優先するのは
俺の言う事に忠実で気遣いのできるアーテル(生後数ヶ月)がこれほど嫌がると言う事は【魔龍覚醒】というスキルにはやはり何かあるのだろう。本人が嫌がるのなら無理をして使わせるつもりは無い。・・・かく言う俺も嫌な予感がするしな。
「クルー・・・」
「だう!」
そんなアーテルをアウル(生後数週間)が気遣っている。俺の【眷属】は心優しい奴ばかりだな。
と、ここでふと思った。
「おい、愛の【天使】」
「誰が愛の【天使】よ!!」
おめーの事だよ、アテナ。神様から愛が大事だって言われたんだろ?
「・・・アテナ。アウルの持ってる【フツノミタマ】について何か分からないか?」
「だう?」
これ? と言わんばかりにアウルが手に持っていた【フツノミタマ】を見せてくれる。
「・・・え? なんで私に聞くの? 【鑑定】してみて分からないんなら私にも分からないわよ?」
・・・コイツ・・・自分の【種族スキル】を忘れてやがる。
「・・・お前の【神眼】とかいう【種族スキル】で詳しく調べろと言ってるんだが・・・」
「あ・・・あー、そう言うことね。ゴメンゴメン。自分のスキルなのにすっかり忘れてたわ」
しっかりしてくださいよアテナさん。戦う事ばっかり考えてるとアシュラみたいになっちまうぞ。
「今、呼んだっすか? アニキ?」
「呼んでねーよ」
・・・なんでうちの女性陣はこうも勘が鋭いのか。
「じゃあ、さっそく見てみるわね。【神眼】」
・・・おお、アテナの赤い目が、紅く輝いている。・・・神秘的っていうか妖しい感じに見えてしまうのは何でなんだろうな。
「・・・うーん、かすかに白いオーラ・・・【神気】が漏れてるみたいに見えるけど・・・説明文は【鑑定】した時のものと変わらないわ。中身も真っ黒だし」
「・・・真っ黒? 見た目は真っ白なんだが・・・中は黒いのか?」
「そうみたいね」
・・・一体コイツにはどういう風に見えているのか気になるが・・・もしかして【フツノミタマ】って本当に卵みたいに白い殻みたいなので覆われてるんじゃないだろうか。となると殻を割る必要がある・・・いや、結論を出すにはまだ早いな。
「でも覚醒率が1%になってるから何かしたんじゃないの?」
「・・・え?」
・・・確かに【鑑定】してみると覚醒率が1%になってるな。
「アウル、何かしたか?」
「だう?」
・・・アウルは首を傾げるだけだ。・・・何もしてないらしいな。まあ、俺が見ている限りだと手に持って遊んでただけだし良く分からないな。・・・アウルに持たせる事で何かの変化があるのならもう少しこのまま様子を見ようか。
「・・・じゃあ、アーニャが貰ってきた【地竜帝ドラントの鱗】や、アヴァンが貰ってきた【機械神の解析モノクル】、アシュラの貰ってきた【武芸神の奥義書】なんかはどうだ?」
アーニャ、アヴァン、アシュラがそれぞれ貰ってきた物をアテナに【神眼】で見てもらう。
「・・・こっちは【神気】が駄々漏れね。見ただけで神様に関する特別な物だと分かるわ。【地竜帝ドラントの鱗】は本来の目的以外の使い方をしたら効果がなくなるみたい」
「【地竜帝ドラント】さんが言ってたとおりなのです」
「【機械神の解析モノクル】は色んな【兵器】やパーツを解析できるみたい。解析したパーツがどの系統の【兵器】に適しているか、とかが分かるみたいね」
「・・・ほう、それは使えるのだ」
「【武芸神の奥義書】は・・・頑張ってね、アシュラ」
「え? なにが見えたんすか!?」
・・・どうやら【神眼】というのは【鑑定】より色々見えるらしい。今度から良く分からないものを手に入れてきたらアテナに確認を頼もう。
あとは・・・
「【地竜帝ドラントの鱗】に関しては・・・ガットたち【アイゼンガルド】に頼むしかないだろうな」
【地竜帝ドラントの鱗】はアーニャの調理器具に使うように制限されたらしい。他の用途に使用するとアテナが言ったとおり、効果がなくなってしまうんだろう。
問題なのはガットたち【アイゼンガルド】がこの【地竜帝ドラントの鱗】を調理器具に加工できるかどうかだ。武器や防具ならまだしも調理器具となると・・・勝手が違うだろうな。
「・・・早めに頼んだ方が良いのです? ガットさんたちにも出来ないとなると、他の職人さんを探さないといけないのです?」
