表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/797

アテナの場合:聖なる神

===視点切り替え & 回想===>アテナ


【謁見の門】を潜り抜けた先にあったのは相変らず雲のような大地・・・だけではなかったわ。


足元は確かにこれまでの道中と同じ雲のような地面だけど、今いる場所は草が生え、花が咲き、見たこともない実が成った木がある。少し離れた場所には川まで流れているみたい。


雲の上に森がなっているようなミスマッチな光景ね。


「随分と雰囲気が変わったけど、ここはどこなのかしら?」


「ガウ・・・」


周囲を警戒してか既に【成体】化していたレオーネが自信なさげに鳴く。多分落ち着かないのでしょうね。私だってそう。周囲に充満する・・・【神気】?っていうのが全身で感じ取る事ができてひどく落ち着かないわ。


「ここは【エデンの園】です」


・・・!?


私でもレオーネでもない、第三者の声にハッとさせられた。声のほうを見ると、何時の間にそこにいたのか私達の直ぐ傍に綺麗な女性が立っていた。


真っ白いドレスを着た美しい女性。長い金色の髪に金色の目。日本人・・・いえ、人間離れしているようにも見える顔立ちとプロポーション・・・胸もおっきい・・・ゲフンゲフン。


そして何より彼女の背中には十二枚の黄金の天使の羽が生えていた。そして彼女から感じる強大な【神気】・・・それだけで目の前にいる女性が只者じゃないってことは分かるわ・・・


「貴方は・・・?」


そう尋ねた私に目の前の彼女はまるで聖母であるかのような微笑みを向けてきた。


「私は【聖護神セラフィナ】・・・貴方をこの地へと招いた者です」


【聖護神セラフィナ】・・・それが私を選んだ神様のようね。


「私はアテナ、この子がレオーネと申します」


「ええ、知っていますよ」


・・・知ってる? なんで?・・・なんて聞かない方が良いのかしら。


「・・・何故私を選んだのか伺ってもよろしいですか?」


私の問いに【聖護神セラフィナ】はフフフッと微笑んだまま答えた。


「そう緊張しないで? 貴方に危害を加えるようなことはしないわ・・・私が貴方を選んだのは・・・そうね。純粋な興味と・・・あとは心配ね」


・・・興味は分かるけど・・・心配? どういうこと?


「貴方は常に周囲の人間・・・仲間たちの役に立とうと頑張ってるわ。時々空周りすることもあるみたいだけど・・・その努力は素晴らしい物だわ」


・・・面と向かってそんなこと言われちゃうとなんだか照れるわ。


「でもその反面、自分の為に行動することが出来ていないわ・・・いいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


・・・言いたいことはあるけど今は黙って聞きましょう。


「本来、【天使】という種族は回復や支援に長けた種族。・・・中には攻撃に特化した人もいるけど・・・貴方が攻撃的な【魔法】ばかり覚えようとするのも、周囲の影響から、でしょう?」


・・・まるで自分の心を見透かされたような物言い。・・・でも何も言い返す事が出来ない。


「それも一つの自己犠牲の表れなのかもしれない。それも貴方の一つの強さなのかもしれない。でもそれだけではいずれ貴方自身を不幸にするかもしれない・・・それが私の心配でもあるのです」


何も言い返せないでいる私に向かって【聖護神セラフィナ】は微笑んだままだった。


「・・・フフフッ、気を悪くしないで? 貴方の事を批判しているわけではないわ。ただもう少し視野を広げて、もう少し自分にわがままになってほしいのよ。そうすれば、貴方はより強く、より仲間たちの役に立てると思うわ」


・・・なんだか人生相談っぽくなってきたわね。人生相談というか・・・諭された?


「・・・」


【聖護神セラフィナ】の言葉を考えてみるけど・・・正直自分では良く分からない。確かに強力な【魔法】を覚えようとしているのはアルクやアルマの影響だとは思うけど・・・自分ではそこまで意識してなかったわ。


「そう難しく考える事はありません。貴方がたのリーダーは適度に仲間に頼り、仲間を気にかけつつ自分のやりたい事をしているではありませんか。彼のように・・・とまでは言いませんが、彼を参考にすれば良いのですよ」


「ああ・・・」


それはきっとアルクの事ね。確かに彼は自分のやりたい事をやりつつもクランのメンバーの事を気にかけてるし・・・言いたいことは分かったわ。


・・・何故、【聖護神セラフィナ】がアルクのことを知っているのかは疑問だけど。


「さて、お話はこれぐらいにして本題に入りましょう」


本題、と言う言葉に私と、私の隣で大人しく話を聞いていたレオーネに緊張が走る。


「私の加護を与える為に貴方たちには試練を受けてもらう事になるのですが・・・貴方が望むのは戦う力ですか? 誰かを守る力ですか?・・・それとも誰かを助ける力ですか?」


・・・私の望み・・・ねぇ。こんな時、アルクならどう答えるかしら?


