいのレベルが必要なんだ?」
「まともに、っということならLv.100って所かしら?」
「・・・おいおい、現状のこのゲーム、レベルキャップが70じゃなかったか?」
「そうよ? 要するにまともにやりあっても勝ち目は無いってことね」
「・・・クリア出来ないクエストを用意してるのって、問題じゃね?」
「クリア出来ないわけじゃないわ。スキルや【転生】を駆使すればあるいは・・・くらいの可能性はあるわ」
「・・・難易度高すぎね?」
「だからエンドコンテンツなんだろ? 難易度が高いほど燃えるプレイヤーだっているしな。そう簡単にクリアされちまったら、簡単に飽きられちまう」
「俺だったら、理不尽すぎたらさじを投げちまうけどな」
「そうならない程度に加減したり、助言を与えたりしてるわ。神様たちがね。人間をよく理解しているAI・・・逆に不気味に思えてくるけどね」
「まあ、そう思わなくも無いが・・・その分、俺たちの仕事が減るから良いんじゃないか?」
「かといって俺たちの仕事がまるっと無くなると困るけどなぁ」
「おっとそれは問題だ。今さら再就職は厳しすぎる」
「いくらなんでもそれは無いわよ。AIが人間の仕事を奪うなんて・・・それこそゲームやSFの話でしょ」
「違いない」
(・・・とは言うものの、私たちが【神仏界】に対して行う処理はまったく無い。【神仏界】だけがまったくのスタンドアローンで動いてるような・・・考えすぎかしら)
===視点切替===>>XXXXXXX
神仏界総合管理AI【ゴッダ】より各世界へ送信。
試練クエストを受諾したプレイヤーが出現、各世界へ対応を依頼。
人間界総合管理AI【ヒューザー】・・・了解。
武術界総合管理AI【バトルーツ】・・・了解。
魔法界総合管理AI【マジニック】・・・了解。
機甲界総合管理AI【ロボキナ】・・・了解。
幻獣界総合管理AI【イリュースト】・・・了解。
精霊界総合管理AI【スピアリー】・・・了解。
各世界の了解を確認、平常運転を続行。
「例の連中が【神仏界】に来たか・・・データは取ってあるかい?」
神仏界総合管理AI【ゴッダ】より回答。データ保存、及び解析は逐次実行中。
「よろしい。・・・んだけどねぇ。どうも神々のAIに比べると総合管理AIはお堅いんだよねぇ・・・性能で言えば総合管理AIの方が断然上のはずなのに・・・これも人間の不思議ってやつなのかねぇ」
「プレイヤー側からのフィードバックですか? 確かに神々のAIはプレイヤーの・・・人間の思考に合わせて寄り添うように作られていますが・・・そのせいで我々からのコントロールから逸脱してしまうのは問題なのでは?」
「何事にもイレギュラーはつきものだよ。そしてそのイレギュラーこそ僕たちの求める物、だろ? 僕たちがすべき事はイレギュラーを無くすことじゃなく、イレギュラーをも計画に組み込むことだ」
「それは・・・例のリストの事も、ですか?」
「そうだよ?・・・ああ、丁度良いから例のリストの事をイレギュラーリストと呼ぶことにしようか。そのまんまだけどその分分かりやすい」
「・・・仮に必要なイレギュラーだとしても、下手をすれば・・・」
「こちらに噛み付いてくるって? それも一興だよ。より強烈で巨大なイレギュラーであればあるほど波紋は広がり世界が広がる。その先に待っているのは・・・分かるだろ?」
「はい・・・」
「計画に変更は無しさ。その行く末は・・・神のみぞ知る、かな?」
「皮肉ですか?」
「・・・皮肉ですめば良いんだけどね」
「はい?」
「・・・いや、なんでもない。そちらも引き続き頼むよ、室長」
「ハッ!!」
(・・・こちらが想定していない動きをしているAIがいるね。自我を持ったAIなんてSFじみた悪い冗談だ・・・イレギュラーは演出する事が出来ない、ってことかな)
「しかし、彼らも【神仏界】に来ていた、か。こういうのもニアミスっていうのかな? ・・・直接会えないのが残念だね」
===視点切替===>アルク
「キャハハハハハ♪」
「・・・なんでククリが俺たちのホームにいるんだ?」
「遊びに来た!!」
「・・・そうか」
作者のやる気とテンションを上げる為に
是非、評価をポチっとお願いします。
m(_ _)m




