アシュラの場合:戦いの女神
===視点切り替え & 回想===>アシュラ
「・・・これは・・・道場っすよね?」
「まうー・・・」
【謁見の門】を抜けたボクたちが見た物は・・・でっかい道場のような建物だったっす。正直、予想外で困惑してるっす。ボクたち以外の人影も見当たらないっす。一体どうすれば良いっすか?
「・・・あ、入口に貼り紙が貼ってあるっす。・・・なになに『力を求める者、力を示せ』?」
・・・これはつまり・・・道場の中に入って戦えって事ッすね!!
「燃えてきたっす! 行くっすよ、ルドラ!!」
「まう!!」
ボクたちは意気揚々と入口の扉に手をかけたっす!!
「たのもー!!」
道場破りみたいな気分で建物の中に入っていったっす。
道場の中はかなり広い部屋だったっす。どうやら一部屋しかないみたいっすが・・・床も壁も木造じゃなくコンクリートのように硬いっす。かなり本格的な道場みたいっす。・・・土足厳禁じゃないっすよね?
さらに部屋の中には道着姿の女性たちが綺麗に並んで正座していたっす。みんな美しい姿勢を保ったままの綺麗な正座だったっす。
・・・あ、全員ボクたちの姿を確認したのか立ち上がり始めたっす。
しかも、みんながみんな、刀や薙刀、弓矢などで武装してるっす。やる気満々みたいっす! しかもその立ち振る舞いから・・・かなり腕の立つ集団見たいっす。
・・・でも表情が分からないっす。髪型はみんな違うみたいっすが・・・なぜか前髪が影のようになって顔がわからないっす。
試練クエスト【武芸者たちを倒せ!】
達成条件:武芸者たちを倒す
制限時間:無し
あ、アナウンスも出たっす。試練クエスト? 武芸者? よく分からないっすが・・・要はみんなやっつければ良いっすね! そっちがその気なら遠慮はいらないっす!
・・・女性集団の中から二人、ボクたちの前に出てきたっす。他の連中は道場の端っこで綺麗に並んでるっす。
2対2の勝ち抜き戦みたいっすね。上等っす!!
「いざ、参るっす! 行くっすよ、ルドラ!!」
「まう!!」
・・・
「せいっ! やっ! はーっ!!・・・さすがガットさんの作ってくれた武器、【武拳マルスクロス】っす! バッタバッタ敵を倒せるっす! フフフ、この切っ先、触れれば切れるっす!!」
「まうー!!」
「おお! ルドラもさすがっす!! 成長してるっすねー・・・」
「まう♪」
・・・
ガキンッ!!
「ウッ!・・・おお、【武鎧マルスガイズ】のおかげで全然ダメージがないっす! この装甲はそう簡単に抜けないっすよ!!」
「まう! まーう!!」
ヒュンッ!!
「おっと、危ないっす! ありがとうっす、ルドラ。油断しちゃいけないっすね!」
「まう!!」
・・・
「行くっすよ、ルドラ! 雷より早く! 熱く!!」
「・・・まう?」
「・・・ルドラにはまだちょーっと早すぎたっすか・・・それにツッコミ役がいないとなんだか寂しいっす」
「まうー・・・」
・・・
「これで最後っす!!」
30分ほどの時間をかけて全ての敵を倒したっす。
・・・中々手ごわかったっす。パワーもスピードもあって中々のレベルだと思うっす。
そしてそれ以上に、みんなそれぞれ持っていた武器を巧みに使ってきてたっす。アニキほどじゃないにしろ、達人と呼ばれても不思議じゃないくらいの腕前だと思うっす。
パチパチパチパチ。
と、そこへどこからか拍手の音が聞こえてきたっす。
よく見ると道場の一番奥に誰かいたっす。
「いやー、見事見事! さすがさね!!」
・・・一体何時からそこに居たんすか? さっきまでは絶対いなかったはずっす! ・・・気を抜かないように注意していたのに全然気がつかなかったっす!・
その人物はすっと立ち上がってゆっくりこちらに向かって歩いてきたっす。・・・あ、いつの間にかボクたちが倒して死屍累々になっていた武芸者たちが消えてるっす。お役目ご苦労さまっす。
「アタイは【武芸神ウィシャス】! アンタをここに呼んだ張本人だよ!!」
ボクたちの前で堂々と大きな声で言い放ったのは・・・すっごい綺麗な女性だったっす! ・・・あ、この人・・・じゃなくて神様の顔はちゃんと見えるっす。
燃えるような赤く長い髪を束ねた赤い瞳の女性っす! ボクより背が高くてノースリーブのカンフーの胴着みたいな服を着てるっす!・・・体にぴったりフィットしていてスタイルの良さが一目で分かるっす。
男の人っぽい話し方に反して筋肉質というほどでもないっすが、体は引き締まっていてよく鍛えられているのが分かるっす。一見、人間っぽく見えるっすが・・・この神様がボクを選んだ神様らしいっす。
「【武芸神】・・・様っすか・・・?」
「その通りさね! 武をもって美しく舞い、魔と闇を祓う。それがアタイ【武芸神ウィシャス】だよ!!」
・・・なんだかテンションが高い神様っす! ・・・でもこういうノリは嫌いじゃないっす!!
「そしてここは【梁山泊】! 武を求める者が集まる場所さね!!」
おお! ここがかの有名な【梁山泊】、強者が集まる場所っすか!!・・・そんな場所に招かれるなんて・・・光栄っす!!
「アンタには武芸の才能があるさね! さらに武の力を持った【精霊】まで従えているんだ! アタイが気にかけるのも仕方が無いってなもんさね!! だからこの場所に呼んだんだよ!!」
おお、才能があるなんて嬉しい言葉っす! ルドラも目にかけてくれてるみたいっす!
「そして今! アンタの力は見せてもらった! 資格は十分さね。・・・ただし! アンタの腕前も力はまだまだ未成熟! そこでアタイ直々に鍛えてやろうと思ったのさね! さあ、アタイと手合わせしてもらうよ!!」
「望む所っす!!」
===視点切り替え & 回想終了===>アルク
「展開が早いっての」
報告開始1分でもう戦いの話になるってどうよ。俺や他の連中だってもう少し前フリというか説明があったのに、いきなり試練とか・・・まあ、向かった先が【梁山泊】だったのなら戦いは避けられないんだろうが・・・なぜアシュラは何の疑問も抱かず戦いに向かっていくのか。
「・・・ある意味でアシュラらしいんですが、なんというか・・・一歩間違えれば戦闘狂ですよね」
・・・もう既にその兆候はあるような気がするんだが・・・まあ、アシュラは話せば分かる奴だから、そういう意味ではまだマシのほうか。
問題なのは【武芸神ウィシャス】って神様だな。やはり聞いたことがない神様だ。・・・そして聞いてる限り、アシュラと同類だな。
「えー! 良いじゃないっすか!! 実際【武芸神ウィシャス】様はすっごくすっごく強かったっすよ!」
・・・強いのは・・・まあ、神様だから分かる。俺が相手にした神様たちだって強かったしな。
アシュラに武芸の才能があることを見出したのも良い。鍛えてくれるっていうのなら願ってもないことだろう。
ただなぁ・・・アシュラと【武芸神ウィシャス】。同類っぽい二人が合わさるとどんな結果になるのか・・・そしていつもアシュラをフォローしているアスターの苦労がどれだけ増えるのか・・・それが心配だ。
「むー!・・・まあ、良いっす! 続きを話すっす!!」
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