・・・って悩むまでもないわね。


「全てでお願いします」


きっとアルクならそう言うわ。「チャレンジできるんなら全部にチャレンジしないと損じゃね?」とか言って。


私の言葉に【聖護神セラフィナ】は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、直ぐに微笑みに戻った。


「・・・フフフッ、なるほど。貴方にわがままになれと言ったのは私ですからね。・・・良いでしょう、付いて来て下さい」


そう言うと【聖護神セラフィナ】はふわっと空へと昇っていった。私とレオーネもそれに続くように空へと舞い上がった。


===視点切り替え & 回想終了===>アルク


「・・・え? なんで【聖護神セラフィナ】とやらが俺のこと知ってるんだ?」


アテナの奴はさらっと流したけど、何気に重要なことじゃね?


「さあ? 神様には神様のネットワークがあるんじゃない?」


【太陽神アマテラス】たちか聞いたのか? そういえば三柱神も縁がどうこう言ってたな。アテナ繋がりで縁のある奴・・・つまりクランメンバーの事も分かるのか?


・・・それにしても【聖護神セラフィナ】か・・・聖護神っていうのは聞いた事がないな。セラフィナっていう神様も。このゲームのオリジナルか? 容姿と場所から察するに・・・【天使】の神様?


【エデンの園】っていうのは・・・ほとんどの人間なら名前くらいは聞いた事があるだろう。【エデンの園】ってことは生命の樹とか知恵の樹とかがあったり? もしかしたらアダムやイブもいたりしてな。


「・・・それはそれとしてアテナ、その【聖護神セラフィナ】の言った事は当たっているのですか?」


アテナに声をかけたのはアルマだった。確かに気になる・・・説教? アドバイス? を言っていたな。


「うーん、正直自分では分からないわ。そもそもそんなこと意識した事なかったし」


とアテナ自身は言っているが俺には心当たりがある。


俺たち【アークガルド】のクラン倉庫には各自が集めてきた物を保管している。無論、自分で使う物は自分で確保しておいた上で、自分が使わない、もしくは自分以外の人に使って欲しい物だけを入れておくためのものだ。


クラン倉庫にある物はメンバーが自由に持って行って良いことになっている。特にアヴァンやアーニャは【兵器】の為のパーツや【料理】の食材を頻繁に持って行っており、その二人が作った物は再度クラン倉庫に入れられ、それらを他のメンバーが持って行く形になっている。出来る限りギブアンドテイクの形になるようにした結果だ。


ここで俺が思い当たるのが、このクラン倉庫に素材などを一番多く入れているのがアテナだということだ。多分、ドロップ品をほぼ全てクラン倉庫に入れているのではないだろうか。そのわりにアテナ自身がクラン倉庫から持ち出す物は少ない。


せいぜい、回復アイテムやアーニャの作った【料理】くらいだが、それも自分のためではなくレオーネにあげる為のものだ。


ある意味クランに一番貢献しているのはアテナでもあるのだが、俺としては倉庫に入れたのと同じ分だけ何か持って行って欲しいと思う。実際、本人にもアーニャの【料理】やアヴァンの【兵器】を持っていって良いとは言ったのだが、当の本人は既に必要な物は持って行っていると言い張っている。


・・・ここはゲームの世界だ。必要()()()ではなく、多めに持っていくくらいの余裕があっても良いと思うんだがなぁ。


まあ、考え方は人それぞれだから、と何も言わなかったが、アテナは無意識のうちに窮屈な状態に陥っているのかもしれない。それを神様は見抜いた・・・のかもしれないな。


「それじゃあ話の続きね」


俺が思考の海を行ったり来たりしている間にアテナは話の続きをはじめた。



作者のやる気とテンションを上げる為に


是非、評価をポチっとお願いします。


m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