アーニャの場合:お腹一杯
===視点切り替え & 回想===>アーニャ
「さて、本題に入る前に一つ聞いておこう。・・・現在の【幻獣界】をどう思う?」
目の前のちっこいドラゴン・・・本体はでっかいドラゴン・・・の【地竜帝ドラント】さんはアーニャに問いかけてきたのです。
「どう思うってどういうことなのです?」
質問に質問を返すのは失礼なのです。でもアーニャには質問の意味がわからなかったのです。
「・・・我は常々、思っておったのだ。他の世界に比べて【幻獣界】には足りない物があるのだ、と」
「足りない物、なのです?」
足りない物・・・アーニャには何のことなのか分からないのです。
「それは・・・」
「・・・それは? なのです」
ごくり、と思わず喉を鳴らしてしまうのです。なにやら緊迫した雰囲気が流れてきたのです。
「それは・・・【料理】ぞ!!」
「・・・ほえ?」
・・・急に何を言い出しているのです?
「他の世界に住む人間たちは・・・収穫した作物や狩った獲物をそのまま食らうのではなく、調理を行い、美味しく頂くのであろう? ・・・【幻獣界】では考えられぬ光景なのだ」
・・・確かに【幻獣界】にいるのはモンスターばっかりなのです。モンスターが【料理】するなんて聞いたことがないのです。
一応エリア0に受付のお姉さんやプレイヤーの皆さんもいますが・・・その人たちのことでは無いようなのです。
「【幻獣界】は弱肉強食、【料理】などすべくもない。そんなことをせずとも美味なるモンスターはたくさんいるからな。しかし!人間たちは大して美味くも無い食べ物をより美味にするすべを編み出した。それは大変興味深い」
「結局何が言いたいのです?」
「美味い料理を食べさせてくれ」
ガクッときたのです。なんというか予想の斜め上の要求なのです。・・・あ、アナウンスがきたのです。
試練クエスト【地竜帝ドラントの胃袋を掴め!】
達成条件:【地竜帝ドラント】に美味しい料理を振舞う。
制限時間:無し
・・・アーニャはかつてこれほど、なんだかなぁーという内容のクエストを見たことがないのです。
・・・でもアーニャも料理人なのです! アーニャの料理を食べたいと言っている人・・・もとい神様を無下にはできないのです!!
幸い調理器具や食材は一杯持ってきているのです。アーニャは料理人だから、【料理】をするかもしれないとアルクさんから持っていくよう指示を受けていたのです! さすがなのです!!
「無論ただとは言わん。お前達人間も【料理】を得る時は対価が必要なのであろう? 我からは【加護】は無論の事、お前たちにも理のある方法で食材を提供しよう」
そういうと地面にからまた何か出てきたのです。・・・あれは・・・【幻獣の卵】?なのです。でも見たことがないほどでっかい【幻獣の卵】なのです。・・・といっても2メートルくらいなのです。【地竜帝ドラント】さんの本体と比べたら全然ちっこいのです。
「産まれ出でよ」
【地竜帝ドラント】さんがそういうと【幻獣の卵】に魔力が注ぎ込まれたのです。そうすると卵が一瞬で孵ったのです! 卵からはでっかい牛のモンスターが出てきたのです!!
「【美食幻獣】と呼ばれる特別に美味なモンスターの一種なのだ。まあ、その分強力で厄介なのだが・・・【幻獣界】でも滅多に遭遇しない珍しい食材だぞ? さしものお前たちも知らなかったであろう?」
・・・確かに知らなかったのです。これは貴重な情報なのかもしれないのです。でも・・・
「もしかしなくても、この牛さんをアーニャたちに倒して食材にしろと言うのです?」
この牛さん、中々強そうなのです?
