アルマの場合:魔の叡智
===視点切り替え & 回想===>アルマ
「・・・一体何処なのでしょうか、ここは?」
「ピュイー・・・」
【謁見の門】を抜けた私とフィオレですが、現在私たちがいるのは・・・どこかの建物の中でしょうか? コンクリートのような硬い地面があります。・・・ただ、壁も天井も見えない広大な建物のようですが。
代わりにあるのが・・・本がびっしりと詰まった本棚でした。図書館? かと思いましたが良く見ると・・・いえ、良く見なくとも分かりますが本棚がなぜかそこら中に浮いています。無重力空間に本棚を配置したらこうなる、といった感じでしょうか。
しかも本棚の数が半端ではありません。見渡す限り本棚、本棚、本棚・・・見える範囲だけで数百以上あるように見えます。・・・しかも全ての本棚にびっちり本が詰まっています。・・・一体、何千冊、いえ何万冊あるのでしょうか?
試しに近くをふわふわ浮いている本棚に近づいてみます。
・・・本の背表紙に書かれているタイトルは・・・【ファイアボール】【ウインドカッター】・・・などなど。・・・【魔法】に関する本なのでしょうか?
試しに一冊読んでみようと、手をかけようとすると・・・
「おっと、悪いけど迂闊に触らないでもらえるかな?」
・・・男性の声に止められました。誰かいる?・・・でも辺りを見渡してもそれらしい人影は・・・
「ピュイー!?」
フィオレが羽を使って器用に指差す先は・・・私の頭上でした。見ると私の頭上にある本棚の前で本を読む男性が見えました。
銀色の長髪に銀色の瞳、痩せ型長身の男性です。・・・いわゆるイケメンですね。きっとここにアルクさんがいればチッとか舌打ちをしていたでしょう。
頭部にある角からして【魔族】のように見えますが・・・なぜか黒いタキシードを着込んでいます。そして自然に宙に浮いています。
その当の男性はというと読み終わったのか手に持っていた本をパタンと閉じ、本棚にしまってこちらを見ました。
「ようこそお嬢さん、【魔の叡智】へ。僕は【魔法神ウルザード】だよ」
と言いながら地面まで降りてきました。
「私はアルマ、この子がフィオレになります。・・・貴方が・・・私を選んだ神様・・・ですか?」
「そうだよ? 【魔法】の管理は僕の役割だからね。【魔法】の探求と研究を行う者への支援をするのは当然の事だろう?」
・・・どうやら私は【魔法】関係で選ばれたようです。まあ、私の種族、【魔族】は【魔法】への適性が強いですからね。
「貴方が言った【魔の叡智】というのはこの場所の事ですか? ここは一体・・・」
「そのままの意味だよ?【魔法】が蓄積されていく場所であり、【魔法】を管理する場所でもあり、【魔法】を【魔法】として定義している場所でもある」
「【魔法】を・・・定義?」
・・・【魔法】の蓄積や管理というのはなんとなく分かりますが、定義というのは良く分かりませんね。
「んん?・・・そうだね。君は不思議に思ったことは無いかい?【魔法界】に限らず 【人間界】や【武術界】の人間、【幻獣界】のモンスターが使う【魔法】・・・例えば【ファイアボール】なんかは皆同じ【ファイアボール】だろう? 異なる世界で使っても、異なる世界の人間が使ってもね」
・・・考えた事もありませんでしたが、それはそういうものだと思っていましたが・・・って、ああ、そういうことですか。
「そう、それはそういうものだと定義しているのがこの場所ということさ。だからそこにある【ファイアボール】という本に書かれている内容以外の【ファイアボール】は使えないし存在しないという事さ」
私は目の前にあった本棚にある【ファイアボール】と書かれた本を見ます。・・・理屈はまったく分かりませんがこの本が重要だという事はわかります。
「・・・ちなみにですがこの【ファイアボール】と書かれた本が何らかの理由で失われたら?」
「【ファイアボール】という【魔法】が失われる。もう誰も【ファイアボール】という【魔法】が使えなくなるね」
・・・理屈や原理はまったく分かりませんが、確かに迂闊に触ってはいけないものだということは良くわかりました。手に取って少しでも汚れが付いただけで悪影響がでてしまいそうです。・・・この神様は平然と読んでましたけど。
「とまあそんなわけで、この場所は凄い重要で大切な場所なんだよ。本来、人はおろか神々だって滅多にこの場所に入れないんだけどねぇ・・・」
「・・・なら何故、私達をこの場所に?」
【魔法神ウルザード】は真面目な顔をしながら答えてくれました。
「それは・・・君が【禁忌魔法】に興味を持ったからさ!!」
「・・・はい?」
・・・なんだか急にテンションが上がって怖いんですが・・・
「いやー、最近の奴らと来たら禁忌と聞いて、みーんなビビリ倒してしまって誰も探求しなくなっちゃったんだよね! 確かに下手をしたら世界を滅ぼしかねない【魔法】だけど、それを忘れて探求を怠ってしまったら【魔法】の発展は無いと思うんだよ!!」
・・・ああ・・・私が言うのもなんですが、この神様、かなりヤバ目な神様のような気がします。
「しかし! だからこそ!! 仲間の制止を振り切って【禁忌魔法】を追い求める君の姿勢に大変感銘を受けたのだよ!!」
・・・なんでしょう、過去の自分をぶん殴ってやりたくなってきました。・・・とりあえず、戻ったらアルクさんとアテナにきちんと謝る事にしましょう。
「・・・まあ、それだけだったら万が一、君が【禁忌魔法】を覚えて暴走してしまったら僕が色んな神々に怒られてしまうんだけど・・・君にはちゃんと君を止めてくれる仲間がいるだろう? だからこそ君を選んだともいえるね」
ああ、良かった。この神様もただ暴走しているわけじゃなかったのね。・・・何気に私一人では暴走しそうだと言われているような気がしますが・・・気にしません。
「まあ、そんなわけで君には期待という意味も込めてこの場所を見せることにしたのさ。【魔法】とは何なのか、その一端を見せればより一層の興味が湧くだろう?」
・・・なるほど。【魔法神】と言うだけあって【魔法】の探求とやらには力を入れているということですか。
「・・・では【禁忌魔法】について教えて貰えるのですか?」
「それは僕が出す試練をクリアしてからだね」
そう言うと【魔法神ウルザード】はパチンと指を鳴らしました。
と、同時に視界が揺らぎ・・・気が付くとまったく違う場所に立っていました。
===視点切り替え & 回想終了===>アルク
「【魔法神ウルザード】に【魔の叡智】か・・・やばい神様とやばい場所だな」
下手したら【魔法】が使えなくなるとは・・・
「・・・というか遠まわしに私達にアルマを止めろって言ってない? その神様」
うん。俺もそう思った。もしくはストッパーのいる内にドンドンやれと言ってるような気がする。
「・・・遅ればせながら二人には謝罪します。やはり暴走するのは良くありませんよね」
・・・謝ってくれるのは良いんだが・・・【禁忌魔法】を探すのをやめる、とは言わないんだな、アルマ。
まあ、俺だって興味がないとは言わないが・・・大丈夫なんだろうか?
「では続きを話しますね」
そういってアルマは続きを話し始めた。
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