戦いの果て
「こらー! お兄ちゃん達をいじめちゃだめー!!」
・・・ククリが結界の外から叫んでいるが・・・うん、確かにこっちが何やっても効果がないからいじめみたいになってるように見えるのかもしれんが・・・つまり、ククリにはこれが戦いになっていないように見えるんだね(泣)
俺たちを気遣ってるのかもしれんが・・・俺たちにも戦士の矜持っていうか・・・プライドってもんがあるからできればやめて欲しい。
「・・・」ハァ
ほら【戦闘神スサノオ】もお疲れ気味なため息漏らしちゃったじゃん。
しかし、まずいなぁ。こっちの攻撃がことごとく効かないし。以前戦った【ミスリルゴーレム】を思い出す。アイツも硬すぎてこっちの攻撃がほとんど通用しなかった。あの時は属性攻撃で何とかなったが・・・【全天の属性】が効かなかった以上、駄目だろうな。
頼みの綱だった【勇天の一撃】は初っ端から駄目、【全天の属性】を使った魔法も駄目だった。残った【兵器】は遠距離武器ばかりで攻撃力はそう高くない。もらったばかりの【加護】も神様相手には効かないって話だし・・・
・・・となると残る手は一つしかない。
俺はアークカイザーに【豪剣アディオン】を持たせる。
「・・・よし! 行くぞアウル!!」
「だう!!」
「【精霊憑依】発動!!」
「だーうー!!」
アウルが黄金のオーラを発しながら俺の体の中へと吸い込まれていく。同時に黄金のオーラがアークカイザーの全身を覆った。
「ほう・・・」
【戦闘神スサノオ】が興味深そうに俺たちを見ている。アウルとの【精霊憑依】は【剣術】系スキルの消費BPを0にする効果がある。こうなったらありったけの【剣術】スキルをぶつけてやる。さらに・・・
「【韋駄天の俊走】!!」
超加速してスキルの使用回数を増やす。・・・勝負!!
「【ミーティアルスラッシュ】!!」
【韋駄天の俊走】の加速にプラスして高速の【剣術】スキルをぶつける!!
「・・・なぁ!?」
だが【戦闘神スサノオ】は変わらずに化剄を使って【豪剣アディオン】の打ち込みを逸らしていく。
そんなバカな!? こっちは超加速中なんだぞ!! いくら【戦闘神スサノオ】でも対応できるなんて・・・くそっ!!
「【ヴァーティカルチャージ】!【マキシマムスラッシュ】!!」
高速で刺突しようと、力任せの一撃を放とうと、暖簾に腕押し。どんな攻撃を繰り出そうとどれだけスピードが上がろうと【戦闘神スサノオ】にたやすくさばかれる。
このままじゃあ・・・!? やばい!【韋駄天の俊走】の効果が切れる!!
超加速状態から通常状態に戻った瞬間!
「そこだぁ!!」
【戦闘神スサノオ】のパンチが飛んでくる。
「ちぃ!!」
俺・・・アークカイザーは無事だった左足での蹴りで迎撃する。
バコッッッ!!
・・・!? アークカイザーの左足が消し飛んだ! 右足の修復もまだ終わっていない・・・アークカイザーの両足が無くなっちまった!!
「まだまだぁ!!」
そしてなおも【戦闘神スサノオ】は攻撃を繰り出してくる。
「【分身の術】! 【マキシマムスラッシュ】!!」
なんとか分身を出して攻撃を避け、今度は突き出した腕に向かって【豪剣アディオン】を振り下ろす!!
・・・ミシミシミシミシ!!!
・・・腕を切ろうとして剣のほうがミシミシ言ってるのはおかしくないか!?
「フンッ!!」
【戦闘神スサノオ】のもう一方の拳が迫る。
「クッ!【バックステップ】!!」
その拳から逃れるように距離を取る。・・・まずい、BPがもう無い。【精霊憑依】で消費0になるのは【剣術】系スキルだけだ。もう他のスキルは使えない。
「【ブレイジングセイバー】!【ヴァーティカルチャージ】!!」
距離を取った所で【豪剣アディオン】の剣先から気力の刃を放ち、【戦闘神スサノオ】に突き刺す。・・・が、腕でガードされてしまった。・・・やはりダメージは無い。
「【ミーティアルスラッシュ】!!」
今度は距離を取ったまま、剣先から伸びる気力の刃で斬りかかる。・・・が、やはり駄目だ。当たらない。
【精霊憑依】ももう直ぐ解ける。そうなったらもう・・・
「マスター・・・」
「・・・カイザー?」
「・・・後ハ頼ミマス」
「・・・おい、自爆は駄目だって言ってるだろ」
「了解シテイマス。ソレ以外ノ方法デナントカ隙ヲ作ッテミセマス」
「お前・・・」
その時、カイザーが何をしようとしているのか何となく分かった。しかし・・・
「クルッ!!」
隣のシートに座っているアーテルが叫ぶ。俺の中のアウルもだ。
諦めるな、と叫んでいる。
「・・・わかった」
【ミーティアルスラッシュ】を放ち終わったところで【精霊憑依】の効果も切れた。俺の中からアウルが外へ押し出される。
「ここまでだ!!」
そんな俺たちを見て、もう打つ手なしと見たのか【戦闘神スサノオ】が最後のパンチを放ってくる。
もう俺たちに避ける術は無い。
そこで俺は・・・否、アークカイザーは【豪剣アディオン】を離し両腕をクロスさせた。・・・受け止める気だ、あの拳を。
バキィィィン!!!
・・・アークカイザーの両腕が砕け散った。だが・・・
「今デス!!」
その時、アークカイザーのコクピットが開いた。
「【エナジーフェザーマント】ウィングモードだ!」
そして俺はコクピットから飛び出し、飛翔する。目指すのは巨大化した【戦闘神スサノオ】の額、先ほどヘッドショットを決めた部分!!
俺は【豪剣アディオン】を左手に呼び戻し、更に右手で自身の胸部分に触れる。そして・・・
「【月光神ツクヨミの加護】よ! 気力の回復を!!」
俺の右手に宿った【月光神ツクヨミの加護】を使って一気にBPを全回復する! これでスキルは再び使用可能だ!!
俺は両手で【豪剣アディオン】を握りなおす。そして・・・
「【帝釈天の勇撃】!!」
【勇天ストラッシュ】も使っていた【勇天の一撃】の進化技を発動する。
「【初撃】!!」
【戦闘神スサノオ】の額に向かって最初の一撃を振り下ろした。
・・・ピシピシッ!
【豪剣アディオン】にヒビが入る。
「【次撃】!!!」
・・・ピシッ! ピシピシピシッ!
続いて二撃目。【豪剣アディオン】に入ったヒビが大きくなる。
「【終撃】!!!!」
・・・ピシピシピシッ!! バキィィン!!!
・・・【豪剣アディオン】が・・・砕けた・・・
しかし、砕けた【豪剣アディオン】を切りつけた場所に傷は・・・ない。
「・・・最後の攻撃は意表を突かれたぞ。だがお前はその剣も鎧も真の力を引き出せていない」
・・・【戦闘神スサノオ】が何か言っているが・・・もう何も耳に入らない。
「これで終わりだ!!」
【戦闘神スサノオ】は俺を掴もうと手を伸ばした所で・・・
「そこまで!!!」
声が響き、結界が消えた。同時に・・・
『制限時間を超えました。試練クエスト【戦闘神スサノオを倒せ!!!】をクリア出来ませんでした』
俺たちの敗北を告げるメッセージが届いた。
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