「その通りだ。せっかくの機会、お前の【眷属】たちの実力を見たいからな。・・・ああ、こいつは自我も意思も無く、本能の赴くままにただ暴れるだけのモンスターだから遠慮なく倒すが良いぞ」
・・・そんな心配はしていないのです。でもこれも試練の一環のようなのです。
「・・・仕方ないのです・・・行くのです! ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃん!!」
「キュイー!!」
「キュアー!!」
「キュウー!!」
・・・
「モオオオオオオ!!」
「しつこいのです! ブランちゃん、【ホーリーブレス】なのです!!」
「キュイィィィィィ!!」
「ほう、中々やるではないか。では次へいこう」
「まだやるのです!? ・・・今度はデッカイ豚さんなのです!!」
・・・
「ブヒッ! ブヒッ! ブヒッ!」
「ブヒブヒうるさいのです! ノワールちゃん、【ダークネススキューア】なのです!!」
「キュアァァァァァア!!」
「ふむふむ、さすがはドラゴンだ」
「褒めるのなら、もう増やさないので欲しいのです。ああ、今度は植物のモンスターなのです!!」
・・・
「・・・」
「ああ! ノワールちゃんが蔦に捕まってしまったのです! テールちゃん、【アースブレス】なのです!!」
「キュウゥゥゥゥゥゥ!!」
「・・・ふむふむ、まだ若いが素晴らしい【眷属】たちではないか。ではこれで最後にしよう」
「もー、またなので・・・って今度はドラゴンなのです!?」
「最後にふさわしいであろう?」
・・・
「ゴアアアアアア!!!」
「むー! こうなったら一気に行くのです! ブランちゃん【ホーリーダイブ】!ノワールちゃん【ダークネスダイブ】!テールちゃん【アースダイブ】なのです!!」
「キュイィィィィィ!!」
「キュアァァァァァア!!」
「キュウゥゥゥゥゥゥ!!」
「ほう、三位一体の攻撃か。興味深い」
・・・
「良く頑張ったのです! ブランちゃん、ノワールちゃん、テールちゃん!! あとはアーニャの仕事なのです!!」
「キュイ!」
「キュア!」
「キュウ!」
「フフフ、楽しみに待っておるぞ!!」
・・・
「お待たせなのです! 野菜炒め、焼肉、トンカツ、牛丼、その他もろもろ完成なのです!!」
「おおー! これがそうか!! 確かに美味そうだ! ではさっそく・・・」
「待つのです! 食べる時はいただきますを言わないと駄目なのです!!」
「む? そうなのか? では・・・いただきます!! ガツガツガツガツ」
・・・
「・・・わが生涯にいっぺんの悔い無し」
「燃え尽きたのです!?」
『試練クエスト【地竜帝ドラントの胃袋を掴め!】をクリアしました』
===視点切り替え & 回想終了===>アルク
「こんな感じだったのです」
「良し!これから【幻獣界】に行くぞ!!」
そして【美食幻獣】とやらをこの手に!
「落ち着いて、アルク・・・気持ちは分かるけど」
「そうですアルクさん。話はまだ終わっていません。・・・気持ちはすっごく良く分かりますが」
・・・ハッ!・・・失敬。まだ見ぬ美味に我を忘れてしまった。
「大丈夫なのですアルクさん!余った食材をしっかり確保してきたのです!!」
「でかしたアーニャ!!」
素晴らしいぞアーニャ! 君が神か!?
・・・とにかくアーニャも無事に試練をクリアしたらしい。だが、話を聞く限り【美食幻獣】とやらはブランたち三体がかりでもかなり苦戦したらしい。つまり、それだけ手ごわい相手ということだ。俺たちも油断せずに狩りに行かねば。・・・どこにいるのか分からんが。・・・ラングたちに聞けば分かるか?・・・しかし、下手をすれば【美食幻獣】の情報が一気に拡散してしまう・・・悩ましい所だ。
「アルクさんのアドバイスどおりに調理器具や調味料を持って行っていて助かったのです」
・・・確かに俺は持って行くように言ったが、正直、予想したのと違う。
というか【地竜帝ドラント】、燃え尽きちゃったみたいだけど大丈夫か?
「大丈夫なのです。では続きを話すのです」
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