・・・調理器具を作れる職人が居るのかどうかが謎だが、【アイゼンガルド】が無理だと言うのなら他に加工できそうな奴を探すしかない。もしくは自分たちで加工する手もあるが・・・多分、【鍛冶】や【錬金】といったスキルが必要なんだろうけどスキルレベルが低いからな俺たち。自分たちでどうにかしようとすると、レベルが上がるまで死蔵することになるかもしれん。
「まあ、なんにせよ一度ガットに【地竜帝ドラントの鱗】を見せてからだな。奴のことだから極上の素材があると分かれば飛んでくるだろう。・・・だが・・・」
「だが?」
今すぐガットを呼びつけるのは懸念が一つある。
「・・・アーニャ。【地竜帝ドラント】の所から持って帰ってきた【美食幻獣】の料理って量はあるのか?」
「量なのです? ほとんどの料理は【地竜帝ドラント】に渡しちゃったのです。なのでそんなに量は無いのです。・・・ここにいる全員が一口二口くらい食べたら無くなると思うのです」
・・・やはりそうか。いうなれば俺たちはおこぼれにあずかるわけだからそんなに量は多くないだろうと思ってはいた。
「よし、ガットに連絡するのはこの後の宴が終わってからにしよう」
貴重な料理の数が減ってしまうのはいただけないからな!
「・・・アルクさん・・・ま、まあ、量が無いのではしょうがないですよね」
そう、しょうがないのだよ、アルマ。ガットたちにはまた今度にしてもらおう。
「よし! 大事なことは大体聞き出せたし、宴と行こうか?」
さあ、この後は待ちに待った【美食幻獣】の料理の実食だ!!
「・・・今、聞き出せた、とか言わなかった?」
・・・いかん、口が滑ってしまったようだ。
「そりゃあ、バトルトーナメントに向けて貴重な情報を入手する機会だし・・・冗談だ。だからそんな怖い顔で見るな、アテナ」
別にトーナメントで有利になるために情報を探ってたわけじゃないぞ? その証拠に俺の【加護】やスキルもみんなに公表しているだろ?
「・・・お前達が気づいているかどうか、知らんが、【神仏界】では多くの収穫があったわけだが・・・問題が一つあったよな?」
「問題・・・ですか?」
・・・やはり気が付いていなかったか。
「・・・レベルが上がってないんだよ」
「「「「「「あ・・・」」」」」」
そう、【神仏界】でそれぞれ激闘を繰り広げていた俺たちだったが、レベルがちっとも上がっていないのだ。【種族レベル】は勿論【スキルレベル】もだ。どうも試練クエストでは経験値が入らないらしい。
「レベルが上がっていないのは地味に痛いんだよな。トーナメントに向けてはレベリングは必須だし、一発勝負の【加護】よりもレベルアップでステータスをあげる方が重要だと思うんだ」
今にして思えば【神仏界】にいるプレイヤーの少なさもそこに起因するんじゃないだろうか。現状の多くのプレイヤーがレベリングに勤しんでいるであろう現状では【神仏界】に行くメリットが少ないんだろう。
「だから俺としては大量の経験値や報酬が手に入るレイドクエストに力を入れたいと思う」
「・・・そのレイドクエストで勝つために出来るだけメンバーの力を把握しておきたかった、ということですか?」
「その通り。トーナメントまで時間が無いからな。短期間のレベルアップを考えたら妥当だと思う。まあ、参加したくないならそれでも良いけどな」
俺の言葉にトーナメントに参加するアテナ、アルマ、アシュラが考え込んでいる。アーニャ、アヴァン、アスターはトーナメントに参加しないので急いでレベリングする必要は無いのだが、機会があるうちに参加しておいた方が良いと思って話をしている。
「・・・確かにレベリングは必要ね」
「ええ、個人で行うレベリングは時間がかかりますからね」
「アーニャはブランちゃんたちが強くなれるなら大歓迎なのです!」
「我もなのだ。我もラグマリアも、もっと強くなる必要があるのだ」
「強くなれるチャンスを棒に振るなんて武人の名折れっす!」
「まあ、強くなって損はありませんからね」
どうやら皆賛同してくれたらしい。この後の方針が大体決まったかな?
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